原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

iPS山中研究所論文捏造・改ざん事件、STAP事件より悪質かも

2018年01月23日 | 学問・研究
 私は、山中伸弥氏がiPS細胞研究によりノーベル賞を取得した直後の2012.10.13 に、「科学基礎研究の終点は『ノーベル賞』なのか?」と題して、山中氏に対するやや批判的なエッセイを綴り公開している。

 早速その内容の一部を、以下に反復させていただこう。

 先だっての2012.10.13に今年のノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学教授 山中伸弥氏は、その後マスメディアに幾度となく登場して、その喜びの程を満面の笑みと共に国民の前で晒しているご様子だ。
 どうも、私は以前より山中氏の“行動の派手さ”が気になっていた。
 そもそも元医学関係者であり医学基礎研究に携わった経験のある私は、世紀の「ノーベル賞」と言えどもその裏舞台ではコネが渦巻いていたり、“順番待ち”の世界であることは(あくまでも裏情報として)認識していた。 山中氏に関してもその研究内容のレベルの程はともかく、まるでタレントのごとくメディアに登場したり、マラソンにて公道を走ることにより自身の研究PR活動に勤しんでいる様子に少し首を傾げたい思いも抱いていた。
 そうしたところ、今回50歳の若さにしてノーベル賞受賞とのことだ。
 山中氏曰く、「今回は名目上は私にノーベル賞が贈られることになったが、日の丸の支援がなければ受賞できなかった。 まさに日本という国が受賞した賞だと感じている。 喜びが大きい反面、iPS細胞は医学や創薬において未だ可能性の段階であり実際には役立っていない。 来週からは研究に専念して論文を早く提出したい。 (今回の受賞は)これからの私の研究者としての人生に大きな意味を持っている。 
 (ホントに貴方がそう思っているなら、メディア上での言動を少し自粛してこそ真に医学の発展を望んでいる国民にその思いが通じると思うのだけど……)
 ここで、山中伸弥氏が今回ノーベル医学生理学賞受賞に至った「iPS細胞」に関して、朝日新聞記事を参照しつつ原左都子の観点も交えて以下に紹介しよう。
 「iPS」細胞とは、皮膚などの細胞を操作して心臓や神経等様々な細胞になる「万能性」を武器に作られた胚性幹細胞である「ES細胞」と原理は同じだが、受精卵を壊して作る「ES細胞」とは異なり、倫理的な問題を避けられる観点から作られた事により注目を浴びている。
 参考のため「iPS」とは induced Pluripotent Stem cell(人為的に多能性を持たせた幹細胞)の略語である。
 原左都子の私事に移るが、「ES細胞」に関しては私が医学関係者として現役だった頃より注目を浴び始めていた対象だった。 当時はこの細胞こそが未来の臨床医学を支えるとの思想の下に基礎医学研究者達がこぞって研究を進めていたことを記憶している。
 ところが「ES細胞」とは上記の通り、人間の臨床医学に応用するためには ヒトの受精卵を壊すという手段でしか作成できないとの大いなる弱点を抱えていた。 
 そこに画期的に登場したのが、山中氏(ら基礎医学研究グループ)による「iPS細胞」であったとのことだ。  この研究自体は事実“画期的”と言えるであろう。
 ところが原左都子が今回懸念するのは、「iPS細胞」研究に対してノーベル賞を贈呈するのは時期尚早だったのではないかという点だ。 と言うのも、「iPS細胞」は未だ基礎研究段階を超えてはおらず、人間の命を救うべく臨床医学に達していないと考えるべきではあるまいか?
 決して、今回の山中氏の「ノーベル医学生理学賞」受賞にいちゃもんをつけるつもりはない。
 ただ原左都子が考察するに、「ノーベル賞」受賞対象となる科学分野の基礎研究とは、医学生理学賞、物理学賞、化学賞を問わず、現在までは当該基礎研究の成果が既に世界規模で実証されていたり、経済効果がもたらされている研究に対して授けられて来たような記憶がある。
 例えば過去に於いて一番意表を突かれたのは、㈱島津製作所 に勤務されていた田中耕一氏の「ノーベル化学賞」受賞に関してではなかろうか。 当時ご本人は一企業会社員の身分であられたようだが、田中氏が過去に於いて達成された「高分子量タンパク質イオン化研究」が後々世界に及ぼしている影響力の程が、絶対的に世界的規模でその経済価値をもたらしているからこそ、田中氏にノーベル賞が贈呈されたものと私は解釈している。
 この田中氏の業績と比較すると、山中氏による「iPS細胞」はご本人も言及されている通り、まだまだ研究途上と表現するべきではあるまいか? 
 今回のエッセイの最後に「ノーベル賞」を筆頭とする「賞」なるものの意義を問いたい私だ。
 「賞」を取得したことでその人物の今後の道程を歪めたり、更なる発展意欲を縮める賞であるならば、その存在価値はないと言えるであろう。
 そうではなく、受賞者に今後に続く精進を煽る意味での「賞」であって欲しいものだ。
 (以上、長くなったが、山中氏iPS細胞ノーベル賞受賞に際して私論を展開したエッセイの一部を再公開したもの。)


