孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ソマリア  停戦協定の実効性は?

2008-08-05 15:37:52 | 国際情勢

Photographer: Abdurrahman Warsameh
(ソマリア・モガディシオ 戦いの犠牲者の集団埋葬 つかの間の脆弱な停戦は両陣営には建て直しの時間を、市民には十字砲火から逃れるための時間を与えてくれます。 その間にも、新たな大規模な攻撃計画が進行しています・・・
“flickr”より By ISN Security Watch
http://www.flickr.com/photos/securitywatch/2489733166/)

【打ち続く内戦 家を失った住民を待ち受ける飢餓】
ソマリア。
いつ果てるとも知れぬ内戦。
エチオピアの介入で支える暫定政府は存在するものの、エリトリアが支援するイスラム原理主義勢力との戦いが全土で繰り広げられ、イスラム原理主義勢力と共にいるとされるアルカイダを狙うアメリカがエチオピア・暫定政府側を支援。
しかし、暫定政府側もイスラム原理主義勢力側も、激しい内部争いが絶えない・・・。

このブログでソマリアに触れたものをピックアップすると、タイトルを並べるだけで混迷の様子、希望のなさが窺われます。
07年7月19日「治安悪化が続くソマリア 弱肉強食の世界に展望は開けるか?」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070719
07年8月13日「ソマリア 国民和解会議、しかし増え続ける難民」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070813
08年2月17日「エチオピア、エリトリア、そしてソマリア」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080217
08年5月25日「ソマリア  情勢は悪化、出口は?」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080525

内戦と旱魃により住む家を失ったり、飢餓に陥ったりして救援を必要とする人数は今年末に人口のおよそ半数、350万人に達すると考えられています。
しかし、あまりに常態化した無政府状態のため、また、特に資源が豊富でもなく、冷戦終了後は地政学的な重要性も薄れたこともあって、もはやソマリアで多少の事件がおきても、多少の犠牲者が出ても、誰も驚かない、国際ニュースにもならない、“忘れられた”存在になっています。

もちろん国際支援が入ってはいますが、あまりの無政府状態のため、その活動が脅かされています。
*****ソマリア:援助活動従事者が避難、待ち受ける飢饉*******
国際的人道支援団体のソマリア職員は援助活動について「安全の保証がほとんどないリスクが高い活動」と言う。今年に入ってからでも外国人を含む20人の援助活動従事者が殺害され、30人が誘拐された。17人は身代金を支払い解放されたが、13人はまだ捕らわれたままだ。
 国連機関と9つの国際援助団体がモガディシュに残っているが、イスラム反政府武装集団と暫定連邦政府(TFG)の紛争に巻き込まれて援助の実施が困難となっている。
 オックスファム・インターナショナルは、この状態が続けば今年中に幾つかの地域で飢饉が発生すると見ている。7月23日の国連安保理でアハメド・オウルド・アブダラ特使が各国にWFPの支援物資海上輸送の警護と、ソマリア人援助職員の警護を要請した。
 残念ながら、政治的対応は期待できない。エチオピア軍の支援を受けた暫定連邦政府(TFG)の支配は中南部地域にとどまり、ほとんどの地域は様々なイスラム系集団が支配する。国連が仲介したTFGとイスラム法廷連合との和平案に反発したイスラム過激派は、中南部地域におけるテロ活動を激化。イスラム法廷連合は二派に分裂した。
 イスラム系の名称を持つ新しい集団が援助職員を脅迫しているが、TFG軍部も幾つも検問所を設けて支援物資の運搬を妨げている。
 治安悪化により人道援助が困難に陥るソマリアの状況について報告する【現地7月25日 IPS】
*****************

92年、当時の実力者アイディード将軍側近を拉致しようという作戦中のアメリカ軍ヘリが撃墜され、その兵士を救援しようとするアメリカ軍とアイディード将軍派の間で行われた市街戦(モガディッシュの戦闘)を映画下した「ブッラクホーク・ダウン」という作品があります。
この映画の冒頭で、空から届けられる救援物資に群がる人々に武装勢力が銃弾を浴びせ、これを自分達のものにする・・・そんなシーンがあったように思いますが、必ずしもフィクションではないような状況です。

【今年6月 停戦協定】
そんなソマリアから珍しく記事が入っていました。
*****道路脇で爆発、20人死亡40人以上負傷 ソマリア首都*****
アフリカ東部ソマリアの首都モガディシオで3日、主要道路脇で大きな爆発があり、20人が死亡、40人以上が重傷を負った。AP通信などによると、路上のごみの山に隠された爆弾が爆発。道路を掃除していた女性や子どもが犠牲者の大半だという。
 91年以来、無政府状態が続く同国では、エチオピア軍の支援を受ける暫定政権と、イスラム系の反政府武装勢力の間で今年6月、停戦協定が結ばれた。その協定が逆に、それぞれの内部での権力争いを再燃させていると言われる。2日には、暫定政権首相による国有財産の不正利用を訴え、閣僚10人が辞職の意向を表明している。【8月3日 朝日】
**************

この記事によると6月に“停戦協定”が締結されたとのこと。
全く知りませんでした。
何はともあれ、喜ばしいことです。
関連記事を探すと、この“休戦協定”に関するBBCの英語記事がありました。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/7445302.stm

署名から30日後に停戦の効力を発し、90日間停戦が実施され、その後も更新の予定。
更に、国連平和維持軍が展開したら120日以内にエチオピア軍は撤退する・・・そんな内容のようです。
ただし、イスラム法廷会議(ICU)の創始者であるHassan Dahir Aweysは「我々は我々の国をアラーの敵から解放するまで戦い続ける」と、交渉には参加しなかったようで、イスラム武装勢力の中の一部勢力(穏健派)との交渉に留まったようです。

交渉は国連主導でジブチで行われましたが、当事者双方が同じホテルに泊まっていながら、互いに相手を避けあい、交渉に入るまでに8日間要したとか・・・。

署名からすでに30日は経過していますが、停戦の状況はどうなっているのでしょうか?
06年6月など、過去にも停戦協定がありましたが、今回の協定の実効性はどうでしょうか?
上記【朝日】の記事によれば、停戦協定によって、今度は各勢力内部の争いが激しくなっているようで、どこまで行っても出口が遠いようです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする