AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

5883:対極

2022年04月10日 | ノンジャンル

 「対照的と言えばこれほど対照的な二つの存在は珍しいかもしれない・・・」リスニングルームに並んだ二組のスピーカーを目にしてそう思った。

 一つはJBL Olympus。1960年代初頭に発表され、その当時のJBLの音響技術と木工技術の結晶として誕生したスピーカーシステムである。

 そしてもう一つはMAGICO A3。2018年に発売されると「手の届くMAGICO」として大人気となったハイエンドスピーカーである。

 MAGICOは今や押しも押されぬハイエンドスピーカーメーカーの雄として、YG ACOUSTICSと人気を二分している。

 高精度なアルミキャビネットに複雑な内部フレーム構造を採用し、超高性能なユニットとネットワークを搭載した最新鋭のスピーカーである。

 今日は極めて対照的な二つのスピーカーが同居する夜香さんのリスニングルームをハンコックさんと一緒に訪れた。夜香さんの古くからのオーディオ仲間であるアレキサンドライトさんもご一緒であった。

 そのリスニングルームにはオーディオマニアであれば、口あんぐり状態になるような実に魅力的なオーディオ機器がこれでもかという具合に数多く置かれていた。

 「オーディオマニアにとって、この部屋はちょっとしたテーマパークかもしれない・・・」と思いながら、リスニングポイントに置かれた三人掛けソファに座った。

 今日のOFF会は二部構成であった。第1部の主役は「A3」、そして第2部の主役は「Olympus」である。レコードのA面、B面のようにとても分かりやすい2部構成であった。

 まずは第1部。「ポンと置いてもある程度鳴ってくれる・・・」と評判のMAGICO A3であるが、夜香さんも同じ言葉を口にされた。導入されてまだ1ケ月程であるので、湯気が出ている状態である。

 まずはCDから聴かせていただいた。導入1ケ月とはどうしても思えない高精度にしてまとまりの良い音が耳の中にいきなり飛び込んできた。

 「うまいねぇ、これでインスタントかい?」五代目柳家小さん師匠のテレビCMでのこの台詞が多少形を変えて口をつきそうになった。「凄い・・・これで導入1ケ月かい?」

 見た目的にはクールで冷徹な印象のA3であるが、音に厚みがあり、エネルギッシュである。そのうえで、音離れの良さ、高さや奥行きがきっちりと出る空間表現力が備わっている。改めてそのクオリティの高さに驚いた。

 優秀なネットワークのなせる業か、3ウェイのつながりが実に自然で音色に統一感がある。相当に高いスピードでカーブを曲がってもロールすることなくきっちりと曲がっていくスポーツカー的な爽快感に、その音は溢れていた。

 MAGICO A3を駆動するのは、MARK LEVINSON LNP-2LとMARK LEVINSON NO.20.5L。その斬新にして迫力満点の駆動力もあって、比較的スリムなA3から想像するよりもはるかに大きなスケール感やサウンドステージが表現されていた。

 第1部の後半には画期的な発想に基づく最新アームであるReedの5Aと新世代の光カートリッジというニューウェポンを得たアナログも聴かせていただいた。

 高精度なリニアトラキングアームと光カートリッジが見せてくれる鮮烈な世界はやはり口あんぐりである。アナログという概念を超越した存在と言えるであろう。

 コーヒータイムを時折入れながら濃厚な時間は流れた。そしてOFF会は第2部へ突入した。第2部の主役はもちろんOlympusである。

 心のなかでは「最新鋭のA3に対して、60年前のスピーカであるOlympus・・・どう考えてもOlympusにとって分が悪い・・・」と思っていたが、その最初の音を聴いて「深い・・・懐が深い・・・Olympusの方が懐が深い・・・」と感じ入った。

 こちらはさらにMARK LEVINSONのNO.27Lが2台加わったマルチアンプ駆動である。長い年月をかけて熟成してきたシステムである。

 A3とはまた違うベクトルでの深みをじんわりと感じた。同席されていたアレキサンドライトさんは「60年前のスピーカーでこんな音を出されたんじゃかなわないな・・・」と感嘆の言葉を漏らされていた。

 「確かに60年前のスピーカーとは思えない・・・」と頷きながら耳を傾けていた。そしてOlympusでもアナログを聴かせていただいた。

 ハンコックさんが持参された貴重なオリジナル盤がミッチェル・エンジニアリングのレコードプレーヤに次々にセットされた。どのレコードも素晴らしい演奏であった。

 そのなかでも特に印象に残ったのは、ドイツ盤のオリジナルであるSarah Vaughan「How Long Has This Been Going On Between」であった。このレコード演奏は今日の白眉と言っていいであろう。

 約4時間のOFF会は実に盛りだくさんであった。いろんな意味で「お腹いっぱい・・・」となった。夜香さんのリスニングルームにおいては、極めて対照的な存在であるA3とOlympusが、見事に両立していた。「凄み」と「深み」がしっかりと確立されていた。

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