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TPP亡国論(1)

2012-01-06 | 気になる本

 日本の当面の重要な政治情勢は4つです。1、東北復興と原発0、2、TPP、3、消費税、4、普天間移設だと思います。TPPの本を数冊読みましたが、根本から本質を解説し主張する「TPP亡国論」が、最も筋道の通ったわかりやすい本でした。
 中野剛志(2011)『TPP亡国論』集英社新書
著者は元経済産業省の官僚で、自由な意見を求めてかどうか京大の助教になっています。グローバル化の中で、一見保護貿易のような考えに見えますが、論理展開は国益を守る正論だと思います。以下ポイントを追っていきます。
第1章TPPの謎を解く
 TPPはそもそも2006年小さな4か国でスタートしました。WTO(世界貿易機関)は世界の150カ国が参加し、自由貿易の推進を目指す国際機関です。大きすぎて交渉が難航します。FTA(自由貿易協定)は、二国間あるいは複数国間で関税を撤廃する協定です。EPA(経済連携協定)は相手国と柔軟な交渉によってルールを決められます。(東南アジアからの看護師が来るのはこれによります。)TPPはFTAの1種です。TPPは関税の撤廃の例外を認めないので、特定の分野(コメなど)除外した参加が認められません。ハードルの高いTPPになぜ短期間に飛びつくのか。中国も韓国も参加していません。バスに乗り遅れても困ることはありません。日本の成長戦略はアジアの成長を取り込むとしていますが、日本が輸出できる市場はアメリカだけです。非関税障壁の保険制度や医療制度、食に関する安全規制、環境規制、労働規制まで、日本は因縁をつけられ、訴えられます。円高、デフレの日本が国内投資する環境もありません。世界経済危機を経験し、国際的な資本移動(投機)を規制するのではなく、それを促進しようとはあべこべです。アメリカ主導の下、全交渉参加国が、日本に不利なルールを支持するようになります。韓国はアメリカとFTAを結んでいます。尖閣問題、北方領土問題で菅政権は批判にさらされ、APECでポイントを上げようとしました。参加の動機は何か。
第2章世界の構造変化を読む
第1期グローバリゼーションは、80年代から98年のアジア通貨危機で、アメリカによる金融自由化、規制緩和によるものでした。それから2008年のリーマンショックまでが第2期グローバリゼーションです。アジア諸国の貿易黒字は、特にアメリカに還流しハイリスク・ハイリターンを求め、米の住宅バブルが発生しました。世界経済を正常化し、安定化させるには、金融政策だけではダメなのです。実態経済を動かす、すなわち需要を拡大しなければならないのです。(この当たり前の理論が、民主党政府、財界はわかっていないのでしょう)アメリカの成長戦略は輸出の増大と雇用の増大で、日本やドイツの貿易黒字国と中国の為替政策批判です。日本が加わった場合、TPPのGDPは日米で9割以上となります。実質的には日米FTAです。アメリカは関税を下げてもドル安に誘導されて、日本の恩恵は何もありません。日本が仮に輸出競争力を高めても、円高で減殺されます。
 第3章貿易の意味を問い直す。
 資源のない日本は輸出で外貨を稼ぎ、貿易立国で経済を反映するという考えは年配の人に多いのです。それは固定相場制までの話で、変動相場の現代では通用しません。企業部門の貯蓄(内部留保)が増えているのは、デフレで資金需要が乏しい中で、金融緩和により資金が過剰に供給されているからです。デフレは経済の病気で、金融緩和だけではダメで公共投資が必要としています。貿易自由化、TPPはデフレを悪化させるとしています。(どういう公共投資をするのか、財政をどうするか疑問が残ります。)写真は毛越寺
 <特記>
・トヨタ財団のJOINT8巻頭で、東大の田中明彦氏はTPP参加と安保強化を述べています。
・中国で有名な日本人、加藤嘉一さんのブログなどが興味深い。21世紀はネットが社会を変えるであろう。
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2 コメント

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内需を大事に (ノブ)
2012-01-08 22:01:09
 円高で、日本の輸出競争力が減殺される、という指摘は確かにそうだね。
 日本経済はもっと内需を大事にした方がいい。
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賃上げ、時短が景気回復 (amenity)
2012-01-09 23:22:28
大企業だけが儲けてもトリクルダウンはありません。国民の所得も減っています。ワークシェアリングと時間短縮で、ディセントワークや余暇活動で景気回復に繋がります。
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