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日航123便墜落 遺物は真相を語る

2020-03-19 | 気になる本

青山透子(2018)『日航123便墜落 遺物は真相を語る』河出書房新社
 もう30数年の前の墜落事故事件である。坂本九ちゃんなど500人を超える死者を出した。事故原因は隔壁の破損などとされてきたが、真相は闇の中である。なぜあの時間に飛行機はあのルートか?墜落時間が夕方山中といえども、すぐに位置が特定できなかったのはなぜか?などなど素人ながら疑問が残っていた。
 海外旅行の好きな私は飛行機の安全を願っている。不当な日航の解雇も知っている。著者は元日航客室乗務員である。事故調査委員会の報告に納得のいかない疑問が多く、東大大学院で博士号を取っている。真実を調べようとした動機はこの本では明らかでないが、科学的な調査、研究は凄いとしか言いようがない。私も社会人で大学院に行って、論文の書き方を学んだ。修士論文ですら大変であるが、博士論文は徹底的な調査検証で、資料を集め、真実を見極め、論証しなくてはならない。この本は、疑問を仮設として、調査委員会報告と別の説を科学的に提起している。小説ではなく、学術論文でもなく、読みづらいかと思っていたが、引き込まれていった。早速他の著書も予約した。いみじくも昨日は、森友事件で文書の偽装をやらされ、近畿財務局の職員が自殺に追い込まれ、妻が真相究明のために裁判に訴えた。森友以降、加計学園、首相自らの桜疑惑など、国会での虚偽答弁、官僚の文書隠蔽、改竄が続いてきた。時間が過ぎても真実が隠され検証されず、悪いことをした人が出世する。さらに、検事総長まで内閣の都合の良い人事に変えようとしている。日銀、NHK、内閣人事局、最後の司法まで中立が損なわれては、三権分立と民主主義が壊れてしまう。
本書の提起する疑問、報告書と違った見解の論点は、①事故の一番の原因は隔壁の破損でなく、自衛隊機が追撃したのではないか?②ボーイスレコーダーはなぜ公開されていないのか?③事故機をすぐに発見できなかったのはなぜか?④遺体の損傷が異常な焼け方、「2度焼け」しているのはなぜか?などである。前号の証言記録と違って、今回の内容は残骸の化学的分析を行っている。遺族も真実を求めるが、亡くなった人は戻ってこない。生活もあり、干渉もあるだろう。いずれにしても、著者の真実を求め科学的な論証を探求する熱意に感動し敬意を表する。
以下、内容の気になったポイントである。
 なぜ、ファントム2機が墜落前の日航機を、追尾していた事実を自衛隊は隠すのか。機体腹部の赤い物体は何か。上野村住民が真っ赤な飛行物体を目撃。墜落場所が不明でも、その日の夜のうちに自衛隊車両が上野村に終結したのはなぜか。情報の不透明さは誤った判断を生じさせ、偽りの土台の上に立つ決断は、未来をゆがめる。あっという間に無知な愚衆が多数となり、相手国を思う想像力と罪悪感が欠落し、戦争へと向かったのは歴史が証明している。
 国産の巡行ミサイルの洋上飛行実験中に突発的事故が起きて、日航123便の飛行中、伊豆稲取沖で垂直尾翼周辺に異変を発生させた。即座にファントム2機が追尾しその状況を確認した。自衛隊はそのミスを隠すために一晩中墜落場所不明としていた、と考えると筋が通る。しかし、決定的証拠を持つ側が政府であり、実施していたのが防衛庁であれば、「日報隠し事件」ように表にでないだろう。
 「事実を伝えることがノンフィクションである限り、死者への尊厳を持って読者にわかりやすく、実感してもらうことで真相究明につながるのであれば、それは表現の自由の範囲であり、公序良俗に反することなく、学術的な観点からも必要なことである。」2015年民間テレビ局が日航機の残骸を捜索し、発見して未だに沈んでいる事実が明らかになった。
 組織全体が隠蔽を行わざるを得なかった場合、過度な「恐れ」と相互監視、自己保身によってその罪をかぶり続けなければならない関係者が増えていく。トップに立つ人間にとって、公表するのに不都合な事実の「申し送り事項」という「隠蔽」は、次第に大きな圧力となり、次々と罪人を生み続ける。自分も知らぬ間に加害者となり、自殺者も出てくる。分厚い未公開資料はどこへ。
 火災現場での違和感。「故意に不明として、一晩中山頂で何か燃やしていたのではないか」。もしも2度目の火災が何者かの意図によって発生したのであれば、制服が不燃布ではない以上、なんらかの心理的な作用によるものではないだろうか。ミッキーマウスも燃えていなかった。機長の制服がないことにもつながる。「気取った理論など気にするな。誰かがオフィスで考えた理論を信じてよいのか、それよりも実際に見たものを信じるべきだ」(ジェイコブス)。
 化学分析の結果、航空機材料に含まれないベンゼンと硫黄値が高いことである。消防団の証言は「ガソリンとタールの臭い」に合致する。ジェット燃料でなく、ベンゼンが含まれる大量のガソリンが用いられ、ジュラルミンが融解してドロドロになって固まった。武器使用の可能性を高めた。事故調査報告書が出た時から、その論拠となる生データを開示せよ、と関係者が要請してきた。運輸安全委員会も無視してきた事実は思い。
 横田空域の危険性。日米合同委員会組織は13名で、日本側は1名少ない。国民の方を向いているのかあきれるほど米軍のいいなりとしか思えない。世界情勢を鑑みるに、隣国の脅威を煽る必要性もなく、新たな「敵国」を作り出すのでもなく、安全で争いのない平和な世の中は誰もが願っている。

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