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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トルコ外交  ギリシャと関係改善 イラン核問題を仲介

2010-05-17 23:14:15 | 国際情勢

(手前で拍手しているのが、左トルコ・エルドアン首相、右ギリシャ・パパンドレウ首相
5月14日 “flickr”より By GreeceMFA
http://www.flickr.com/photos/greecemfa/4614780592/in/set-72157624058414280/)

【財政危機のギリシャにトルコが手を】
経済成長を背景に、地域大国としての存在感を増しているトルコですが、昨日・今日と、その外交成果に関する記事が目につきます。
ひとつは、ギリシャとの経済協力・軍事費削減に向けての合意です。

****ギリシャヘ救いの手 トルコ 経済協力で融和狙い キプロス再統合交渉前進へ道筋*****
ギリシャのパパンドレウ首相とトルコのエルドアン首相が14日、アテネで首脳会談をし、経済協力の強化とともに、軍事費削減に向けて両国が努力することで合意した。深刻な財政危機のギリシャに経済成長著しいトルコが手を差し伸べた形で、キプロスの分断をめぐって対立してきた両国の関係が一気に改善に向かう可能性が出てきた。           

6年ぶりのギリシャ訪問となったエルドアン首相は、10閣僚と約150人の財界人など計約400人を引き連れてアテネ入り。ハイレベル協議を毎年実施することを決めたほか、貿易、教育、エネルギー、環境などの分野での協力協定に署名した。両国の貿易額を現在の約2倍の50僚ユーロ(約5700僚円)にまで引き上げることを目標としている。
記者会見でエルドアン首相は「エーゲ海を分断の海ではなく、平和の海にしたい」と述べ、防衛費削減にも前向きな考えを示した。パパンドレウ首相も「多くの島国からなる我が国は、トルコが我々から島を奪うのではないかと恐れている。この脅威を我々が取り除きたい」と応じた。

財政危機のギリシャは欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から総額1100値ユーロ(約12・5兆円)の融資を受ける条件として、公務員の削減や年金の削減、付加価値税の増税など厳しい緊縮策を決めたが、国民の反発は収まる気配がない。
その中で、ギリシャにはトルコとの関係改善によるメリットは大きい。海運業と観光業、農業ぐらいしか産業がないギリシャにとって、トルコからの投資拡大は救いだ。トルコは有力な新興経済国の一つで、今年は4%近い経済成長率が見込まれている。
さらに、両国の緊張緩和が進めばギリシャは国内総生産(GDP)の5%以上にのぼる軍事支出も削減でき、財政再建にも寄与する。
一方のトルコには、南北に分断ざれているキプロスの再統合交渉を前進させたい思惑がある。EU加盟を目指すトルコは、その条件としてキプロス問題の解決を迫られているが、交渉は遅々として進まないうえ、今年4月に北キプロス・トルコ共和国で再統合に慎重なエロール大統領が就任し、再統合の行呑暗雲が垂れ込めていた。【5月16日 朝日】
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記事にもあるように、両国およびキプロスにとって影響の大きい合意です。
財政危機で欧州ひいては世界経済破綻の発火点となりかねないギリシャは、トルコからの投資拡大、軍事費削減による財政負担軽減が期待できます。

【南北キプロス再統合交渉への影響】
南北分断が続くキプロスでは、トルコからの支援を受ける形で島の北半分を支配する北キプロス・トルコ共和国で4月18日行われた大統領選挙は、南北キプロスの再統合に消極的なエロール首相(72)が約50・4%を獲得して当選、南のギリシャ系のキプロス共和国との交渉を続けてきた統合推進派の現職、タラト大統領が敗北しました。

“2008年に始まった南北キプロスの再統合交渉では、中央政府の下でトルコ系の北キプロスが自治権を行使する方向で和平が検討されてきた。エロール氏は勝利宣言で、「交渉を継続する」と言明したものの、「南北2つの国家の共存による国家連合の実現」が持論だ。キプロス共和国のフリストフィアス大統領は、交渉の方向性の見直しには応じない構えであり、エロール氏の当選で今後、さらに交渉が停滞する懸念が出ている。”【4月20日 産経】といった状況にありますが、南北キプロスそれぞれの後ろ盾であるトルコとギリシャの関係が改善すれば、南北キプロス間の交渉進展の可能性も出てきます。

