孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  止まらぬルイジアナ州沖の原油流出 箱作戦、ゴミ詰め、更には核爆弾も

2010-05-13 22:24:32 | 災害

(犠牲者11名を出して炎上する石油掘削施設Deepwater Horizon “flickr”より By SkyTruth
http://www.flickr.com/photos/skytruth/4543315980/)

【「米国の知力を結集して問題解決にあたる」】
アメリカ南部ルイジアナ州沖の石油掘削施設爆発による原油流出は、原油を止める作業が難航し、事故から23日目となる現在も、原油は一日あたり約32万リットル以上が流出していています。
アメリカ海洋大気庁と沿岸警備隊の推計では、12日までの総流出量は約1750万リットルに上るとみられており、流出した原油の大半は、沖合で漂流を続けています。
(はっきり記憶していませんが、今朝か昨日のTVニュースで、流出は原油からガスに変わりつつあり、ひところよりは“まし”になりつつあるという報道があったような・・・気もします。)

石油掘削リグを操業していた英エネルギー大手BPでは、8日、ドーム状構造物を原油が流出している箇所にかぶせる方法を試しましたが失敗しました。
****原油阻止「箱作戦」断念、ガスが邪魔 メキシコ湾流出****
米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で起きた原油流出事故で8日、流出を止めるために巨大な箱状構造物を上からかぶせようとしたが、新たな問題が発覚し、作業が中断された。水深約1500メートルの海底で水和化したガスが構造物の中にたまり、上部にある原油を吸い上げる口をふさいでしまっているという。【5月10日 朝日】
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進展しない事態に苛立つオバマ大統領は、科学者たちによる顧問団を結成したとか。
****続く米原油流出、政府が専門家チーム結成*****
米ルイジアナ州沖で起きた石油掘削基地の爆発・水没事故以降、油井からの原油流出を食い止めようとしている英エネルギー大手BPをサポートするため、バラク・オバマ米大統領は科学者たちによる顧問団を結成した。

約3週間前に起きた同事故以降、原油はメキシコ湾に流出し続けている。ノーベル物理学賞の受賞者でもあるスティーブン・チューエネルギー長官は12日、報道陣に「米国の知力を結集して問題解決にあたる」と語った。
チュー長官によると政官民、学界から最高レベルの物理学者、エンジニア、物質科学者、地質学者らを集め、「型にはまらない発想」で流出を停止させる方法を探る。「事態は改善しつつある。1週間前よりもましな気分だ」と述べたチュー長官は、そう楽観的に語れる新たな材料については言及しなかった。

停止作業は現在、流出個所をふさぐように海底に箱を沈め、中にたまった原油を長いパイプを使って海上の船上へくみ上げる方法を週末までには開始しようと、最終準備に入っている。
また、事故後に正常に作動しなかった油井からの流出を止める噴出防止装置に、ゴルフボールや古タイヤの破片といった「ごみ」を詰め込んで漏れ口をふさぐ作業も準備されている。【5月13日 AFP】
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【最悪のタイミング 不思議と少ないオバマ批判】
今回の事故は、オバマ大統領にとっては最悪のタイミングでした。
大統領は3月31日、環境への影響を懸念する民主党内の反対を押し切って、アメリカ沖合での石油・天然ガスの調査・開発にゴーサインをだしたばかりでした。

****米国:石油掘削拡大 オバマ大統領、前政権の政策踏襲*****
オバマ米大統領は3月31日、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地でエネルギー安全保障政策に関して演説し、大西洋沿岸とメキシコ湾東沿岸、アラスカ北部沿岸での石油・天然ガス掘削を拡大する方針を明らかにした。米政府は今後、環境影響評価などを行った上で、沖合での資源開発を進める。
共和党が主張してきた沖合掘削の拡大策を採用することで、医療保険制度改革でこじれた同党との関係修復を図り、気候変動対策法案の議会審議で協力を取り付けたい狙いがある。ただ、クリーンエネルギー開発など環境重視路線からの軌道修正には反発の声も出ている。オバマ政権は、エネルギー政策の合意形成に微妙なかじ取りを迫られそうだ。
米沖合での資源掘削は81~90年にかけて、環境保護を目的に議会の立法措置や大統領令によって順次、禁止区域が拡大された。しかし、原油価格が高騰した08年7月、ブッシュ前大統領は掘削禁止を撤廃する大統領令を出しており、オバマ大統領は「ブッシュ路線」を踏襲した。

