中野坂上にある喫茶店「Mimizuku」の新たなメニューである「クリームトースト」を頼んだ。ブレンドコーヒーも一緒に頼んで、しばしカウンター席で待っていると、見た目的には割と凡庸とも言える「クリームトースト」がカウンターに置かれた。
トーストにバターが塗ってあり、そこにガムシロップが染み込ませてあって、さらにクリームがのせられている。
一口かじると、シロップの甘みがまずきて、甘さのほとんどないクリームはコクをプラスする。バターの風味が少し遅れて広がり、不思議と美味しい。
カウンター席には「ゆみちゃん」の姿はなかった。少し奥まったところにある2人掛けのテーブル席には初老の男性が新聞を読みながら、コーヒーを飲んでいた。二つある4人掛けのテーブル席は空席であった。
ここ数日初夏を思わせるような暖かい日が続いていたが、今日は一転して寒い。「昨日は半袖でもいいくらいでしたけど、今日はコートが欲しいくらいですね・・・」と寡黙な女主人と一言二言言葉を交わした。
カウンターの端にはSONY製の古いラジカセが置いてある。亡くなったご主人の遺品のようで、3台ほどあり時折入れ替わる。
今日は、CF-1700であった。1973年に発売されたCF-1700のデザインは、この時代のSONYらしく合理的かつ機能的でありながらも実に美しく纏まっている。
さらに、スイッチ類の操作感もしっとりとしていて好印象である。上から見るとシンプルな構成となっていて、丸いスイッチ類がとても上品である。これらの丸いスイッチはメカメカしさを軽減して人間味を加味している。
ボリュームとトーンコントロールはスライド式で、この時代においては珍しい。丸い操作ボタンとのバランスが絶妙と言っていいであろう。
CF-1700からは音は発せられていなかった。「眺めているだけでもいい・・・」と思わせるCF-1700をぼんやりと視界に収めながら、クリームトーストを完食した。コーヒーカップも空になったので、会計を済ませて店の外に出た。
そして、同じビルの4階にある「オーディオショップ・グレン」に向かった。ビルの脇にある階段を4階まで登っていくと少し息が切れた。