(ホンジュラスのサンペドロスラで開催された米州機構(OAS)総会のOfficial photo
左手後方がクリントン長官のように見えます。
OASはアメリカ主導の反共同盟と言われてきましたが、今や中南米諸国の大半が左派政権となっています。
“flickr”より By U.S. Department of State
http://www.flickr.com/photos/statephotos/3592806098/in/set-72157619068205311/)
【関係改善の流れ】
アメリカは長年キューバと敵対状態にありましたが、オバマ政権はこれまでキューバ系米国人のキューバへの渡航・送金制限の撤廃を発表するなど、関係改善に向けたシグナルを送ってきました。
その流れで、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は4月27日、 “米国務省は米国内のキューバ外交官と非公式協議の開催を計画。移民問題や麻薬密輸対策、地域安全保障などについて公式協議を行えるかどうかの可能性を探る。また、相互理解を促進するための文化交流も検討されている。”と報じています。
5月31日には、その移民問題について、アメリカとキューバが移民協議の再開で合意したことが報じられました。
****米国:移民協議再開でキューバと合意*****
ロイター通信は31日、米政府当局者の話として、米国とキューバが移民協議の再開で合意したと伝えた。米側の申し入れにキューバが応じた。直接の郵便サービスも話し合う。キューバ側は麻薬、ハリケーン対策などでも協力する意向。オバマ政権は「対話路線」への肯定的な反応として歓迎している。
オバマ政権は既に、キューバ系米国人のキューバへの渡航・送金制限の撤廃を発表するなど、関係改善に向けたシグナルを送っている。両国間の移民協議はブッシュ前政権時代の03年に中断した。
近くホンジュラスで開催される米州機構(OAS)の会議では、キューバのOAS復帰も議論される見通し。だが、クリントン米国務長官は、キューバの復帰は同国の民主化が条件との姿勢だ。【6月1日 毎日】
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【キューバ除名解除】
上記記事にもあるキューバのOAS米州機構復帰問題については、OASからキューバを排除した62年決議を無効にする方針ではアメリカを含む加盟国が一致しているものの、民主改革を条件に挙げる米国に対し、キューバの盟友国である左派諸国は無条件での復帰を求めて、難航が伝えられていましたが、「民主主義、民族自決、人権などのOASの原則にのっとって」という文言を入れる形で決着しました。
****米州機構:和解ムードが後押し キューバ除名解除*****
南北米大陸34カ国による米州機構(OAS)が3日、1962年以来除名していた社会主義国キューバの復帰に扉を開けた。米国のオバマ政権誕生で訪れた同国と中南米諸国の和解ムードが、冷戦の残滓(ざんし)を取り除いた格好だ。
OAS総会は、62年のキューバ除名決議を無効とする新たな決議を採択。新決議は「民主主義、民族自決、人権などのOASの原則にのっとって」との文言を盛り込んだが、キューバ復帰に特別な条件をつけなかった。
キューバ復帰には米国を除くほとんどの加盟国が無条件に支持した。米国はキューバの民主化を条件にすると主張していたが、譲歩した形だ。キューバの盟友国ベネズエラなど左派系政権の国々は、米主導の価値観を印象付ける「民主主義」の文言が新決議に入ることに反発したが、最終的に了承した。
キューバ除名について、中南米の左派指導者らは「過去の汚点、過ち」と指摘する。AP通信によると、キューバの盟友で総会開催国ホンジュラスのセラヤ大統領は「きょうで冷戦は終わった」と歓迎した。【6月4日 毎日】
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【アメリカの当惑】
アメリカ、左派諸国双方が譲歩した形ですが、“キューバ復帰に(民主化という)特別な条件をつけなかった”という点で、実質的にはアメリカの当初の想定を超える内容と言えます。
****米州機構:「オバマ効果」に当惑*****
キューバの米州機構(OAS)除名決議の無効化について、オバマ米政権は今回の年次総会での実現は時期尚早と考えていた。だが、オバマ政権の「対話路線」に期待する中南米諸国の勢いに逆に背中を押された形で譲歩。キューバとの関係改善は望む一方、「オバマ現象」による周囲の環境の変化に、戸惑いもみせている。
クリントン国務長官は総会前、キューバのOAS復帰は同国の民主化が必要とし、無条件復帰には反対するよう各国に働きかけた。決議採択直前の3日午後、クローリー国務次官補(広報担当)は「幅広い支持を構築した」と“勝利”を確信していたほどだ。
だが事態は米国の想定とは逆に進み、中東に向け出発した長官は、採決に参加しない形で「消極的な賛成」を余儀なくされた。長官はその後、声明を発表。新決議で民主主義などの文言が盛り込まれたことから、「キューバが簡単に復帰できないことで合意したことは喜ばしい」と一応は歓迎してみせた。
キューバとの実質的な関係改善に関し、米議会内の強固な反対派の存在もあり、オバマ政権は民主化を条件とする方針を変える予定はない。ただ、かたくなな姿勢は中南米諸国の反発を招きかねず、今後は難しい局面を迎えそうだ。【6月4日 毎日】
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「オバマ現象」は、当のアメリカの思惑をも超えて、キューバとの和解を促す方向にアメリカを動かしているようです。
これについては、“キューバ復帰決議に後ろ向きだった米国が最後に同意した背景には、キューバが実際にOASに復帰する可能性が当分なく、米国の対キューバ政策にも大きな影響を与えないとの判断もあったとみられる。”【6月4日 朝日】といった見方もあります。
確かに、これまでキューバはOASを「アメリカの理念を地域に押しつける組織」と見なして敵視してきました。
ラウル・カストロ国家評議会議長は「OASは消え去るべき略語」、フィデル前議長も「ゴミ溜め」とこき下ろしていたとも。【ウィキペディア】
しかし、キューバ共産党機関紙グランマは今回決定をウェブサイトで速報し、「ホンジュラスやチリ、ブラジルなどは賢明で歴史的な修正と祝福している」と友好国の反応を好意的にとらえる見方を伝えています。【6月4日 毎日】
素人考えでは、キューバもこの流れに敢えて逆らわず、OAS復帰を要請する方向で時代の流れに乗ることを得策と考えるのでは・・・とも思えるのですが、どうでしょうか。
【6月4日 毎日】も、“キューバの正式復帰は同国の要請と協議を経て実現する。キューバは、OASが米国主導として復帰を拒む姿勢を示していたが、いずれ復帰を決断するとみられる。”という見方を示しています。
【望まれる敵対関係解消】
かつて“キューバ危機”を引き起こしたような敵対関係が解消されるのであれば、どういう形にせよ、まずは喜ばしいことではないかと単純に考えています。
次はイランと北朝鮮ですが、イランはともかく、北朝鮮は難しそうです。