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川崎哲(2022)『僕の仕事は平和、・・』旬報社

2024-05-13 | 気になる本

川崎哲(2022)『僕の仕事は、世界を平和にすること。』旬報社

 21世紀になって、ロシアのウクライナ侵略、イスラエルのガザ攻撃など戦争が止まりません。ロシアは核兵器の使用もありうる、と威嚇しています。アメリカと日本は「台湾有事」、と中国を「敵」として煽り、沖縄などミサイル配置を進めています。被爆国日本で核兵器の廃絶を訴えるべきなのに、核の傘や憲法9条すら変えようとしています。どうやって戦争のない平和を築くのか、著者は理想を現実に一歩ずつ地道に楽しく活動しています。世界は核兵器禁止条約を批准する国が増えています。日本はせめて批准国会議にオブザーバー参加すべきです。この本は読みやすく、若い人にお勧めです。アメリカでは大学でイスラエルのジェノサイドに、抗議活動が続いています。豊田市に原水爆禁止の国民平和行進が6月2日16時に、豊田市駅前に参集します。以下、本の気になったメモ書きです。(  )内は私のコメントです。

 ピースボードが力を入れているのは、第一に持続可能なSDGsの普及、第二に武力紛争の予防、第三に核兵器の廃絶です。武力紛争の予防は、戦争が起きる前に戦争の根っこを断ち切ろう、という考え方です。多くの国では、よその国が戦争を仕掛けてくる可能性があるから、こちらも負けずに戦えるようにしておこう、と言って軍備や兵力を持ち日日これを強めています。(武力で平和は守れない)

 日本国憲法は平和主義です。日本が戦争を起こしたことを反省し、第九条で戦争放棄し、軍隊を持たないことを決めています。日本には自衛隊があって、それが事実上の軍隊です。自衛隊は自衛のためと言いながら、実際には戦争の準備をしているという、憲法の矛盾が長い間議論をされてきました。憲法の定めと現実がかなり異なっているので、憲法を変えてしまうべきだという意見があります。

 第三世界とは、いわゆる「開発途上国」のことです。冷戦時代世界は、アメリカ側とソ連側の二つに分かれていましたが、そのどちらでもない意味で使われた言葉です。今日では「グローバルサウス」と呼ばれることもあります。スーザン・ジョージの「なぜ世界の半分が飢えるのか」という本を、みんなで読みました。南北問題で貧しいのは、怠けているとかではなく、北の「先進国」や多国籍企業が自分たちの都合の良いように、世界のルールを作っているからだ、と言うことを学びました。

 戦後の教育現場で、先生たちは「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンを掲げて、民主主義や人権、平和を教えるようになりました。今は戦争体験者が社会の第一線から退くにつれ、国家が怖いものであるという感覚が薄れてきているようです。国家は自分たちを守ってくれるものと思っている人が増えてきているようです。(ミャンマーは軍が国民に発砲している。ロシアは反政府勢力を弾圧している。戦前日本は、治安維持法で戦争反対者など弾圧した。沖縄戦の教訓(きょうくん)として「軍隊は住民を守らなかった」と語りつがれている。戦後の満州では軍隊が引き揚げ、開拓団は「棄民」(満蒙平和祈念館「手記」)となった。今の日本は戦争法・安保法制で、アメリカの指揮下で戦争ができる国に準備が進む。いわゆる「新しい戦前」である。)

 50年以上生きてきて、国が言う「敵」というものがコロコロ変わります。冷戦時代にはソ連や中国など「共産主義」が敵だとされてきました。その後、「テロリスト」があるいは「イラクやイラン」などならず者国家が敵だとされました。最近では「北朝鮮だとか中国」だと言われています。変わらないのは、政府が莫大な予算を軍備につぎ込み、それで軍事産業が金儲けをし続けていることです。

 大量破壊、大量殺人というのは20世紀の発想です。核兵器はいずれなくなります。僕たちがもうちょっと運動を頑張ればの話です。今世界で加速しているのは、ドローンや人工知能など最新技術を駆使して、精密にターゲットを定める殺人ロボットの開発です。機械が人間を殺す世界になる、ということです。そして、その機械をつくりプログラミングをするのは人間です。ゲーム感覚で戦争が進められてしまいます。エラーを起こせば全く関係のない人たちが殺されます。今日の世界では戦争と平和をめぐる問題がこのように複雑化しています。暴力や戦争の動機になる問題は増えています。国内で人権が軽んじられ、民主主義が弱まる時、その国は戦争に近づきます。

