我が家のリスニングルームにはYAHAMA GTラックが3台並んでいる。その収容力では新しいプリアンプとパワーアンプが入り込んでくると、古いアンプ群は一旦退出する必要があった。
Marantz Model7とModel2をも収納するためには、三段ラックを別途三台調達してYAMAHA GTラックと取り換える必要がある。そうすれば全てのオーディオ機器が美しく収納できる。
見た目的にも美しく音も良いであろう三段ラックというと、私の頭にはバッソコンティニュオのオーディオ・ラック“ACCORDEON”(アッコルデオン)が思い浮かぶ。
バッソコンティニュオはイタリアの高級オーディオラックメーカーである。その姿は「さすがイタリア製・・・」と思わせる優雅さに溢れている。
しかしネックはその価格である。「アッコルデオンの3段ラックは1セットで50万円ほどする。それを3セット並べるとなると・・・」と想像してみると、やはり心に急ブレーキをかけざるを得ないであろう。
今日は一旦はGTラックから退出したMarantz Model7を向かって右のGTラックの下段に設置しなおして、フォノイコライザーとして活用してみることにした。
ラインナップの中に一つだけヴィンテージ製品が入る形になるが、見た目的にはそれほどの違和感はなく、十分に調和していると思えた。
ORACLE DELPHI6のターンテーブルの上には1枚の10インチレコードがセットされた。「ECHOS DE ROMPON(ロンポンのこだま)」シリーズの一枚である。
スイス国境近くのフランスのアルデッシュの寒村ロンポン・・・その静かな村のはずれにある廃屋同然の礼拝堂を買い取ったピアニストは、慈善演奏会を開き続けてこの礼拝堂を修復していく。
小さく敬虔な雰囲気にあふれた礼拝堂での演奏会は年々人々に知られるようになり、多彩な音楽家もやってくるようになった。
そのピアニストの名前はジャンヌ・ボヴェ。アルフレット・コルトー、ナディア・ブーランジェに師事したピアニストである。
ボヴェはロンポンに棲みながら、慈善演奏会に来た聴衆のため、そして礼拝堂復旧のために、一年に一枚のペースでレコードを吹き込み始める。録音はロンポン礼拝堂で行われることが多かったが、スタジオ録音のものもあった。
そんな優雅な由来のあるシリーズの一枚を聴いた。ピアニストはChristiane Moutandonである。バッハ、スカルラッティ、ブラームス、シューマンのピアノ曲を聴いた。
このレコードを聴くと敬虔な気分になる。10インチと小さめのレコードであり、ジャケットにはロンポン礼拝堂の白黒写真が使われている。その礼拝堂の佇まいとレコードから聴こえてくる音の質感が見事にリンクしていて、心の油汚れがさっと落とされていく。
その音を聴いていると「バッソコンティニュオのオーディオラックではなく、質素で敬虔なYAMAHA GTラックでいいかな・・・」という気持ちになってくる。