孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「国際女性の日」  生命すら脅かされる女性の境遇 インドの議会改革

2010-03-11 21:35:00 | 世相

(3月8日の「国際女性の日」 カバディの国際トーナメントを楽しむインドの女性
“flickr”より By Marissa Bronfman
http://www.flickr.com/photos/marissabronfman/4419786933/)

3月8日(月)は「国際女性の日」でしたが、今なお女性の置かれている立場に大きな問題があること、単に社会的地位云々ということではなく、生命の危機にさらされることが少なくないことが、残念ながら世界の現実です。

【名誉殺人】
中東やアジアの国々では「名誉殺人」と呼ばれる慣習が今も行われ、司法的にも野放しになっていることもあります。
****毎年5000人が名誉殺人の犠牲に、国連人権高等弁務官*****
ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は4日、世界で毎年5000人の女性が「名誉殺人」で命を落としていると発表した。
名誉殺人(honour killing)とは、婚外交渉を持った女性や、親が決めた相手とは別の男性との結婚を望む女性を一族の名誉を守るためとして殺害すること。中東や南アジアなどで報告されている。
発表によると、世界の女性の3人に1人は生涯のなかで殴打や性的暴行などの虐待を受けており、そのような虐待は同じ一族からなされることが最も多いという。
ピレイ高等弁務官は、一部の国の司法制度が名誉殺人を犯した者を罰しない仕組みになっていることが問題を悪化させていると指摘し、国際法のもとでは、女性が差別されないよう制度を整備するのは国家の責任なのは明かだと述べた。インドは前月、名誉殺人を厳しく罰する新法の制定を検討していると発表している。【3月6日 AFP】
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【胎児選別】
女性は、誕生した時点、あるいは胎内に宿った時点で、“望まれない子供”としてその生命が意図的に断たれることも多くの国で見られることです。人口大国の中国やインドで特にそうした傾向が強いとも報じられています。

****アジアでの性差別、命奪われた女性は9600万人 UNDP報告書*****
アジアでは差別的な医療やネグレクト(育児放棄)、または胎児の選別により、中国とインドを中心に約9600万人の女性の命が失われている――。国連開発計画(UNDP)は8日、こうした報告書を発表した。

国際女性の日(International Women's Day)に合わせて発表されたこの報告書は、「経済力」「政治参加」「法的保護」の3分野における女性の権利向上の必要性に焦点をあてたもの。
それによると、アジアでは、男児の方が好ましいという古い考えに基づいた女児の殺害や中絶が男女比の大きな不均衡を生み、この問題は急速な経済発展にもかかわらず悪化する一方だという。
世界的に見ても、出生時の男子の比率が最も高いのは東アジアだ。出生時男女比の世界平均が107:100であるのに対し、東アジアは119:100となっている。
この比率を押し上げているのが、出生における性別格差の著しい中国とインドだ。失われた女性の命の数は両国で約8500万人にのぼっているという。
なお、失われた命の数は、現在の人口における実際の男女比を、妊娠・出産・出産後に男子と同等の医療が受けられたと仮定した場合の理論的な男女比と比較することにより導き出された。
報告書は、アジアは力強い経済成長を遂げているにもかかわらず、多くの女性がいまだにその恩恵を被ることさえできずにいると指摘している。
アジア地域、特に南アジアは、暴力からの保護、保健・教育・雇用の機会、政治参加などにおける女性の地位が、しばしばサハラ以南のアフリカ諸国をも下回り、世界最悪と位置づけられることが多い。【3月9日 AFP】
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【女性議員割合とクオータ制】
こうした女性の地位・境遇の改善は、その地域によって様々な問題と関わり一様ではありませんが、政治の世界における女性の進出を促進し、女性の声が政治決定に反映するシステムにすることは、有力な解決方法のひとつです。

