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「人新世の資本論」を読む④

2021-05-03 | 気になる本

P298 マルクスの資本論は「脱成長コミュニズム」という立場から読み直すことが必要である。資本論の真の構想5つ。「使用価値経済への転換」、「労働時間の短縮」、「画一的な分業の廃止」、「生産過程の民主化」、そして「エッセンシャル・ワークの重視」である。

P300 脱成長コミュニズムの柱①―使用価値経済への転換。使用価値に重きを置いた経済に転換して、大量生産・大量消費から脱却する。使用価値へを無視した生産は、気候危機の時代には致命的となる。食料、水、交通機関への普遍的アクセスの保障などやるべきことはたくさんある。(環境。憲法改悪、オリンピックよりコロナの対策である。)

労働時間の短縮―労働時間を削減して、生活の質を向上させる。(原則夜勤の禁止)

③画一的な分業の廃止―分業を廃止して、労働の創造性を働かせる。労働を魅力的なものにする。「精神労働と肉体労働の対立」や「都市と農村の対立」の克服が、将来社会の課題。

④生産過程の民主化-「働き方改革」を実行するには、労働者が生産における意思決定権を握る必要がある。ピケティも要求している「社会的所有」である。(トップダウン、文書改ざんの問題。労働組合の民主的強化、労働者の政策・経営能力の向上が必要。)

エッセンシャル・ワークの重視―ケア階級の叛逆。無責任な保育経営。(コロナ禍で軽視されている。保育民営化で労働条件が悪化し、保母を目指す人が減る。)

P331酷い生活状態に耐えかねた若者が「M15運動」を行い、「バルセロナ・イン・コモン」の地域密着型政党に継続して運動。2015年地方選挙で、この政党の中心人物が市長に就任した。市庁舎は市民に開放された。

P342先進国の食卓を彩るための高価な輸出品が生産され、実際の作業を行っている農民が生きていくのに必要な、廉価な食料は生産されない。加えて、多国籍企業の特許によって、種子や肥料、農薬をめぐる権利や情報が独占されていることも農家の経済的負担を過酷にしている。

P352左派が現在、抵抗しようとしている新自由主義、とりわけ反緊縮は、より多くの公共投資や再分配をおこなうよう、国家に要求すれば良いのか。反緊縮を訴えるだけでは、自然からの収奪は止まらない。経済を回すだけでは人新世の危機は乗り越えられない。

おわりに

マルクスで脱成長は正気か?

ワーカーズ・コープでも、有機農業でも、自治体議員を目指すのもよい。労働時間の短縮や生産の民主化は、労働組合しかない。そのうえで、気候異常事態に向けての署名、富裕層への負担を求める運動も必要である。まず3.5%が、今この瞬間から動き出すことが鍵である。

参考文献(気になったもの)

・THE TRUE COST映画

・森さやか「コロナがもたらす人道危機」世界20年6月号

・ナオミ・クライン「これがすべてを変える・気候変動VS資本主義」

・佐伯啓思「経済成長主義への決別」

・宇沢弘文「社会的共通資本」

・水野和夫「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済」

・今野晴貴「ストライキ2・0」

コメント

技術の進歩でも生活は悪化する。そのからくりが理解できた。難しい資本論の最新研究を、今起きている社会現象の問題で説明しているので、わかりやすい。資本主義社会の限界は貧困と格差の拡大、気候危機の2つに象徴されている。デトロイトとニューヨークの事例に興味が湧く。特にデトロイトは豊田市と姉妹都市であり、財政破綻がどうなったか気になっていた。矢作弘の文献では理解できなかった。

 成長か脱成長か、反緊縮か、MMTとSDGSの考え方も気になっていた点である。走り読みしたが、参考になる点が多く、この本で学習会を企画しようかな!

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