苦闘の末の富と名声と妥協。
結婚記念日に失踪した妻をめぐるサスペンス。と一言で言えばそうなるのだが、この映画、次々に観る側の意表を突く形で展開していく。
なにしろ物語の背景を説明していたはずの妻の日記さえ事件の小道具へと役割を変えるのだから、並みの人間が太刀打ちできるものではない。
ネタバレをすれば、妻のエイミーは映画史に残るといっても過言ではないクラスの悪女である。
特に狂気を胸の奥に隠しつつ着実に計画を実行する冷静さは、数多いるこれまでの悪女を超越している。
冒頭。見つめるエイミーの表情に「君は何を考えている?」と夫のニックの独白が重なる。
何も物語が語られない状態なのに、二人の間を流れる不安定で不穏な空気がスクリーンを通して伝わってくる印象的な場面だ。
再び同じ場面に戻ってくる終盤。この不穏さのすべてが明らかになって改めて感じるのは底冷えのする恐怖だ。
ニックは普通のありふれた「だらしない」男性だ。しよーもないことをしでかすが、罪を犯すほど悪くなければ大胆になれる性格でもない。
しかし、妻の失踪に関しては被害者のはずなのに、警察には容疑者として見られ、何故かマスコミや周囲からは吊るし上げを食らうようになる。
ある意味自業自得の部分が大きいのだが、それは彼の性格や行為ではなく、直接的にはエイミーという伴侶を選んでしまったことに関する自業自得であったことが分かる。
ある時点からエイミーの物語が並行して描かれるようになる。一つの目的に向かってぶれることなく突き進むエイミーだが、計算違いが起こるなどこちらも一筋縄ではいかない展開になる。
一体どうなるのか見当がつかなくなったそんな二人の行く末は、単純な勧善懲悪でもなければ、奈落の底に叩き落とすバッドエンドでもない、なんとも率直な感想を出しづらい形に収束していく。
「結婚とはそういうものじゃない」というエイミーの言葉に、観ている既婚者は頭を抱え込むはずだ。実におもしろい。
(90点)
結婚記念日に失踪した妻をめぐるサスペンス。と一言で言えばそうなるのだが、この映画、次々に観る側の意表を突く形で展開していく。
なにしろ物語の背景を説明していたはずの妻の日記さえ事件の小道具へと役割を変えるのだから、並みの人間が太刀打ちできるものではない。
ネタバレをすれば、妻のエイミーは映画史に残るといっても過言ではないクラスの悪女である。
特に狂気を胸の奥に隠しつつ着実に計画を実行する冷静さは、数多いるこれまでの悪女を超越している。
冒頭。見つめるエイミーの表情に「君は何を考えている?」と夫のニックの独白が重なる。
何も物語が語られない状態なのに、二人の間を流れる不安定で不穏な空気がスクリーンを通して伝わってくる印象的な場面だ。
再び同じ場面に戻ってくる終盤。この不穏さのすべてが明らかになって改めて感じるのは底冷えのする恐怖だ。
ニックは普通のありふれた「だらしない」男性だ。しよーもないことをしでかすが、罪を犯すほど悪くなければ大胆になれる性格でもない。
しかし、妻の失踪に関しては被害者のはずなのに、警察には容疑者として見られ、何故かマスコミや周囲からは吊るし上げを食らうようになる。
ある意味自業自得の部分が大きいのだが、それは彼の性格や行為ではなく、直接的にはエイミーという伴侶を選んでしまったことに関する自業自得であったことが分かる。
ある時点からエイミーの物語が並行して描かれるようになる。一つの目的に向かってぶれることなく突き進むエイミーだが、計算違いが起こるなどこちらも一筋縄ではいかない展開になる。
一体どうなるのか見当がつかなくなったそんな二人の行く末は、単純な勧善懲悪でもなければ、奈落の底に叩き落とすバッドエンドでもない、なんとも率直な感想を出しづらい形に収束していく。
「結婚とはそういうものじゃない」というエイミーの言葉に、観ている既婚者は頭を抱え込むはずだ。実におもしろい。
(90点)
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