孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ポルトガル  正書法の統一、「ブラジル式」へ 英断か、文化の放棄か

2010-03-04 22:19:09 | 国際情勢

(ポルトガル・リスボンの大航海時代を記念したモニュメント どの国も栄枯盛衰はあります。おそらく日本にも。中国にも。“flickr”より By sterol.andro
http://www.flickr.com/photos/sterolandro/2231797642/)

【ポルトガル文化をブラジルの「市場の力」に明け渡すも同然・・・】
ポルトガル語を公用語とする国は、ポルトガルが世界中に植民地を持っていた大航海時代の歴史によって、下記のように相当数あります。
欧州:ポルトガル
南米:ブラジル
アフリカ:アンゴラ、カーボベルデ、ギニアビサウ、サントメ・プリンシペ、モザンビーク、赤道ギニア
アジア:東ティモール、マカオ

現在ポルトガル語を話す2億3000万人のうち、推定1億9000万人がブラジルに暮らしているということで、ブラジルの占めるウェイトは圧倒的です。
ポルトガル本国のイベリアポルトガル語とブラジルポルトガル語では、若干の差異があるそうです。
英語でも、イギリスとアメリカでは異なりますし、世界各国の英語は、それぞれの地域で特徴をもっています。

ただ、上述のようにブラジルのウェイトが圧倒的で、なおかつ、今後ブラジルは“新興国”の代表国として、世界への経済的・政治的影響力が更に高まると見られていることもあって、ポルトガル本国においてもブラジル式のつづリに統一することになっているそうです。
当然ながら、“ポルトガル文化をブラジルの「市場の力」に明け渡すも同然だ”といった反発もあります。

****ポルトガル語圏で「ブラジル式」に表記統一へ、国民は混乱*****
2010年03月02日 10:54 発信地:リスボン/ポルトガル
ポルトガル語を母国とする国々での正書法の統一が、ポルトガル国内でもようやく始まりつつある。しかし、統一的に実施されていないため、多くのポルトガル国民が混乱しているという。
ポルトガルの文字改革は20年以上の議論の末、「ブラジル式」にしていくことで2008年にポルトガル議会で承認された。現在は報道機関が中心となって新たな「つづり」の採用をすすめているものの、政府は学校教育などで二の足を踏んでいる。

■混乱するポルトガル国民
ポルトガル政府は新正書法の2014年までの移行を打ち出しているが、教育省は新正書法の実施をたびたび延期しており、学校では2014年まで新旧両方の正書法を採用するとしている。
また、新聞社の多くも「漸次的な」移行を行うとしており、ある地方紙は「当面は約70%ほど」改正を採用するとの考えを表明しており、こういったことが住民の混乱にさらに拍車をかけている。
「改革が矛盾に満ちている」として採用を拒否しているポルトガル日刊紙プブリコのヌーノ・パチェコ共同責任者は、「(改革は)バカげている」と述べ、「子どもたちは学校で教わったものと違う正書法で書かれた新聞を読むことになる」と語る。
一方、教師のエリザベート・ロドリゲスさんは、新正書法に表記を改める際の規則が複雑な点を指摘している。

■正書法の共通化がもたらすもの
現在ポルトガル語を話す2億3000万人のうち、推定1億9000万人がブラジルに暮らしている。正書法を統一することで、インターネットの検察が容易になり、法的文書の共通化がますます進み、ポルトガル語の映画や書籍の市場が拡大することになるとされている。
2月初めに改革支持を打ち出したポルトガルLusa通信の情報関連責任者のルイス・ミゲル・ビアナ氏は、「正書法の共通化は、特にブラジルなどで巨大な市場を開くことになる」と語った。
一方、言語学者のアントニオ・エミリアーノ氏は、「正書法の改悪だ。ブラジルの拡大のための政治の道具になっている」と主張する。元植民地のブラジルですでに進められているこの文字改革について、エミリアーノ氏ら反対派は、ポルトガル文化をブラジルの「市場の力」に明け渡すも同然だと主張している。【3月2日 AFP】
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【漢字の統一は?】
ブラジルですでに進められているこの文字改革が、本国ポルトガルの文字とどれほど違うものか全くわかりませんが、旧宗主国ポルトガルの文化的反発・抵抗は当然のこととして、ある意味では“よく踏み切ったものだ・・・”と感心する部分もあります。

先ほどは英語の話をしましたが、日本語で言えば漢字の統一でしょうか。
中国の簡体字、台湾の繁体字、そして日本の漢字・・・それぞれのスタイル・歴史がありますが、人口的にも圧倒的で、新興国の旗頭でもある中国の簡体字に統一しようか・・・なんて話は、今のところありえません。
それを思えばポルトガルの方針は、相当の決断です。

【ブラジル大統領選挙】
一方、日の出の勢いのブラジルは、今年大統領選挙が予定されています。
経済の急成長や2016年リオデジャネイロ夏季五輪招致などの実績を上げた左派ルラ大統領の人気は絶大ですが、憲法の規定で次期大統領選には出馬できません。

****大統領の後継候補は元ゲリラの女性官房長官 ブラジル****
今年10月に予定されるブラジル大統領選挙で、ルラ大統領の与党・労働党は後継の公認候補に女性のルセフ官房長官(62)を擁立することを決めた。当選すれば、ブラジル初の女性大統領になる。
ロイター通信や地元報道によると、ルセフ氏は1964年から85年まで続いた軍政下で左翼ゲリラの抵抗運動に加わり、3年間の投獄経験もある。経済学者でもあり、鉱業・エネルギー相も務めた。
大統領選には、前回ルラ大統領に敗れたセラ・サンパウロ州知事が野党・ブラジル社会民主党から立候補する見通しだ。世論調査ではセラ氏が約35%の支持を集め、ルセフ氏を10ポイント以上リード。ルセフ氏は貧困層の底上げを図るルラ大統領の政策維持を訴え、支持を伸ばしつつある。【2月25日 朝日】
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コロンビアのウリベ大統領以外は左派が政権を担う南米ですが、ルラ大統領の後継候補ルセフ氏の支持は低迷しており、ブラジルでは左派政権が一旦終了するのではないかと予想されてきました。
“ルセフ氏は貧困層の底上げを図るルラ大統領の政策維持を訴え、支持を伸ばしつつある”とありますし、ルラ大統領のテコ入れもあるでしょうから、今後のルセフ氏の伸びはどんなものでしょうか。

コメント
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