孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  五輪で活躍するコベントリー選手 もつれる与野党間協議

2008-08-14 14:18:40 | 国際情勢

(女子200m個人メドレーで力泳するコベントリー選手・・・だと思うんですが。スイミングキャップの両側に“CO”RY”と見えますし・・・。flickr”より By RoomService_Sport
http://www.flickr.com/photos/26505308@N03/2760157825/)

【北京で銀3個】
北京オリンピックの女子競泳でジンバブエのカースティ・コベントリー選手が活躍しています。
100m背泳ぎ、200m個人メドレー、400m個人メドレーの3種目で銀メダルを獲得しています。
200m背泳ぎはまだ残っていますが、この種目でも世界記録を出したりしていますので、メダルが期待されます。
彼女はアテネでも金、銀、銅各1個、計3個を獲得した実力者です。

彼女の活躍に目が止まるのは、ジンバブエの選手であるということ、そして彼女が白人であるということです。
今年6月に行われたジンバブエ大統領選挙をめぐる不正・混乱はいまだに決着がついていません。
その混乱の背景のひとつである経済崩壊・ハイパーインフレーションは世界でも戦後最悪の状況を呈しています。

もちろんスポーツと政治は別もの、ましてや人種・民族とは関係ない・・・そうありたいものです。
しかし、現実問題としては内戦が続くような国ではスポーツどころではないという1点を見ても、また、北京五輪が中国の悲願達成として行われている点においても、スポーツは政治情勢によって強く影響されています。

ジンバブエは先述のように混乱のさなかにあり、経済も崩壊している国です。
競泳種目のためには、まずもってプールという維持にも費用がかかる施設が必要です。
コベントリー選手は普段どうやって練習を行っているのだろうか?
外国で練習しているのだろうか?・・・という素朴な疑問を感じた次第です。

【暴力による白人排斥】
更に、よくわからないのが、ジンバブエ社会における白人の現在の地位です。
ジンバブエは、かつてはローデシアという国名で、白人が全ての実権を握るアパルトヘイト政策で悪名高い国でした。
その後、現在物議をかもしているムガベ大統領が中心となって現在のジンバブエとして再出発します。
当初は白人地主の権利を温存し、白人閣僚も受け入れる融和・共存の姿勢でスタート。
世界的(欧米的と言うべきでしょうか)にも高く評価されて、アフリカにおける黒人国家のモデルケースとも言われていました。

しかし、穏健な農地改革政策は破綻し、諸般の経緯でムガベ大統領は白人との対決姿勢に転じました。
そして、独立戦争を戦った黒人元兵士による白人農地襲撃を追認し、実力で強制収用する政策を実施しています。(自らの政策失敗を糊塗するために、敢えて人種対立を煽っているとも言われます。)
無計画な農園・企業の黒人化によって、生産ノウハウが失われ、生産は低下、激しいインフレーションに見舞われています。
(このあたりの話は、7月24日 “「ケニア方式」は実現できるか?” http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080724
など何回か取り上げてきたところです。)

白人農園襲撃、暴力による人種対立扇動は論外ですが、1%にも満たない白人が全国の6割の農地を支配するといった状況が独立後も続いてきたことをどのように評価するかは、考慮すべきことがいろいろあろうかと思います。

結果的に、上記のような暴力的な白人農園主への襲撃などで、約4600人いた白人農場主は400人足らずに減っているとも言われています。
白人人口全体も減少しています。
前置きが長くなってしまいましたが、そんな状況で白人のコベントリー選手がジンバブエ国内でどう評価されているのかが非常に興味深く思えたのです。
金メダルでもとると、ムガベ大統領からお褒めの言葉はあるのでしょうか?


(昨年アルジェリアで開催されたアフリカ大会でコベントリー選手を応援するジンバブエ応援団 やはり肌の色は関係ないようにも見えます。”より By One Del?
http://www.flickr.com/photos/land2romeo/811885653/

【MDC少数派も絡んで・・・】
さて、ジンバブエ国内の政治状況、大統領選挙後の混乱(第1回投票で敗北したムガベ大統領側が、決選投票に向けて激しい弾圧を行って対立候補の決選投票参加を不可能にし、ムガベ大統領だけの形式的信任投票の形で選挙に“勝利”したとしていること、及び、その状況を認めない野党勢力の動向)収束のための与野党間協議の件です。

ムガベ大統領と第1回投票で1位となった最大野党「民主変革運動(MDC)」のツァンギライ議長は、これまで断続的に協議を続けてきましたが、なかなかまとまりません。
南アフリカのムベキ大統領も、重い腰をあげて調停に動いています。

多くが想定している決着の形は「ケニア方式」です。
ジンバブエと同じように大統領選挙の不正疑惑が大勢の犠牲者を出す内紛状態となったケニアでは、新たに首相ポストを設けて、大統領と首相で権力を二分する形で政治的決着を図りました。

ジンバブエでは、当初ツァンギライ議長を副大統領に(すでに2名副大統領が存在しますので、実質的には第3副大統領となります。)という案もだされましたが、実権のない第3副大統領をツァンギライ議長側が拒否。
その後、ケニア方式で首相ポストが検討されてきましたが、新たな首相ポストの権限について合意が得られていませんでした。

そんな折、ムガベ大統領と野党・民主変革運動(MDC)内のムタンバラ氏が率いる1派閥との間で、連立政権に向けた合意が成立したことが報じられました。
この合意にはツァンギライ議長は含まれていないようです。
与野党間の協議にMDC分派のムタンバラ氏が参加していることは報じられていましたが・・・。

ツァンギライ議長はMDC内の主流派を率い、一方のムタンバラ氏は少数派を率いており、大統領選挙前の立候補段階では、両者で統一候補擁立が出来ず、MDCは候補を出せないのではないかとの情報がありました。
そうした情報から想像すると、両者の間には相当の確執がありそうです。

ムタンバラ氏は記者団に、与野党間協議は1つの問題を除いてすべての点で合意に至ったと述べたうえ、「ツァンギライ(議長)は自派で協議を行うための時間を要求した。彼は1つの問題に対し、3度合意し3度翻意した」と語っています。
一方、与野党間協議の仲介役を務めていた南アフリカ・ムベキ大統領は、「いかなる合意にも至っていないが、3者による合意が成立することに自信をもっている」と語っています。【8月14日 AFP】

【手が届くか?金メダル】
冒頭で紹介したコベントリー選手は大活躍ですが、今のところ金メダルにはあと1歩のところで届かないレースが続いています。
ツァンギライ議長も大統領選挙でムガベ大統領を追い詰めるところまではいきましたが、政権獲得は・・・どうでしょうか?
コベントリー選手は得意の200m背泳ぎで金を目指します。


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