日々草

「つれづれなるままに・・」日々の事を記す。

何かを読めば何かを思い出す、欲しくなる、いつだって

2019-04-24 | リブレリア
小川洋子の小説が読み終わった。

 
その作品達は水の中にブルーブラックのインクが一滴、滲んでひろがっていくような語り口。
静謐で淡く無色のようでいて、そのなかに溶け込む色を探し出すような世界観である。
粛々と日常で、ありえないシチュエーション。
相反する二つの時空が幻想的なのにファンタジーにならないぎりぎりのところでからみあって、物語を面白くしている。
小川洋子の小説を読むとまぶしすぎる強い光の白い世界のなかを、薄眼で浮遊する実態を探すような印象になる いつだって。
読んでいたのは「琥珀のまたたき」、ついで「凍りついた香り」の二冊。


 
「琥珀のまたたき」
外界から隔離された小さな世界に住まわされた3兄弟 オパール・琥珀・瑪瑙と母のお話
外界の煩わしさと無縁な小さなユートピアで母の庇護のもとに暮らす生活は静かで安全でとても歪んでいる。

この話を読んで思い出したのは孤高のヘンリー・ダーガー。
映画にもなった彼の半生はまさにこの小説にでてくる琥珀に重なる。
琥珀が小さな世界を飛び出して外の世界とかかわりを持ちミスター アンバーになったとき自分と家族のためだけに作り上げたものが世の中で奇異と称賛をもって迎えられる。
その過程もまさにヘンリー・ダーガーと重なるのである。
琥珀の世間から隔離された時間を圧倒的に凌駕する60年の歳月をもってして作りあげられたヘンリー ダーガーの現実世界は小説より奇なり。
→ヘンリーダーガー 非現実の王国はこちらから


 
何かを読むと何かを思いだす。
思い出したのはヘンリー・ダーガーという孤独のうちに死んだ男のことであり
欲しくなったのは新しい香水
 
「凍り付いた香り」
自死をした調香師の彼がつくった香りと残されたヒントから、彼の死と半生の謎をさがす物語。
 
 
新しい香水が欲しくなる一冊。
買ったのはルイ ヴィトンの香水 「Sur la route(スール・ラ・ルート)」
深い木々
吹き抜ける風
まっすぐに光さす一条の木漏れ日
森の奥、忘れ去られた場所に実る黄色い果実
そんな香り。
メンズ用ですがあたしはこういう甘くない香りが好き。

 
よい小説に出会うと、何かを思い出すし、何かを欲しくなる
それはきっと物語が五感を刺激するからだろう。
GW目前、読みたい本がたまっている。
あちこちを少しづつ刺激されながら本まみれになる楽しみが、目の前にあるということだ。
 何かを読めば何かを思い出す、欲しくなる、いつだって。




 
 
コメント
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