AcousticTao

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5882:果汁

2022年04月09日 | ノンジャンル

 ドビッシーのヴァイオリンソナタが流れた。ドビッシーらしい揺蕩うような空気感と先鋭的なリズムの変遷が心地よい酔いを誘う曲である。

 三つの楽章からなるこのヴァイオリンソナタは、ドビュッシーの晩年に作曲され、彼にとって生涯最後の曲となった。

 作曲されたのは、第一次世界大戦中の1916年から1917年にかけて。作曲の際には、ドビュッシーの弦楽四重奏がきっかけで知り合ったガストン・プーレからヴァイオリンの技術面からの助言を受けた。

 初演は1917年5月5日パリのサル・ガヴォーにて行われ、ガストン・プーレのヴァイオリン、ドビュッシー本人のピアノ伴奏によってなされた。

 その繊細にして流麗、死の向こう側を見通すかのような幻想的な曲が終わった。アームリフターをゆっくりと操作して、カートリッジの針先をレコードの盤面から上げた。

 「では、TANNOY GRFでも聴かれますか・・・?」とFMさんに確認した。「そうですね、まだ耳に残っているドビッシーのヴァイオリンソナタで聴き比べてみますか・・・?」とFMさんは返答された。

 TANNOY GRFは1950年代半ばに製造されたスピーカーである。まだステレオのレコードが発売される前の時代であり、1台づつで販売されていた。そのためか我が家のGRFは左右でエンブレムの形状が違う。さらに、ネットワークの取り付け位置も左右で異なっている。製造された年が違うようである。

 1台のGRFを購入した英国人の初代オーナーは、当初モノラルレコードを楽しんでいたが、その後ステレオレコードが1958年に発売されるようになり、急遽もう1台のGRFを購入したのであろう。

 再びドビッシーのヴァイオリンソナタを聴いた。三つの楽章を通して聴いた。先ほどGuarneri Mementoで聴いた印象との比較となる。

 聴き終えて、FMさんは「一気に古臭い感じになるのかと危惧していましたが、そういうわけでもないですね・・・音楽の陰影感がより濃く出てきますね。音楽のエッセンスを凝縮還元したかのような感じです。音だけマニアには受けないでしょうが、これはこれで良いと思いました。果肉よりも果汁といった印象でした・・・」と感想を述べられた。

 私が受けた感想もほぼ同じであった。「FMさんはうまいこと言うな・・・」と感心した。「果肉よりも果汁・・・か・・・」

 その後、GRFでまた別のレコードを聴いた。FMさんは結局2時間半ほど我が家のリスニングルームで二つのスピーカーの音を聴かれてから、ホンダ インサイトに乗り込まれて帰られた。

 GRFと「新参者」のアンプたちの相性であるが、予想していたほどには悪いものではなかった。「意外といけるものだな・・・案ずるよりも生むがやすし・・・かな・・・」と少し安心した。

 

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