孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

拡大するパレスチナの混乱 オバマ大統領、訪米イスラエル首相に会談要請

2010-03-22 13:47:49 | 国際情勢

(パレスチナ側が“怒りの日”と名付けて行った3月16日のイスラエル警官との衝突後、Vサインを掲げる東エルサレムの少年 “flickr”より By activestills
http://www.flickr.com/photos/activestills/4438343911/in/set-72157600268131839/

【“殉教”を口にする少年】
たまたま、今朝TVで放映していたドキュメンタリー「ガザに死す~英国人カメラマン 最後の映像~」を観ました。エミー賞も受賞したイギリスの名カメラマン ジェームズ・ミラーが2003年、パレスチナ・ガザ地区でパレスチナの子供たちの、死と隣り合わせの日常を撮影したものです。
この撮影の途中でミラーはイスラエル軍の銃撃を受けて死亡します。その銃撃の場面も映像に含まれています。

イスラエル軍戦車や民家を壊すブルドーザーへの子供たちの投石、それに対するイスラエル側の威嚇射撃も想像を超えた日常風景ですが、何より衝撃的だったのは、パレスチナの少年たちが“殉教”へのあこがれみたいなものを口にすることでした。
模型の銃などをつかったパレスチナ・イスラエルの間の戦いを模した“戦争ごっこ”は異様にリアルですが、その遊びでは“殉教”して死ぬ者が勝者となるとか・・・。

パレスチナ側武装勢力が夜間の活動の際に、“協力してくれる少年”を先に立たせて、路地の安全を確認しながら移動する場面もありました。
イスラエル軍は3月11日、09年1月のガザへの大規模攻撃において、ガザ市南部のビル内を捜索中、仕掛け爆弾が入っている疑いのあるバッグ数個を現地の9歳の少年に開けるよう命令したとして、兵士2人を軍事法廷に起訴しました。(このとき、バッグに爆弾は入っていなかったそうです)
どうしても殺し合いをやるのなら、自分達だけでやってもらいたいものです。

【少年2人を含むパレスチナ人計4人が死亡】
イスラエルの発表した東エルサレムへの新規住宅建設承認を契機とする衝突がパレスチナで広がっています。
ヨルダン川西岸や東エルサレムでは住民の抗議運動での衝突で子供を含む犠牲者が出ており、更なる拡大が懸念されています。
ガザ地区では、武装勢力のロケット弾発射に対するイスラエル側の報復空爆が行われています。

****イスラエル軍と衝突 発砲されパレスチナ人4人死亡*****
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ナブルス近郊で20日から21日にかけて、パレスチナ人住民とイスラエル軍が衝突し、少年2人を含むパレスチナ人計4人が死亡した。
イスラエルが占領する西岸や東エルサレムでは、同国政府の入植住宅建設計画などに反発するパレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突が相次いでいる。死者が出たことで騒動が広がる恐れがあり、米仲介のパレスチナ和平交渉に影響が出る可能性もある。

20日午後、ユダヤ人入植地に反対するパレスチナ人と同軍が衝突し10代の少年2人が死亡。2人が搬送された病院の医師によると、1人は胸部を撃たれ、もう1人は頭部に銃弾が残っていたという。21日には、パレスチナ人2人がイスラエル兵に射殺された。
イスラエル軍は20日の衝突について、「暴動を鎮圧するためにゴム弾を使用した」とする声明を発表し、実弾の使用を否定した。ただ、衝突時の状況を調査するとしている。21日の事件は「パトロール中の兵士をパレスチナ人が刺そうとしたので発砲した」と説明した。

