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「なぜ日本だけが成長できないのか」

2020-02-17 | 気になる本

森永卓郎(2018)『なぜ日本だけが成長できないのか』角川新書
 株価だけがつり上げられ、「有効求人倍率も上がった」、と一面的な数字を安倍内閣が喧伝しマスコミが垂れ流す。景気が良くなっている実感はないのに、何となく経済成長していると思わされている。大企業は成長し内部留保は増えているが、国家財政は借金まみれ、消費税は8%になり、10%になり軽減税率、ポイント還元などで騙されているのか諦めている。成長が止まったのは2001年小泉政権からとしている。対米全面屈従の下で日本の利益は失われている。その根拠を説明している。日航の墜落も真相も紹介している点は興味深い。さらに、国家財政は借金があっても、売れる資産があるから大丈夫とし、根拠を具体的にあげている。この視点は山家氏と同じだが疑義がある。以下、気になった要旨を抜き書きする。(  )書きは著者でなく筆者。
 小泉「構造改革」が日本経済沈没の最大の要因だとしている。不良債権処理で、日本の資本が2束3文で外資に食われた。日本の製造業の海外生産比率は、1985年3%から2016年24%に増えた。日本経済の空洞化は、①86年以降海外生産比率をあげた。①90年バブル崩壊後、日本企業の株式を海外資本が買いあさった。③不良債権処理の方法。日本長期信用金庫の破綻処理に税金が3兆7千億円つぎこまれ、ハゲタカ・ファンドに10億円で売却された。
 日本企業は米国への生贄。三洋の家電部門は中国企業に売却され、シャープは台湾企業に売却された。原子力事業で大きな損失を抱えた東芝は、東芝の虎の子の東芝メモリを米国ファンド系「日米韓連合」に売却した。日本の企業資産を2束3文で売り渡し、それを買い戻す。そのことが、日本経済転落の最大の原因だった。(なぜそうなったのか?そうさせられてのか?)
 アベノミクスで景気は良くなった。しかし、国民に実感はない。労働分配率は下げられ、企業の内部留保(利益剰余金)は、2018年3月427兆円と莫大に膨らんだ。この内部留保の一部を還元するだけで、労働者の所得は増え、国民は景気回復の実感が得られるだろう。(19・12連合は春季闘争方針で、格差是正に向けて「分配構造の転換につながり得る賃上げ」を目指す。神津会長は「(企業の)内部留保の積み上がり」にも言及した。)役員報酬がアメリカ型に変わり、業績と連動する体系になった。成長の成果を従業員に分配せず、利益を拡大する。実質賃金は4%下がって、格差は拡大する。多様な「働き改革」で、高度プロフェショナルの残業代などがなくなる。最初は1075万円以上だが、労働者派遣法のようにやがては省令で改悪(また騙されるのか。政権が変われば別だが。)されるだろう。
 外国人労働者の拡大は、労働者全体の労働単価を引き下げる。また、外国人のコストを行政が負担(失業対策、住宅、教育など)させられる。トヨタやホンダなど、期間従業員など5年間働けば正社員にしなければならないのを、6か月の空白期間を設けリセットするように法律の抜け道を「利用」するようにした。(世帯形成期の転出、定職で定住を。豊田市の企業立地奨励条例で助成の対象は正社員とすべきである)。かって日本の大企業は、経営が悪化し、他に手がなくなった時に、リストラに手を染めた。ところが、もはやどんなに儲かっていても、会社が従業員をリストラする時代になった。
 モリカケ問題で安倍内閣の支持率は急落したが、その時北朝鮮がロケットを打ち出した。「国難突破」で解散総選挙を行い、与党が2/3を確保した。(その次は消費税増税延期で、16年参議院選挙に与党が圧勝した。しかし、野党共闘により19年参院選挙で2/3を割り、これまで憲法改悪案は発議されていない。安倍内閣支持率は、桜を観る会の買収疑惑、IR汚職、そして新型ウイルスの後手後手の対策で、支持と不支持が逆転した。)
 日本の財政は健全である。「国の財務書類」で連結ベースでは1400兆円の債務だが、バランスシートでは960兆円の資産を保有している。純債務は450兆円で、GDP540兆円の83%である。100兆円の米国債を保有している。不動産もある。(ただし、日銀が国債を能力以上に持っている不安。株価つり上げの操作など、先行き不透明である。今年のオリンピック後にはバブルは爆ぜるのでは?)日銀の発行する国債は返済や利払いが不要の「通貨発行益」といわれ、これが450兆円で無借金経営(?)といえる。日銀が2%物価上昇目標のデフレ脱却はできていない。あと1000兆円の国債は大丈夫である。太平洋戦争の戦費は、GDPの9倍であった。(ここは最大の論点で同意できかねる。)安倍政権は消費税を上げようとしなかった点は評価できる。(5から8へ、そして10%に。事実と異なるのでは?次は「消費税は下げられる」を読んでみよう。)
 日本の防衛費はGDPの1%というが予算の8%と、負担が軽いわけではない。私は、日本がアメリカに守って貰っているのではなく、いまだに米国の占領に近い状態にあるのだと考える。日米地位協定しかり。戦後72年、そろそろアメリカから独立してもよいのではないか。
 トランプ政権は日本の農業を壊滅させようとしている。農産物自由化の対象に米も含まれている。日米交渉は農産物の自由化はすすめるが、自動車の関税撤廃は30年先でそれも凍結、何が「ウインウイン」か?安全でおいしい農産物を食べるのは富裕層だけだ。(安倍、麻生の会食をみればわかる)庶民は価格の安い輸入品を食べざるを得ない。ただちに健康に被害はない。長期間食べ続けたときに、健康障害が起きないと言う保障はない。
 日航機墜落の真相は?青山透子「日航123便墜落の新事実」を紹介している。事故の翌年に「プラザ合意」。ボーイングが中型機のシェアをしめている。遺族が事故原因の再調査を求めても、日航は調査しない。

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