豊田の生活アメニティ

都市デザイン、街歩き・旅行、くらし

なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?

2017-11-14 | 気になる本

大村大次郎(2016年)『なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』ビジネス社

 これまで豊田市は、トヨタのお陰で成長・発展してきた。しかし、今はトヨタの恩恵はほとんどない。国も自治体も大企業優遇の政策で、トリクルダウンを誤信しているようである。税金の視点から絡繰りの解説と問題点の提起の書である。以下のそのポイントである。

 はじめに トヨタは日本のリーディングカンパニーである。トヨタがやっていることは、他の企業も真似をする。日本の大企業の実質の税負担率は非常に低い。雇用でも、トヨタは非正規で悪影響を与えてきた。極端に言えば、「デフレ不況はトヨタが起こした」といえる。

 序章 トヨタは「虚構の世界一」。トヨタは2009年から5年間も法人税を払っていなかった。エコカー補助金も優遇された。企業の税金は法人税、事業税、法人住民税である。3つの税金は企業の黒字分にかかってくる。08年のリーマンショックで、その後の2期だけが赤字であった。しかし、日本の法人制度には赤字繰り越し制度がある(家計にはない)。最大の理由は「外国子会社からの受取配当の益金不算入」がある。子会社で5%納税すれば、95%が課税収入から除外できる。09年は営業赤字でも、経常利益は黒字だった。これは「海外子会社からの配当などにより黒字になった」ことである。日本の本社での利益が少なく、海外子会社の利益が多くなっている。トヨタが税制上優遇されている要因は、政治献金にある。

 トヨタは今でもまともに税金を払っていない。外国子会社の受取配当で「税控除」と研究開発減税で、実質税負担(税額)が20%も下げられた。節税(優遇)スキームで大企業ほど税金が大幅に安くなっている。エコカー補助金でトヨタは4000奥円の得をした。実は「日本の法人税が世界一高い」というのは大きな誤解である。

 トヨタが日本の雇用をメチャクチャにした。派遣法を改悪し、非正規雇用が増大し(現在35%)、格差社会と少子高齢化の大きな要因となっている。今の日本の状態では、人材の質が下がっていく。日本のサラリーマンは、企業にとって人材であるとともに、顧客でもある。トヨタは「輸出戻し税」で、毎年20003000億円還付される。(そのため、豊田の税務署は税金の徴収が毎年数千億円赤字である。)車の税金は安くしても車は売れない。自社の目先の利益を優先し、国民の負担を増やし   て、国民の自動車の購入力を下げた。

 トヨタは日本経済に貢献してない。下請け企業も潤してなく、07年度の水準も7割の下請けは回復していない。経済が循環しないのは大企業が溜め込むことである。153月のトヨタの内部留保は17兆9千億になった。もっとお金を社会還元すべきである。外国でのパッシングもあり、国内を大事にし、非正規を改善しないとトヨタも未来がない。

大企業を優先する経済政策の愚。それはトリクルダウンという理論からきている。富裕層にお金を回しても、消費に行かず貯蓄が増えるだけ。日本の大学生の半分は有利子の奨学金を使っている。人材枯渇で、日本は老人国家になる。永続的に発展する社会にする必要がある。大企業、富裕層が税金を不当な方法で逃れるというのは、トヨタだけでなく、世界中で行われている。外国に子会社を作ることや、タックスヘイブンなど庶民は利用できない。庶民の負担は増え、格差は広がればやがて社会不安や経済崩壊につながるだろう。一部の者だけがうるおう社会というのは、決して長続きしない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする