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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

上海協力機構(SCO)首脳会議と初のBRICs公式首脳会議

2009-06-17 21:28:49 | 国際情勢

(インド・ムンバイ同時テロで関係が悪化して以降、初の首脳会談を行ったインド・シン首相とパキスタン・ザルダリ大統領 “flickr”より By Current News Stories
http://www.flickr.com/photos/currentnews/3633462842/)

【米のアフガニスタン安定化策支援】
ロシア、中国と中央アジア(ウズベキスタン、キルギス、カザフスタン、タジキスタン)の計6カ国でつくる上海協力機構(SCO)の首脳会議が15日、ロシアのエカテリンブルクで開催されました。
16日には新興4カ国「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)の初の首脳会議も行われ、国際金融改革などが協議されました。
一連の首脳会議は欧米を除く枠組みとしては最大規模でもあり、欧米への対抗軸を強く意識した会合として注目されました。

上海協力機構(SCO)の首脳会議には、SCOのオブザーバー国として、再選を決めたばかりのイランのアフマディネジャド大統領や、パキスタンのザルダリ大統領、インドのシン首相、アフガニスタンのカルザイ大統領も首席しています。

協議された主な事項は、アフガン情勢や世界の「多極化」支持でした。
アフガン情勢に関しては、ロシア・メドベージェフ大統領が「アフガニスタンの安定化は隣国パキスタンなしには進まない」として、アフガニスタン・パキスタン両国とロシアの3カ国での会談の枠を設定。
アメリカ・オバマ政権が優先課題に掲げるアフガニスタン安定化で、アメリカへの協力を強化する意向を示しています。
ロシアはアフガニスタンへの物資輸送のルート提供を含め、アメリカにアフガニスタン支援の姿勢を示すことによって、核軍縮や米ミサイル防衛(MD)の東欧配備問題などで譲歩を引き出したい思惑もあるとも報じられています。

米軍のアフガニスタンへの補給拠点であるキルギスのマナス米空軍基地が8月に閉鎖される問題では、当事国のキルギスと存続を求めるアフガニスタン、中央アジアにおけるアメリカのプレゼンスを弱めたいロシア・中国などの間で協議されたものと思われますが、その内容についてはまだ目にしていません。

【多極化クラブ】
「多極化」については、世界の多極化や国連中心の外交を推進すべきだとする「エカテリンブルク宣言」を採択しています。
もともと、中ロを中心とするSCOは創設当初から、アメリカへの対抗軸となる狙いが込められていた枠組みです。
今回は、選挙後の混乱で1日遅れの到着となったイラン・アフマディネジャド大統領が「イラクの占領が続き、アフガニスタンの混乱は拡大している。パレスチナ問題も未解決だ。アメリカは経済危機に陥り、解決の希望はない」「アメリカと同盟国は危機に対処できない」と主張するなど、“会議はアメリカの一極支配に揺さぶりをかける「多極化クラブ」の思惑を色濃く反映する場となった。”【6月17日 産経】とか。

【ムンバイテロ後、初の印パ首脳会談】
こうした会議のメインテーマ以外にも、注目される首脳会談等も行われています。
まず、インドのシン首相とパキスタンのザルダリ大統領が16日、昨年11月のインド・ムンバイ同時テロで関係が悪化して以降、初の首脳会談を行っています。

****上海協力機構:印パ首脳が会談、和平協議再開で条件提示*****
会談は、07年秋から中断している和平協議の再開に向けて双方が条件を提示する形で進み、7月16日にエジプトで開かれる非同盟諸国会議で両首脳が再び会談することで一致。協議再開の結論は持ち越した。
会談前、両首脳は握手し、友好的な雰囲気を演出。ただ約1時間の会談後は会見せず、双方の歩み寄りにはまだ課題が残っているとの印象を与えた。(中略)
アフガニスタンでの対テロ戦争推進には両国の関係改善が不可欠と見る米政府も注視していた。
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また、国境問題を抱える中国の胡錦濤・国家主席とインドのシン首相が15日夜に会談し、中印首脳間のホットラインを開設することで合意し、国境画定作業を急ぐ方針で一致したとのことです。
首脳会議終了後の17日には、中国の胡錦濤・国家首席とロシア・プーチン首相がモスクワで会談し、胡錦濤・国家主席は、プーチン首相を10月に中国に招待しています。

【中国の存在感】
中ロが主導する会議ですが、やはり経済力に勝る中国の存在感が大きかったようです。
胡錦濤・国家主席は16日、SCO加盟国の経済危機対策を支援するため、100億ドルの信用支援を実施すると表明しています。

****上海協力機構 存在感増す中国 首脳会議 資源確保へ融資攻勢*****
SCOは中露が牽引(けんいん)役を果たしてきたが、金融危機の中でも“融資攻勢”をかけてエネルギー確保に動く中国と、経済復調の遅れが指摘されるロシアの体力差が浮き彫りになりつつある。(中略)
SCOは2001年の創設後、中国とロシアが主導してきたが、金融危機を境に両国の経済環境の違いを示す出来事が続いている。

1つは屈指の天然ガス産出国、トルクメニスタンをめぐる綱引きだ。インタファクス通信などによると、ロシアは今年4月、欧州向け天然ガスの需要減を受け、トルクメンと売買契約を結んだガスの供給量を一方的に削減した。
「契約違反だ」と反発を強めるトルクメンは今月、世界4位の埋蔵量ともされる南ヨロタニ・ガス田の開発で中国から30億ドルの融資を受けることで合意。トルクメンは今後30年にわたり中国にガスを安定供給する契約を交わすなど、中国と親密な関係を築きつつある。
中露間の懸案も金融危機を背景に動き始めた。ロシア・東シベリアからの石油パイプライン建設計画で、中国はロシアの石油関連企業2社に総額250億ドルを融資し、その見返りに中露共同で建設を進めることで合意。今月には融資第一弾となる計6億5000万ドルが2社に送金された。
価格決定権を中国に握られるのを嫌うロシアはパイプラインの建設を渋ってきたが、ロシア国内のエネルギー関連企業は対外債務返済に追われており、台所事情につけ込む形でエネルギー獲得に動く中国のしたたかさがうかがえる。
エカテリンブルクでは16日、中露とインド、ブラジルの新興4カ国(BRICs)による初の首脳会談も行われる。が、回復の兆しが出てきた中国やインドに対し、ロシアは今年の国内総生産(GDP)が昨年比マイナス8%と大きく落ち込む見込みで、世界経済の原動力と目されてきたBRICsの中でも、復調に差が現れつつあるのが実情だ。【6月16日 産経】
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【実情が異なるBRICs】
16日にはSOC首脳会議に引き続き、ルラ・ブラジル大統領、メドベージェフ・ロシア大統領、シン・インド首相、胡錦濤・中国国家主席が参加して新興4カ国(BRICs)の初めての公式首脳会議が行われました。
BRICsは世界人口の42%、その経済規模は世界全体の60兆7000億ドルのうち約15%を占めていますが、ゴールドマン・サックスでは、今後20年で主要7カ国(G7)の経済規模を上回り、中国経済は米国を追い抜くとの予測を示しています。
今回首脳会議は、米国発の世界的な金融危機を受け、欧米日の先進国主導で進められてきた国際経済体制の改革を求め、新興国の発言力向上を狙ったものです。

会議では国際金融機関および国連での発言権拡大を求めていくことで一致しましたが、声明には、ドル基軸通貨体制を公然と批判する文言は盛り込まれませんでした。
共同声明は「世界経済の変化を反映し、国際金融機関の改革促進に取り組む。新興国および発展途上国は、国際金融機関において発言権と存在を高めなければならない」と強調しています。

BRICsと言っても、経済的に突出しており2兆ドル相当の外貨準備を保有する中国と、ロシアやブラジルでは相当に認識の違いがあるようです。
世界最大の米国債保有国でもある中国は、ドルが今後も世界経済において支配的な役割を維持してくれないと困る実情があります。

****BRICs初の首脳会議 「国際金融で発言権」*****
4カ国の経済構造・規模は大きく異なる上にBRICsやドル基軸体制をめぐる温度差も色濃く、この枠組みの将来像はいまだ不透明でもある。 (中略)
会合に先立つロシア大統領側近の説明によれば、4カ国は計3兆ドル(290兆円)にのぼる外貨準備を各国通貨で持ち合うことも議論したとみられる。
しかし、BRICsと呼ばれる枠内でも中国の国内総生産(GDP)が他の3カ国分に匹敵するなど突出しており、金融危機後の成長ペースでも生産・サービス業型の中国とインドが資源輸出や農業に依存するロシアとブラジルに差をつけると予測されている。
ロシアとブラジルがBRICsの枠組みづくりに熱心で米ドル基軸への対抗心をあらわにしてきたのに対し、中国とインドにはドル崩壊への警戒も強い。ロシアは今回の首脳会議で、「超国家通貨の創設」といった従来の主張を収めざるを得なかった。
各国間には経済摩擦や政治体制の違いもあり、BRICsが近い将来、一つの集合体として実質的機能を持ち得るかには否定的な見方も少なくない。 【6月17日 産経】
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BRICsは経済成長という共通点以外には、政治的立場や優先課題などで一致する部分は多くないと指摘もあり、BRICsが今後強固な団結を実現できるかは難しいところのようです。

コメント
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