****女性議員:ルワンダ56%で世界1位、日本11%で97位*****
世界151カ国の国会議員らでつくる列国議会同盟(本部・ジュネーブ)は8日の「国際女性の日」に合わせ、今年1月末現在での世界187カ国議会(下院)における女性議員の割合ランキングをまとめた。
上位は、(1)ルワンダ(56.3%)(2)スウェーデン(46.4%)(3)南アフリカ(44.5%)。日本(衆院)は11.3%で97位。「小沢ガールズ」の登場で昨年同時期より増えたが、各国平均の18.8%をかなり下回った。

各国平均は1995年の11.3%から、15年間で年0.5ポイントの割合で増加。これは男女に差が出ないようあらかじめ議席比を決めておくクオータ制の効果が大きく、列国議会同盟は「女性進出増加のための唯一の対策だ」としている。
制度発祥の国はノルウェーで、北欧から欧州全域に広がった。女性議員の割合が高い今年の上位15カ国のうち、クオータ制を採用していないのは3カ国だけ。ルワンダは大虐殺による動乱の後、国連の指導で憲法に「女性議員を全体の30%以上とする」クオータ制を規定。南アフリカも民主化と同時にクオータ制を導入している。
ただし、比例代表制の国では80%が採用しているのに対し、小選挙区制の国の導入率は25%で、選挙制度による差が大きい。【3月6日 毎日】
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今年に限った話ではありませんが、主要国の中では日本の低さが際立っています。
昨年が107位だったとのことで、「小沢ガールズ」効果で若干は改善したようですが。

【インド 「女性が家庭(Home)から下院(House)へ」】
名誉殺人や出生時の女性差別が大きな問題となっているインドでは、このほど“クオータ制”が取り入れられました。
****下院と州議会の議席の3分の1を女性に、印上院が憲法改正案可決*****
インド上院は9日、下院と各州議会の定数の3分の1を女性に割り当てる憲法改正案を可決した。共産党、インド人民党(BJP)が与党国民会議派とともに賛成にまわって賛成票は186となり、憲法改正に必要な3分の2を超えた。法案は下院に送られる。
この法案は1996年に最初に提案されたが、イスラム教徒と低カーストの女性に議席を割り当てなければヒンズー教徒の一部の女性しか恩恵を受けないとして、地域の社会主義政党が猛烈に反対していた。

国際女性の日(International Women's Day)の8日に上程されたが、反対する議員が法案を破って議長に投げつけたり、議長席のマイクを奪ったりするなどの妨害をしたため、議員7人が処分を受け、採決は見送られていた。9日は院内の秩序維持のため衛視が動員された。
マンモハン・シン首相と国民会議派のソニア・ガンジー総裁が女性の権利拡大のうえで画期的な出来事だとするコメントを出したほか、現地紙タイムズ・オブ・インディアが「女性が家庭(Home)から下院(House)へ」という見出しでこのニュースを伝えるなど、新聞各紙も歓迎する論調が目立った。

インドにはガンジー氏やプラティバ・パティル大統領など、重要な役割を果たしている女性政治家もいるものの、政界は男性が支配的で、女性議員は定数545の下院で59人、定数248の上院で21人にすぎない。【3月10日 AFP】
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こうした試みが女性の境遇の改善を加速させることを期待したいものです。

【タリバン】
それにしても、アフガニスタンで、女性の人権・教育を否定しているとしか見えないタリバンが再び政治的な力を得ようとしていることは残念なことです。
サウジアラビアのように、やはり女性の社会的立場が制約された国もありますが、一般には、イスラム社会とはいってもタリバンのような極端な女性差別政策を取っている国は多くはないと思います。
そうしたイスラム国家が、イスラム世界全体のイメージダウンにもなるタリバンの女性差別について、どうして厳しい批判を行わないのでしょうか?
かつて、タリバンが政権獲得した際、その女性差別を批判したのは“悪の枢軸”とも呼ばれるイランだけでした。
コメント
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