 さて、昨日2018.01.22のニュース報道によれば、京都大iPS細胞研究所の山水康平・特定拠点助教の論文について捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)があったと京大が発表したようだ。

 以下に、その論文不正事件に関するネット情報を引用しよう。
 論文は人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた脳の血管に関するもので、調査した結果、主要な図6点全てに不正があったと認定した。 大学は論文を掲載した雑誌の出版社に撤回を求めており、今後、関係者を処分する方針。
 大学側の調査に対し、山水助教は「論文の見栄えを良くしたかった」と説明したという。
 昨年、同研究所相談室に「論文の信憑性に疑義がある」との通報があり、論文掲載のグラフの再構成を試みたが再現できず、7月に大学の通報窓口に通報した。
 大学側は9月、学外委員も含めた調査委員会を設置し、実験データの精査や関係者への聞き取りを実施。 その結果、論文を構成する主要な図6個全てと、補足図6個中5個で数値の捏造や改ざんが認められた。いずれも論文の主張に有利な方向に操作され、結論に大きな影響を与えていたことが明らかになった。
 会見した山中伸弥所長は「今回の論文は予定される臨床試験や他の教員とは無関係だが、論文不正を防ぐことができず非常に後悔、反省している。 国民のみなさまに心よりおわび申し上げる」と述べた。


 更に、本日朝方ネット上で公開されていた当該事件に関する報道によれば。
 
 上記事件に関し、京都大学は論文の図が捏造(ねつぞう)・改ざんされている事を認めた上で、それを掲載した出版社に論文の撤回を申請した。 山水助教のほか、所長を務める山中伸弥教授らの監督責任を問い、懲戒処分を検討する。
 京大による内部調査の結果、論文の根幹を成すデータについて、主要な図6枚すべてと補足図6枚中5枚に出津造と改ざんを確認。「重要なポイントで有利な方向に操作されており、結論に大きな影響を与えている」と認定した。
 同研究所で論文に不正が見つかったのは初めて。iPS細胞の開発者でノーベル医学生理学賞を受賞した山中教授は「所長として非常に強い後悔、反省をしている」と陳謝。 自身の処分に関して「一番重い辞任も含め、検討したい」と述べた。 再発防止策として実験ノートの3カ月に1度の点検など、取り組みを強化するという。 


 私見でまとめよう。

 山中伸弥氏のノーベル賞受賞後のメディア露出は相変わらず派手だ。
 昨年末から年始にかけては、まるで本気でタレントに転身したかのごとくテレビ番組に出演している印象があった。
 あの状態で山中氏は京大iPS研究所長としての任務がまっとう出来るのか、懸念を抱かされる程だった。

 とにかく山中氏との人物とは2012年にノーベル賞受賞する以前より、研究者というよりもiPS細胞PR活動を優先しそれに躍起になっていた印象が強い。
 冒頭の我がバックナンバーエッセイ内でも記述しているが、確かに現在の「ノーベル賞」とは“実力”や“世界規模での社会貢献”が評価された結果というよりも。 単に如何に世界に(あるいはノーベル賞審査員達に??)その業をパフォーマンス出来たかの勝負に移ろいだようにも受け取れる。

 iPS細胞基礎研究がノーベル賞受賞後5年が経過した今に至って尚、「iPS細胞」研究は未だ肝心要の臨床医療分野に於いて貢献を果たせていない。 要するに、人間の命を確実に救えるべく高度な臨床医学に到達していないと考えるべきではあるまいか??

 そんな中、京大iPS細胞研究グループ内に“焦り”があった事も推測できよう。
 今回の助教人物の論文不正も、そのような研究室内の“焦り”が生み出した汚点だったのかもしれない。
 
 山中伸弥氏自身も今回の事件を受けて「辞任」を視野に入れているらしい。
 医学の真の発展とは、決して著名研究者の「売名行為」によりもたらされるものではあり得ない。
 その辺を大いなる反省材料としつつ、京大はiPS臨床応用研究を振り出しに戻して欲しいものだ。

 小保方氏がかかわった「STAP細胞」捏造改ざん事件より既に4年の年月が経過して、今更同様の事件を国内最先端の医学研究所が起こすなど、到底許し難き事態だ。

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