そしてキプロス問題の前進は、トルコにとっては悲願のEU加盟への扉を開くことにもなります。
(もっとも、EU側はイスラム文化のトルコ加盟には消極的で、仮にキプロス問題で前進があっても、なかなか扉を開かないのでは・・・とも思われます。)

いずれにしても、今回のギリシャ・トルコの合意は、いろんな面でタイムリーな交渉でした。

【「(制裁回避への)最後のチャンス」】
もうひとつ、今日の話題として、トルコ・ブラジルが仲介してきたイラン核開発問題に関する協議で、イランとの合意に達したという事案があります。

****イラン:トルコと合意か 低濃縮ウラン搬出で******
イランの核開発問題で、ブラジルとトルコが仲介役となって進めていた協議で、トルコのダウトオール外相は16日、テヘランで、イランとの間で合意に達したことを明らかにした。ロイター通信が伝えた。合意の詳細は不明だが、イランから持ち出す低濃縮ウランと外国がイランに提供する核燃料を、トルコなど第三国で同時交換することで合意した可能性がある。ただし、米欧諸国が合意内容に納得するかどうかは不透明で、対イラン制裁回避につながるかは不明だ。

09年10月以降の交渉で、米欧諸国は、イランが保有する低濃縮ウランの大半を持ち出して露仏両国で再濃縮、核燃料化を進め、後日イランに戻すとの計画を提案。イランはこれを拒否し低濃縮ウランと核燃料のイラン国内での同時交換なら応じるとの対案を提示。米欧・イラン両者の溝は埋まらず、米欧は国連安保理で制裁強化を模索している。
この問題で、ルラ・ブラジル大統領とエルドアン・トルコ首相が相次いでテヘランを訪れ、16日夜にアフマディネジャド大統領と3者会談した。また、外相レベルで3カ国が会談を続けた結果、イラン側が一定の譲歩をしたとみられ、合意内容は17日に正式発表される見通し。

しかし、制裁強化を急ぐ米欧諸国は、ブラジルとトルコによる仲介について「(制裁回避への)最後のチャンス」としている。米欧には、イランの対応に不信感が根強く、イラン側が大幅な姿勢転換を示さない限り、制裁回避にはつながらないとみられる。【5月17日 毎日】
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まだ内容については明らかではなく、アメリカなどの了解が得られるものかどうかはわかりません。
ただ、ブラジルやトルコといった新興国の国際的役割の高まりを印象づける記事です。

****イラン:ウラン搬出 存在感増した「誠実な仲裁者」トルコ****
イラン核問題で仲介したトルコは近年、欧米とは一定の距離をおく独自の外交政策で、中東の安定に向けた「誠実な仲裁者」の役割を担おうとしている。専門家は今回の合意について、トルコが「国際社会でのアピールに成功した」とみる。

トルコ外交の第一人者で、大統領顧問も務める中東工科大学(アンカラ)のフセイン・バージュ教授(国際関係)は、イランが核兵器開発を放棄せずに、制裁回避に向け時間を稼げたと指摘する。「イランはイスラム世界と第三世界のスター(トルコとブラジル)をバックにつけることで、伝統的な、したたかな外交に成功した」
今回の仲介外交について、トルコは米国と綿密に打ち合わせて「青信号をもらった」という。米国はイラクとアフガニスタンでの戦争を二つ抱え、イランに対し強硬姿勢をとれない中で、同じく「時間稼ぎが必要だった」。
トルコは今月中旬、国内初の原子力発電所建設に向け、ロシアの協力を得ることで合意を得たばかりで、原発後進国だ。核燃料の交換を監視するとはいえ、そもそも交換には「米国または西欧の協力が不可欠」と話す。米欧とイラン双方の思惑を仲介する形で、イランを交渉の場に引き出し、核開発を遅らせる結果となり、「トルコとブラジルも勝者だ」という。

トルコは国民の大半がイスラム教徒ながら、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として、また欧州連合(EU)の加盟を目指し、従来は米欧寄りの政策をとってきた。03年、初のイスラム系政党の単独政権としてエルドアン首相(公正発展党)が就任して以来、中東のイスラム諸国やロシアとの関係も重視。08年には、シリアとイスラエルの和平交渉を8年ぶりに再開させる外交努力で存在感を高めた。
またイランの核開発を巡り、国連安全保障理事会の非常任理事国として、対イラン制裁に反対してきた。隣国であるイランとは原油輸入などを通じ経済関係が深まっており、制裁の影響が自国へ波及することを恐れたことも背景にある。
【5月17日 毎日】
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