アッバス・パレスチナ自治政府議長は市民に自制を促しているが、西岸や東エルサレムだけでなく自治区ガザの武装勢力も動き出している。パレスチナ解放機構(PLO)の幹部の一人は、「イスラエルの挑発行為が続けば、インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)につながる恐れがある」と指摘する。
パレスチナ和平を促すため西岸を訪問した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は20日、自治区ラマラで会見し、「占領地での入植活動は違法」と指摘して、イスラエル政府に入植を停止するよう訴えた。【3月22日 朝日】
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****イスラエル軍が再度のガザ空爆、11人負傷*****
イスラエル軍は19日夜、パレスチナ自治区ガザ南部の空港(閉鎖中)を空爆、AFP通信によると、近くにいた11人が負傷した。
イスラエル軍は、空港敷地内にあったテロ活動拠点を攻撃したと説明している。
18、19の両日、ガザからロケット弾5発が発射されたことへの報復攻撃で、イスラエル軍は19日未明にもガザを空爆している。【3月20日 読売】
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【「テルアビブで住宅を建てるのと変わらない」】
こうした中、アメリカを訪問するイスラエルのネタニヤフ首相に対し、オバマ米大統領が会談を要請しています。
医療保険制度改革案の正念場を迎えて、外国訪問を延期するなど国内問題で頭の中はいっぱいではないかとも思われるオバマ大統領ですが、パレスチナは捨てて置かれない情勢ですから当然の措置でしょう。
それにしても、いくつもの重大で待ったなしの問題によく同時に対処できるものだと感心してしまいます。
(今しがたのTVニュースで、医療保険制度改革案が下院で可決されたことを報じていました。「オバマ大統領は、民主党長年の悲願だった最重要課題をクリアして、山積する国内・国外問題に果敢に取り組み、低迷する支持率アップをはかっていく考え」・・・とのことです。)

ただ、ネタニヤフ首相は21日、住宅建設について「歴代政権の政策と変わりはない。我々の見解では、首都(エルサレム)での住宅建設は、テルアビブで住宅を建てるのと変わらない」と述べ、占領地東エルサレムでの入植住宅建設を今後も続ける方針をクリントン米国務長官に書簡で伝えたことを明らかにしています。

****オバマ米大統領、イスラエル首相に会談要請 和平交渉について協議へ*****
バラク・オバマ米大統領は21日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、23日に米ホワイトハウスで会談を行うことを要請した。会談では中東和平について協議される見込みだが、ネタニヤフ首相は、東エルサレムでのユダヤ人入植者住宅の建設中止を求めた米国の要請を拒否する姿勢を示している。(中略)

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長はネタニヤフ首相の発言について、協議再開につながるものではないと批判。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸でイスラエル軍によりパレスチナ人4人が殺害されたことも厳しく非難した。
ネタニヤフ首相はまた、同地を訪問中の潘基文(パン・キムン)国連事務総長とも会談。事務総長は、アラブ諸国に対し間接交渉を支持するよう求めると語った。
2日間の滞在中に、事務総長はガザ地区も訪れ、同地の境界封鎖は「受け入れがたい苦しみ」を引き起こしているとしてイスラエルを非難した。【3月22日 AFP】
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和平協議に消極的だったネタニヤフ首相は、将来のパレスチナ国家との国境画定問題などを協議することで同意する意向をアメリカ政府に伝えており、若干の譲歩姿勢は示していますが、東エルサレム入植問題では強硬な姿勢を崩していません。

【イラン問題にリンクするパレスチナ情勢】
アメリカ側は、イスラエルに敵対する武装勢力ハマスの関連組織に対してアメリカ国内資産凍結などの厳しい制裁措置を行うことで、イスラエル側の譲歩を引き出そうとしているとも報じられています。
しかし、この程度ではネタニヤフ首相も、国内の強行論を抑えて国際世論に譲歩することは難しいようにも思えます。

イスラエル・ネタニヤフ首相がもしパレスチナで譲歩するとしたら、それはイラン問題でアメリカがより強力な制裁措置を約束したときぐらいではないでしょうか。
イスラエルにとって、実際上の脅威はもはやパレスチナではなく、核保有に走るイランであるとも言われていますので、イスラエルが希望しているイラン核施設攻撃にアメリカがゴーサインでも出せば、パレスチナでの大幅譲歩にも応じるかも。
もちろん、それはまた別の大きな問題を引き起こしますので、アメリカとしてのおいそれと乗れる話ではありませんが。

【影が薄い潘基文事務総長とアッバス議長】
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、19日モスクワで、中東和平を巡る米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)の4者協議(カルテット)を行い、記者会見では、イスラエルによる入植活動凍結を呼び掛け、24カ月以内のパレスチナ建国を支持する4者の声明を発表しています。
この声明は、9日にイスラエル政府が承認した東エルサレムでの新たな住宅建設計画を非難。イスラエルにあらゆる入植活動の停止を求めています。
また前出記事にもあるように、パレスチナ・ガザ地区も訪れ、同地の境界封鎖は「受け入れがたい苦しみ」を引き起こしているとしてイスラエルを非難しています。
しかし、その影響力が現実打開にほとんど及んでいないことは残念なことです。

同様に、パレスチナ自治政府のアッバス議長の影が薄いことも気になりますが、これは昨今のパレスチナ情勢停滞・混乱の背景でもあり、また、結果でもあります。

コメント
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