半田 滋(2018)『「北朝鮮の脅威」のカラクリ』岩波書店
19年参議院選挙までは北朝鮮のミサイル発射が良く報道され、「Jアラート」までできた。選挙が終わり「飛翔体」となり、昨今は徴用工に端を発した韓国パッシングである。10月から消費税増税、関東の台風被害よりも、安倍内閣改造がマスコミを意図的にも賑わしている。
さて、北朝鮮のミサイルは危険か?アメリカの核の傘(やぶれ傘)は安全か?米軍は日本を守り安上がりか?など、個人的に疑問がある。この本は薄いけど、実情を理解するのに役立った。核兵器禁止、戦争反対を訴えるだけでなく、軍拡を進めるアベ自公政権に、冷静に論理的に平和への展望を語る説得力を持つ書であると感じた。以下、メモ書きである。( )内は筆者。
はじめにでー無意味な「危機対応」で、17.9.15突然Jアラートに切り替わった。「ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。建物の中、又は地下室に避難してください」、と文字が表示され、アナウンサーが文字を読み上げた。首相は「発射直後からミサイルの動きを完全に把握していた」と断言したが、上空の北海道だけでなく、長野までの12県に発信したのはなぜか。国民に危機意識を共有する狙いがあった。「自衛隊の破壊措置」がなかったのは、「火星12」は最高高度750Kmで、イージス護衛艦に搭載されていた艦対空迎撃ミサイル「SM3」は500Kmで届かない。「上空」といっても領空をはるか超える宇宙空間である。
朝鮮半島が緊張を高める中、93年8月、自民党政権が崩れ、細川内閣が誕生した。94年、日米首脳会談は決裂した。クリントンは朝鮮有事で「日本はどこまで協力できるのか」と迫り、細川氏は「現行法のもとでは何もできない」と答えたとされる。(それがアベ首相で、秘密保護法、安保法制、共謀罪法など戦争法制)日米制服組の検討会で、日本は「自衛隊の支援は困難」との態度であった。94年在日米軍司令部から「統合幕僚会議」に米軍住宅の庭の草刈りまで、対米支援要求が1059項目突きつけられた。96年クリントンと橋本の共同宣言で、日本および極東の範囲が、アジア・太平洋地域に拡大した。97年日米防衛ガイドラインが改定され、日本周辺で行う米軍の戦争を自衛隊が支援する枠組みがつくられた。9年ガイドラインを法律に落とし込んだ周辺事態法は、地方公共団体や民間も含め支援が可能になった。
百発百中で弾道ミサイルを迎撃するのは不可能である。日本ほどMDを本格的に導入した国は世界中どこにもない。韓国に配備した「THARD」は在韓米銀が配備した。日本上空を通過するミサイルに落下の危険があるなら、その危険性はどの国のミサイルであれ、ロケットであれ、質的に変わるはずがない。ところが、日本政府にはその常識が通用しない。
核兵器の全廃と根絶を目的とした核兵器禁止条約が、2017年国連本部の条約交渉会議で採択された。原爆投下されて72年目の夏、「ヒバクシャにもたらされた苦\\」との一節が前文に入ったにもかかわらず、日本政府は会議をボイコットした。17年のノーベル平和賞は、国際NGO[ICAN]に贈らられた。サーロー節子さんは、「兵器は必要悪ではなく、絶対悪なのです」と言い切った。「核には核を」との論理を辛抱する限り、核兵器は世界から消えることはない。自らは地球を何回も壊滅できるほどの核兵器を確保しながら、北朝鮮の核保有は問題視する。そんな一方的な在り方に北朝鮮は強く反発している。核兵器そのものを根絶する国際社会の取り組みを無視して北朝鮮に核兵器を迫る手法を迫るのは容易ではない。
北朝鮮の核保有は、米国の攻撃を避ける強力な抑止力と考えていることが明らかとなった。朝鮮戦争は53年に休戦にあったが、終戦ではない。この間、米国は直接の脅威のないイラクに先制攻撃し、リビアやシリアの体制崩壊を後押しする形で空爆に踏み切っている。原発は攻撃されない?原発にミサイルが直撃した場合の被害を聞かれたアベ首相は、「様々な想定がありうることから、特定の量的な被害は期していない」と答弁した。想定がないことが被害のないことではない。「原発安全神話」のもと、もっとも深刻な「レベル7」の事故が起きた。米政府は米軍の家族約7千人を国外へ退去させた。
戦争ともなれば、米国、韓国、日本が直接、人的・物的被害を受けるのと同様に中国、ロシアも多大な影響を受けるのである。
ティラーソン氏は17年12月、「前提条件無しで北朝鮮との最初の対話をする用意がある」と述べたが、ホワイトハウスが否定した。(しかし、トランプは金委員長と会談した。19.9強硬派のボラトンを解任した。近いうちに電撃会談があるのだろうか?それにしても、アベ首相は「無条件で対話する」と言っていたが何の動きもない。そればかりか、徴用工問題など歴史を修正しようとしている。)