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おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

夏の朝の絵、あるいは詰め腹

2020-08-28 11:13:12 | イラスト

 あっつい。連日の猛暑日で、すっかり干からびている。それでも朝晩の散歩には行かなきゃならないので、「外は風が吹いて涼しいぞ」と自分に言い聞かせながら表に出る。日本人は昔っから言霊信仰を持っている。言葉さえ言い換えれば、その気になる民族なのである。敗戦を終戦、犬死を玉砕、軍隊を自衛隊と呼んで、都合の悪いものはなかったことにする。「暑い」というから「暑い」のだ。こういうときには「あったけ〜」と口に出せば、暑さも暖かさに変わる。

 朝からギラギラと太陽が照りつける。そんな散歩の一コマをイラストにしてみた。太陽光線の強さを強調するには、コントラストを強めることだ。白黒をはっきりさせれば、お日様が照っている感じが強くなり、コントラストを弱めてぼんやりさせると、曇り空や雨の日の雰囲気が出るのである。

 で、ここからは別のお話。今読んでいる「逆説の日本史」が日露戦争を取り上げているのだが、ロシアとの戦争に備えて、冬山の行軍の練習をしておく必要が陸軍にはあった。映画にもなった「八甲田山雪中行軍遭難事件」である。映画はあくまでフィクションであり、事実と異なることも多いのだが、大筋は似たようなものだ。

 ロシアの進行により海岸線を使えなくなったときのために、八甲田山を横切る補給路を確保する目的で、冬の八甲田山に200名以上の陸軍が、雪中行軍の練習をした。映画でもあったように、それによって210名中199名が死亡するという、世界の山岳史上でも例のない大惨事となったのである。

 失敗となった原因は、今となってははっきりしている。指揮をとった人間が、冬の青森の山のことをまったく知らなかったためだった。本人はかろうじて救助されるが、責任を取って病室で拳銃自殺した。

 問題なのはこれからで、事件後、無知な人間をトップに任命した陸軍上層部の責任についてはまったく追求されていないのである。雪中行軍を指揮した人間が責任を感じて自殺したのだから、これ以上追求する必要なしとされてしまったのである。

 現場の人間に責任を取らせ、詰め腹を切らせるということは、今の政治家の得意芸かと思っていたら、昔から日本ではこんなことばかりやっているのである。第二次大戦では、補給路の確保を考えなかった上層部のせいで、前線にいた兵士たちのうち、半分以上は飢え死にやマラリヤなどで病死してしまった。が、責任を取って詰め腹を切らされたのは、現場の指揮官たちだった。今でも平気で部下に公文書を改ざんさせ、自殺しようとも調査の必要なしとして、のうのうとしている。

 本当に責任を感じているなら、どこに不備があったのか、どうしたら防げたのか、そういったことを現場の人間を呼んで調査するのが、将来のためになるはずである。それがないので、いつになっても同じ失敗を繰り返す。

 ちなみに雪中行軍の遭難から命からがら救出された指導者は、重度の凍傷を負っていたろうから、拳銃の引き金を引けたとは思えない。自殺した時間は夜だったのだが、静まり返った病院内で銃声を聞いた人間もいないという。

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