孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イエメンの早婚禁止法案をめぐる議論、ナイジェリアでは有力議員が13歳少女と結婚

2010-05-02 09:42:15 | 世相

(8歳で結婚させられ、離婚を勝ち取ったイエメンの少女ナジュード・ムハンマドさん 「大人になったら結婚したいか」と問われたナジュードさんは、首を横に強く振ったとか “flickr”より By rosewithoutathorn84
http://www.flickr.com/photos/7711591@N04/2555148918/
 
【13歳の少女が、挙式の5日後に性交渉が原因で死亡】
アラビア半島の貧困国イエメンは、イスラム教シーア派の一派であるザイド派と政府軍が北部で戦闘を続け、南部では分離独立派が動きを活発化させ、中部でも国際テロ組織アルカイダが勢力を拡大中・・・と、国中で紛争が生じている問題国でもあります。
イランの支援を受けるザイド派との紛争は、イエメン政府を支援する隣国スンニ派のサウジアラビアも巻き込んだ紛争となりましたが、2月12日に一応の停戦が成立しています。(その後の詳細はわかりませんが)

そんなイエメンで、8歳で強制結婚させられた少女が10歳で離婚を勝ち取ったこと、17歳未満の女性の結婚を禁止する法案に賛否の議論が巻き起こっていること、この法案に“反対”する女性たちの抗議行動が行われたことなどを、3月23日ブログ「イエメン 早婚を禁止する法改正に女性たちが抗議集会」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100323)で取り上げたことがあります。

そんななか、4月初めに13歳の少女が、性交時に裂傷した性器からの出血が原因で挙式の5日後に死亡する事件が起き、改めて早婚禁止法案の議論が注目を集めています。

****結婚最低年齢で論議=少女の悲劇の死で-イエメン*****
アラビア半島の貧困国イエメンで、17歳未満の女性の結婚を禁止する法案に賛否の議論が巻き起こっている。4月初めに13歳の少女が、挙式の5日後に性交渉が原因で悲劇の死を遂げ、人権団体は早期の対応を求めている。
イエメン北西部ハッジャ州の少女イルハム・アッシさんは、部族的な習慣に基づいて24歳の男性と意に反して結婚させられた。イルハムさんを失った母親は、男性側に非があるとして処罰を求めている。
イエメンでは昨年9月にも、12歳の少女が出産直後に死亡している。地元メディアによれば、サヌア大学の調査では、過去2年間の結婚では女性の52%前後が15歳以下で、中には年齢差が56歳に達するケースもあった。
低年齢での結婚が多い背景には、貧困や教育の欠如といった理由のほか、低年齢での結婚が宗教的な道から外れるのを防ぎ、女性を保護するとの考えもあるという。【4月30日 時事】
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少女の母親は「アッラーの法の実行を求める。処罰を求める」と語っています。少女の夫は地元警察に拘束されましたが、少女に性行為を拒まれたにもかかわらず無理やり性行為に及んだことを認めているとのことです。

イエメンでは、最低結婚年齢を女性17歳、男性18歳と規定した法律をめぐって激しい議論となっており、法律が議会を通過したにもかかわらず、保守派議員が改正を求めるなどの動きを見せ、実際にはまだ施行されていません。
保守派議員が反対するのは、イスラム教の預言者ムハンマドが8歳のアーイシャと結婚したとされることから、幼い少女との結婚は“アラーが許したこと”というイスラム的理解があるためのようです。
また、記事にもあるように、“低年齢での結婚が宗教的な道から外れるのを防ぎ、女性を保護する”という、女性の貞淑を守るという考えもあるようです。

【「預言者ムハンマドも少女と結婚した・・・」】
同じイスラム教の国ナイジェリアでは、49歳の有力上院議員がエジプト人の13歳少女と結婚したということで、議論になっています。
****49歳上院議員が13歳少女と結婚か、ナイジェリア*****
ナイジェリアでこのほど、49歳の有力上院議員がエジプト人の13歳少女と結婚したとの訴えが人権団体からあり、ナイジェリア上院は28日、事実関係の調査を命じた。
調査命令は、同国の人権監視団体など計11団体が上院の女性問題・青少年育成委員会委員長を通じて、調査を求める請願書を上院に提出したことを受けての措置。人権団体らは、議員の行為は国の名誉を傷つけるものだとして激しく非難しており、27日には複数の女性団体が議事堂前で、調査の必要性を訴え抗議活動を行っている。

メディア報道によると、問題となっている議員はAhmed Sani Yerima上院議員(49)で、13歳の少女(氏名不詳)に10万ドル(約940万円)の婚資を支払ったのち、首都アブジャのナショナルモスクで結婚式を挙げた。
AFPが入手した請願書のコピーによると、人権団体側はこの結婚について、18歳未満の結婚を禁じる2003年施行の子ども人権法に抵触していると指摘している。同法に違反した場合の罰則は50万ナイラ(約31万円)の罰金および(または)禁固5年と定められている。
請願書はまた、ナイジェリアがユニセフの子どもの権利条約締約国であることを強調している。
Yerima上院議員は、北西部のザンファラ州の知事を務めていた際、同国としては初めて州内にイスラム法を導入した人物として知られる。【4月29日 AFP】
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10万ドルというと日本でも大金ですが、ナイジェリアのような国では一般庶民とは縁のない金額でしょう。この件の事情はわかりませんが、娘を売り渡す親がいても不思議はない金額です。
この件に関して、在ナイジェリア・エジプト大使館は4月29日、少女は現在もエジプトの学校に通っていると発表しています。
エジプトの学校に通っているということは、少女側の家庭もそれなりに裕福な家庭なのでしょうか。

“問題となっているAhmed Sani Yerima上院議員(49)は英BBC放送のインタビューに対し、少女の年は13歳ではないと否定し、また10代の少女と結婚しても自分はイスラム教徒としていかなる法も犯していないと答えた。・・・「イスラムの観点からは何の規律も破っていないのだから、年齢の問題などまったく気にしない」と述べ、批判は中傷に過ぎないと反論した。「預言者ムハンマドも少女と結婚したことは歴史が示している。ゆえにわたしも何の法も犯していない。誤って言われているように、妻がたとえ13歳だとしてもだ」”【4月30日 AFP】

ただ、“同議員には少女たちを誘惑しては自分と結婚させているという悪評がついてまわっている。2006年にも15歳の少女を退学させ4回目の結婚をしたが、子どもをもうけた後に離婚した。妻は4人までと定められているため、13歳の少女と結婚するために4人目の妻と離婚したとみられる。”【同上】との指摘もあります。

ここでも、“預言者ムハンマドも・・・”です。
預言者ムハンマドにはいろんな事情もあったでしょうし、当時の社会事情もあったでしょうから、そのことをとやかく言うつもりはありません。
日本や欧米の現在の常識では、婚姻は本人の意思が大前提ですが、日本がかつてそうであったように、婚姻は家や親が決めるものという考えもあるのかも。
それでも、女性の健康上の問題、また、女性の早期婚姻が“カネで少女を売買する”ような事態を招きかねないことを考慮して、社会的に規制するのは至極妥当なことに思えます。
そこに“預言者ムハンマドも・・・”云々を持ち出すのは、自分たちに都合にいい世界を守ろうとしているようにしか思えません。

異なる価値観・世界観を持つ異文化とつきあっていくのは大変なことです。

コメント (2)
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