オバマ大統領は演説で、クリーンエネルギー開発を米国再生の要とする方針に変わりないことを強調する一方で、「持続的な経済成長、雇用創出、米産業の競争力確保のために伝統的な燃料源も必要だ」と掘削の重要性を強調。さらに「米国の政治は分断状況にある」と指摘し、意見の対立を乗り越えて「バランスの取れたエネルギー政策」を追求する考えを示した。
共和党のマコーネル上院院内総務は「(大統領の演説は)正しい方向への第一歩だ。さらに掘削を推進すべきだ」と述べ、一定の評価を示した。一方、オバマ政権の支持基盤でもある環境保護派からは「失望した」(自然保護団体・シエラクラブ)などの批判が出ている。【4月1日 毎日】
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ブッシュ前大統領は、ハリケーン「カトリーナ」被害への対応の遅れで激しい非難を浴びました。
今回事故のタイミングの悪さ、事故処理がうまくいっていないこと、大統領が現場に出向いたのは事故から11日後だったことを考慮すると、オバマ大統領自身への風当たりがさほどきつくない現状は、オバマ大統領にとっては大変恵まれた状況と言えます。ブッシュ前大統領はきっと“フェアじゃない”と怒っているのではないでしょうか。

【ミニドーム案とゴミ詰め案】
前出【5月13日 AFP】で現在準備中と報じている“流出個所をふさぐように海底に箱を沈め、中にたまった原油を長いパイプを使って海上の船上へくみ上げる方法”は、8日に失敗したのと同じようなドーム状構造物を、原油が流出している3カ所のうち1カ所にかぶせる案ですが、構造物のサイズはかなり小さめになります。
かぶせた構造物にたまった原油を上部についたパイプを通じて海上へくみ上げ、回収する仕組みです。

この方法に関しては、
“長所:8日に失敗した原因は、構造物の内部にガスと水が結合してでき氷状の結晶が形成され、原油をくみ上げる穴をふさいでしまったため。この結晶は低温下で水とガスに大きな圧力がかかると形成される。
ミニドーム案は構造物が小さいので、同様の問題が生じるリスクは低くなると技術者たちは期待している。また8日のプランでは構造物を沈めた後に原油をくみ上げるパイプを設置することになっていたが、今回はパイプを最初から設置。そこから凍結防止用のメタノールを注入して結晶の形成を防ぐ。
短所:原油の流出を一部しか食い止められない。先ごろ失敗した案で用いた構造物は、全流出量の約85%を回収できるはずだった。ミニドーム案の場合はサイズが小さいので、成功しても回収量は大幅に少ないだろう。”【5月12日 Newsweek】とのことです。

また、“事故後に正常に作動しなかった油井からの流出を止める噴出防止装置に、ゴルフボールや古タイヤの破片といった「ごみ」を詰め込んで漏れ口をふさぐ作業も準備されている”という方法は、大量のゴミを防噴装置(BOP)に注入して原油の流出を食い止め、さらに泥やコンクリートを注入して油井を完全に封印する方法だそうです。【同上】
“ゴミを詰め込む”というのは、いかにも素人的な発想ですが、結局そういう方法が一番確実なのかも。

【5 回実践して、1 度を除き成功】
もっと物騒な方法もあるようです。
“ロシアで一番売れているという日刊紙 Komsomoloskaya Pravda が「現在メキシコ湾で起きている大規模原油流出は核爆弾で止められる」と報じているそうだ。
ソビエト時代には原油流出事故は管理された核爆発で止められてきたとのこと。「地下爆発によって岩を動かし、圧力をかけ、経路を塞ぐ」という方法で、ソビエト時代にはこの方法を 5 回実践しており、1 度を除き成功しているとのことだ。”【5月13日 Slashdot】
原油流出より更に悲惨な結果を生む危険もありそうな・・・そんな不安もあります。
ハリウッド映画的ではありますが。

コメント
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