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神野直彦「財政と民主主義」を読んで、その②

2024-05-13 | 気になる本

神野直彦(2024)『財政と民主主義』岩波新書 ②

第3章 人間主体の経済システム

 財政は、社会システム、政治システム、経済システムという3っつのサブ・システムを、トータルシステムとして社会に織り上げる結節点である。福祉分野は社会システムでの人間の生活を支える社会環境を改善する。福祉と共に雇用創出分野として位置づけられているのが、環境である。それは社会環境と自然環境の破壊による根源的危機に対処するため、だと言ってもよい。コロナのパンデミックの歴史的教訓に学べば、福祉サービスも環境サービスも量とともに質の確保が求められる。質の確保には当然労働条件の改善が要請される。

 市場万能主義が生み出した弊害の解決を、社会の構成員の共同意思決定つまり民主主義に委ねるという発想に結びついていないことをも意味する。政治システムを実質的に動かす「官」と、経済システムを実質に動かす「民」との連携に、国家の運営を委ねるというのであれば、それは重症主義政策である。

工業社会の社会的インフラストラクチャーは、機械設備の延長線上に位置づけられるエネルギー網や交通網(原発、幹線道路)であった。ところが知識社会の社会的インフラストラクチャーは人間の神経系統の能力の延長線上に位置づけられる知識資本の蓄積を支援することとなる。知識資本は、個人的な知的能力と社会的関係資本という二つの要素から構成されている。従って、この二つの要素から構成される知識資本の蓄積を支援することこそ、知識社会の社会的インフラストラクチャーということになる。

新しい資本主義」のビジョンでも新自由主義を批判しつつ、「人への投資」を打ち出している。しかし、人間を成長させる知識社会の社会的インフラストラクチャー整備する視点から、教育体系を整備するという発想は乏しい

(豊田市の予算編成方針では、普通建設事業のハードに300億円以上とし、幹線道路など産業基盤の交通や土建を重視している。恵まれた財政は福祉、教育のソフト重視に転換すべきである。人口減少で出生数の減、若者の市外流出の中、奨学金助成や住宅の補助、何よりも非正規の改善が必要である。トヨタは高収益をあげているが、トリクルダウンはほとんどない。農林業や中小企業振興の地域循環型経済への転換が求められる。)

自己責任には二つの方法がある。一つは家族や地域社会の相互扶助や共同作業を活性化させることによって、対人社会サービスを充足する方法である。それは地域住民が無償労働によって、対人社会サービスを担う方法である。もう一つの方法は対人社会サービスの分配を市場に委ねることである。そうすると対人社会サービスが所得に応じて分配されてしまうので、貧困者には分配されない事態に陥ってしまう。

4章 人間の未来に向けた税・社会保障の転換

日本の社会保障給付は欧米より低い。その中身は、老齢年金と医療の二つの分野に集中している。「全世代型社会保障とはすべての世代を支援の対象とし、またすべての世代がその能力に応じて支え合う全世代型の社会保障」と唱えられている。高齢者中心の給付として捉えられていて、現役世代に頼った負担となっている、という認識である。また、子ども・子育て支援として年少世代への社会保障を充実してくことが唱えられている。それは子ども達を扶養し、教育して、人間を人間として育てていくことが、社会の共同責任だからという理念に基づいていない。あくまで少子化対策として位置づけ人間を、労働力や兵力という手段だと見なしていると考えられる。

所得税の負担構造上の最大の問題点は、所得税はすべての所得を総合合算して累進税率を適用することになっているのに、租税特別措置法によって累進税率の対象から、利子、配当などの金融所得が外されてしまっている。「1億円の壁」として問題になっているように、日本の所得税の負担構造は所得1億円をピークとして、それまでは累進的負担になっているが、そのピークを越えると逆進的になっていく。社会保障負担の高まりとともに労働所得への負担は高まっていくのに対して、1980年代から始まる法人税の引き下げ競争に見られるように、資本所得への負担は低くなっていく。格差と貧困を国際的に拡散させている重要な要素になっている。

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政府の少子化対策では、2024年度から5年間に3.6兆円の財源を確保する方針だ。財源の内訳は、支援金制度の創設で1兆円程度、社会保障の歳出改革で1.1兆円程度、既定予算の活用で1.5兆円程度とされる。このうち、「支援金制度」では、政府は医療保険料に上乗せする形で財源を確保する。当初「月500円程度」が所得によって違い、1000円程度になっている。アメリカ言いなりの武器爆買いをする防衛費は、5年間で43兆円である。社会保障の枠内でなく、裏金や政党助成金、原発、リニア、万博、DXなど必要性、優先順位など、国民的議論や選挙での投票に足を運ぶべきであろう。

豊田市では2月の市長選挙をきっかけに、遅まきながら18歳通院医療費無料化、学校給食無料化、学校体育館に空調、(コミュニティバスの高齢者無料化、)補聴器補助が新年度から予算化された。本格的少子化・子育て対策には、非正規の改善、奨学金制度、住宅家賃補助、公的・2次救急医療、保健所移設など次の課題もある。

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