AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

5894:苦行

2022年04月21日 | ノンジャンル

 「七福」のほうとうを完食すると、お腹はパンパンになった。「これから長いヒルクライムコースを走ることになるが、ちょっと体が重くなりすぎたかも・・・」と危惧しながら、会計を済ませて店の外に出た。

 塩山駅に立ち寄って信玄公の像の前で記念撮影をして、ヒルクライム後に補給するものをセブンイレブンで購入した。

 空は灰色に染まっていた。スマホの雨雲レーダーによると、この後雨に降られる可能性が高かった。「柳沢峠へ向かわずに引き返しても雨に濡れるのであれば、上りますか・・・」ということになり、ヒルクライムを開始することになった。

 塩山側から上る柳沢峠のヒルクライムコースは約17km。かなり長く、そして厳しい。ここまで既に相当な距離を走ってきているので、無理はできない。「あまり高くない一定の負荷で走り続けよう・・・」と心に決めていた。

 「180ワット程で走ろう・・・その程度の負荷であればペースを崩さずに最後まで走れるであろう・・・」と思いながら走り始めた。

 ヒルクライムコースを走り始める頃合いから小雨が降ってきた。サイコンの10秒平均パワーの数値を注視しながら、ゆっくりと距離と獲得標高を稼いでいった。

 走り始めは脚にまだ余力があるので、10秒平均パワーの数値が200ワットぐらいまで上がることがあると「抑えて・・・抑えて・・・」とクランクを回すペースを落として、じっくりと走った。

 10kmほど走ってヒルクライムの後半に入ってくると脚が随分と重くなってくる。ついつい体は楽をしたがる。10秒平均パワーが180ワットを切ってくると、「さぼるな・・・」と脚に鞭を入れた。

 幾つかのトンネルを潜り抜けていった。道は時折大きく曲がる。頂上までの残り距離が少なってくると、雨の勢いが増してきた。

 その雨のなか峠道を我慢強く走り続けていくと、ようやく峠の頂上にある峠の茶屋の建物が視界に入ってきた。「やっと終わった・・・」とほっとしながら、最後の行程を走り切った。どうにかこうにかほぼ均一ペースで走れた。

 雨は本降りになってきた。峠の茶屋は営業をしていなかった。その軒先にロードバイクを立てかけて雨宿りしながら、メンバーが上り切るのを待った。

 待っているうちに寒さで体が小刻みに震え始めた。気温は5度ほど。雨に濡れたので、体感気温はもっと低い。寒さにいたって弱い私にとって、「これは最悪の状況になるかもしれない・・・」と相当に不安になった。

 全員が上り終えてトイレを済ませてから奥多摩湖目指して長い下りを下り始めたのであるが、その下りは私にとって「地獄の苦行」そのものとなった。

 あまりの寒さに体の震えが止まらない。筋肉は硬直してロードバイクを上手くコントロールできない。濡れた路面は落車の危険性が高い。

 「どうにか落車だけは避けなければ・・・」と、濡れた路面を下っていった。「下っていって標高が下がれば気温も上がってきて、状況は良くなる・・・」と心に小さな希望の灯りをともしながら走ったが、寒さは止まず体の震えはいつまでも続いた。

 ようやく奥多摩湖の駐車場まで下ってきた。ここでトイレ休憩をした。体の各部をさすって冷え切って硬直した体を少しでも暖めようとした。

 ひと時の休息の後、さらに下っていって、古里駅近くのセブンイレブンでコンビニ休憩をした。ここで暖かいかき揚げ蕎麦を胃袋に入れて、体を内部から暖めた。

 少し人心地ついた。「どうにか大丈夫そうだ・・・」と思った。そして最後の行程を走っていった。JR青梅線に沿って続く商店街を走る頃になってから、ようやく体の動きが通常のものになってきた。

 夜の9時ごろに自宅に帰り着いて、サイコンに記録された走行距離を確認した。走行距離は211kmであった。「こんなに寒く辛い下りは初めてだったかも・・・」と思いながら「ただいま・・・」と告げた。

 出迎えた妻は「なんでこんなに遅いの・・・心配したでしょう・・・もう歳なんだからいい加減にしなさい・・・」としこたまたしなめられた。

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