孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  奇妙な話 自治政府の財政難とガザへの送還措置

2008-08-06 14:02:36 | 国際情勢

(今年3月、イスラエル軍がガザへ大規模侵攻を行った際の犠牲者に最後の別れを告げる家族 ここでは死は生活のすぐ隣にあるようです。 “flickr”より By 3arabawy - صَحـَـفي مِصـْـري
http://www.flickr.com/photos/elhamalawy/2330102513/in/set-72157604110414679/)

【自治政府 給料遅配も】
パレスチナ、特にアッバス議長のファタハ・パレスチナ自治政府については、昨年12月にパリで開かれた“パレスチナ支援会議”で、各国からパレスチナ自治政府の要請額(56億ドル)を上回る総額74億ドル(約8400億円)の拠出表明がありました。
日本も、医療状況改善に向けた人道支援や、日本政府が進める「平和と繁栄の回廊」構想に基づく農業支援などを中心に1.5億ドル(約170億円)の無償資金協力を高村外相が表明しました。
(12月18日 「パレスチナ支援会議  各国から要請額を上回る拠出表明、されど・・・」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071218

そんなこともありますので、少なくとも財政的にはなんとかなっているのかと思っていましたが、逆に自治政府は財政的に困窮しているとか。意外でした。

***パレスチナ:財政難 滞る支援、為替変動も拍車****
 アッバス議長率いるパレスチナ自治政府の財政難が深刻化し、再び職員給与の遅配が懸念される事態に陥っている。支援国が約束した資金援助を実行しないことに加え、現地通貨に対する米ドルの為替相場が著しく下落しているためだ。自治政府統治下のヨルダン川西岸に比べ、イスラム原理主義組織ハマス支配下のガザ地区では一定の「行政運営」が続けられており、議長側は「自治政府の弱体化を印象付けかねない」と危機感を強めている。
 国際社会は昨年12月の会合で、総額70億ドル(約7500億円)以上の自治政府支援を約束した。しかし、実際の拠出はごく一部にとどまり、財政悪化を誘発。自治政府筋は「原油高騰で潤っているはずのアラブ産油国でさえ約束を守らない」と不満を漏らした。
 さらに、当時1ドル=約4シェケル(約120円)だった現地通貨の相場が3・3シェケルを割り込み、苦境に拍車をかけている。
 一方、ロイター通信によると、ガザ制圧以来、同地を独自に運営してきた「ハマス政府」は、自派「職員」の給与を払い続けている。エジプトとの境界線を封鎖され、イスラエルからの物流を厳しく制限されながらも、イランやその他のイスラム諸国からの支援で「体力」を維持しているとみられる。【8月4日 毎日】
************

国際社会がこぞって支援を約束した自治政府が財政的に追い詰められ、国際的に孤立しているはずのガザ地区のハマスが体力を維持している・・・なんとも奇妙な構図です。
国際支援が往々にして実行されないという話はときどき聞きますが、国際的な約束事というのはそんないい加減なものなのでしょうか?
日本的な感覚では理解しがたいところです。

日本などは“国際公約”なんて言ったら、ときの内閣がその命運をかけても実行しないといけないもの・・・と言うように思われることが多いのですが。
もっとも、日本が表明した1.5億ドルがどうなったのかは知りません。
案外、日本の国際公約も相手によって対応が変わったりするかも・・・それはないですかね。

【イスラエル 人道的配慮で一時避難を許可】
パレスチナ関連の奇妙な話としては、先日のガザ地区からイスラエルへの“一時避難”の件もよくわかりませんでした。
ハマスのメンバー5人と少女1人が死亡した先月25日の爆弾事件について、ハマスはファタハの仕業だと非難してガザ地区でファタハ支持者の大量拘束。
反発したファタハも自らの影響下にあるヨルダン川西岸でハマス活動家数十人を拘束し、“逮捕合戦”に発展しました。

今月2日には親ファタハ有力部族への攻撃で9人が死亡、90人以上が負傷し、この部族の180人がイスラエル側に避難を求める事態へと発展。

「部族長を含む180人がイスラエルとの境界検問所に詰めかけ、イスラエル軍はけが人の手当てなど「人道的配慮」から一時的な避難を認めた。しかし、エジプトが仲介に入り、避難した部族の一部は3日、ガザ地区に戻り始めており、ハマスは戻った数十人を逮捕した。ハマス報道官は、この部族がイスラエルに逃げようとしたのは事件に関与している証拠だと非難した。」【8月4日 産経】

「アッバス議長、サラム・ファイヤドパレスチナ自治政府首相、およびエジプト政府からの要請を考慮し、エフド・バラク国防相がこの異例の措置に踏み切ったと述べた。」【8月3日 AFP】

「ガザ境界の封鎖を続けるイスラエルは、アッバス議長やエジプトの要請に基づき、180人を受け入れたという。しかし、議長側は方針を一転し、ガザに送り返すよう再要請。これまでに30人が送還され、直ちにハマス側に拘束された模様だ。今回、ガザからイスラエル領に逃げ込んだ180人は、昨年6月のハマスのガザ制圧を「阻止できなかった」と議長側から非難されているグループで、ファタハ内のほころびも改めて露呈した形だ。」【8月3日 毎日】

アッバス議長サイドの要請があり、イスラエルの人道的配慮で受け入れた・・・ということのようですが、その後のガザへの送還の経緯がよくわかりません。
“昨年6月のハマスのガザ制圧を「阻止できなかった」と議長側から非難されているグループ”とも報じられていますが、事情が分かってアッバス議長が考えを変えたということなのでしょうか?
それにしても、ハマスに拘束されることが分かっている状況で送還するというのは・・・?
それとも、自主的な帰還でしょうか?

【裸、目隠し、手錠】
そのあたりはわかりませんが、印象的だったのはAFPの記事に掲載された検問所を超える際の写真です。
転載が許可されていませんので、下記のAFPの記事をご覧ください。
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2425868/3181923

検問所を超えるパレスチナ人たちは、パンツ1枚の裸で目隠しをされ、更に後ろ手に手錠をされたかたちでイスラエル兵に誘導されています。
負傷者の搬送はともかく、この様子は“人道的配慮”とはなかなか言い難いものです。
もちろん、戦闘状態にある地域ですから、通常の常識は通用しない訳で、不足の事態を最大限に警戒する必要があるのでしょう。

しかし、こういう扱いを受けると、通常、人間はその屈辱を一生忘れず何らかの形で復讐を誓うものではないでしょうか。それはイスラエルにとってもいい話ではないと思うのですが。
まあ、ハマスの追求を逃れたい一心で、そんなことは気にかけていないのかもしれませんが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする