豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

限界のタワーマンション

2019-09-06 | 気になる本

榊 淳司(2019)『限界のタワーマンション』集英社新書

 首都圏はじめ一部地方都市の都心でも、高層マンションの建設が続いている。固定資産税も高層のほうが高いという傾斜方式に変えた。この本は、狭い敷地に高層建築のタワーマンションの問題点を指摘したものである。人口と所得の減少する中、住宅事情も戸建てから、駅周辺の利便性のよいマンションに変わりつつある。誰もが利便性が良く、公園、学校、店舗、病院、図書館がある良い住環境に住みたいが、資金力が問題である。私も学会で高層マンションの問題を日照、景観の視点で発表したことがある。会場から、他の問題は何か質問されたことがあった。この本では維持管理費、防災、手抜き工事、子どもの健康なども書いてあり納得である。以下本の抜き書きである。( )内は筆者。

 イギリスでは高層住宅に住むのは低所得者である。日本ではニューカマーである。タワマン銀座・武蔵小杉では通勤で駅が混雑。タワマンが増えれば世帯数が増加し、保育園、学校への応募が増える。(豊田市の高層マンションの建設数、学校などとの調整はどうか?)ビル風や公園が少ないという問題もある。自治体も人口の増加を是とし、助成するところもある。コントロールする自治体は少ない。

 タワマンの地主も住戸と交換できるが、それまで所有していた土地や家屋は失い、維持管理費や修繕費がかかる。東京では日照時間が確保されるマンションは少ない。複数のタワマンで複合日影の問題も指摘されている。

 建築基準法の規制緩和でタワマンは可能になった。容積率の規制緩和で、同じ敷地でも戸数が多く建てられ、住戸の価格は安くなる。郊外や地方は空き家が増え、タワマンに集中する。日本の住宅政策と核家族化が影響する。目先の利益に惑わされて、タワマンばかりを建設してきた結果が、住宅の過剰供給であり、空き家の急増である。

 タワマンの修繕も波があり、37年にいくつかが廃墟化する。作って売れば区分所有者の責任、品確法では10年で建設者の責任がなくなる。管理組合は理事長の不正問題も発生しかねない。

 長周期パルスでタワマンの倒壊の可能性がある。地震時にはエレベータでの閉じ込めもある。EV停止では、高層階での自活は大変である。浦安では仮設トイレで長蛇の列、タワマン住民で避難所が溢れる。免振・制振ダンパーの不正、杭基礎の不正もあった。さらに、タワマンで子育てするリスクも紹介されている。

(*①建設業者の儲けに走っている。多くの自治体・議会与党は世帯数と人口の増加を望み、長期的で快適な地区まちづくり・都市計画の視点がない。

②豊田市では、戸建ては50坪弱、延床30坪で、4千万円ほどである。空き家も増えているが、解体で更新もされている。駐車場が2台で植栽がほとんどない。マンションは70平米ほどで3千万円強である。拡張型の豊田市立地適正化計画と愛知県区域マスタープランとの矛盾、区画整理万能、既存市街地放置など都市計画の思想が時代遅れのような気がする。それ以前の市民参加の議論がないのが残念である。)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする