原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

ブタの臓器をヒトへ移植する時代

2024年06月18日 | 医学・医療・介護
 (冒頭写真は、2024.06.15付朝日新聞記事「提供者不足 ブタの臓器をヒトへ 異種移植 世界が着目」より転載したもの。)


         
 同記事より転載した「ブタの遺伝子操作のイメージとブタの臓器を使うメリット」。

         
 同じく同記事より転載した、「米国における遺伝子改変ブタを使った移植例」。



 日本国内で今年2月、ヒトへの臓器移植をめざして3頭の豚が誕生した。 米国では2年前に、重い心臓病の患者にブタの心臓が移植された。 臓器提供者の不足が課題となる中、世界的にブタからヒトへの「異種移植」の競争が激しくなっている。 (途中大幅略)
 何故、ヒトの異種移植にブタを選ぶのかと言うと。 ブタと人の臓器のサイズが似ているためだ。 ただ、ブタの血管の表面には「糖鎖」というブタ特有の「目印」がある。ブタの臓器がヒトの体内に入ると、ヒトの免疫がその糖鎖に反応し、「敵」と認識して攻撃を始め、あっという間に血が固まってしまう。 このため、ブタ特有の糖鎖をなくし、ブタにヒトの遺伝子を組み込ませた遺伝子改変ブタが生産された。
 今後の課題としては、遺伝子を改変した動物からの異種移植をするための指針の整備が求められる。 本来はヒトに感染しないような、新たな感染症の懸念もある。 引き続き十分な基礎研究が必要だ。

 1999年に、早期移植法のもとで日本初の心臓移植に携わった研究者は、異種移植の可能性や課題を探るためにも「研究は進めていくべきだ」とした上で、「現在の心臓移植は確立された医療で、まだ実験段階の異種移植にすぐ取って代わられると考えるのは、まちがいだ。」と指摘する。 (中略)
 移植直後の激しい拒絶反応は遺伝子改変で回避できても、その後も起こり得る拒絶反応を防ぐには免疫抑制剤が必要だ。 (中略)
 国際異種移植学会は2003年、臨床試験に進むには、十分にな実験データや国度による適切な監督と承認が必要だとする見解を発表。 「適切な科学データが示されることなしに、成功が約束されたと解釈されるような発言は慎まれなければならない」とも指摘した。 (途中大幅略)
 人それぞれに信じる宗教や考え方の違いもある。 ブタの臓器でも移植を受けて生きたいという人もいれば、「ブタの臓器を移植してまで」と考える人もいるだろう。
 移植と医療倫理に詳しい塚田教授は、「医療倫理は白か黒かはっきりするものではないし、全てが多数決できまるものでない。研究者や医療に携わる人たちは、社会に向けて説明し、理解を得ようとすることを、絶えず続けていかなければならない」と話した。

 (以上、朝日新聞記事より一部を引用したもの。)



 原左都子の私事と感想に入ろう。

 この私は医学関係者であり、主に「免疫学」関連の研究実験を日々繰り返してきたものの。 (他の医学業務も経験していますが、一番 長期に渡り取り組んだのは「免疫学」関連業務でした。)
 臨床現場での医療経験は乏しく、まさか「移植医療」に携わった経験は無い。

 そんな私が、今回この新聞記事を読んで思うに。

 ブタからの「異種移植」ねえ……

 いくら ブタの臓器を激しい拒絶反応が起きないよう遺伝子改変したとて。
 その臓器を体内に入れられることは、是が非でも拒絶したい気がする。
 いえいえ、それは自身が高齢域に達して尚健康体を維持できているが故であろう。
 これが、未だ幼い我が子がその身になってブタの臓器を体内に移植したら生き延びられる!事態となれば、考えは大幅に異なるような想像もつく…

 
 医学・医療の目覚ましいばかりの発展は喜ばしいが。

 上記引用新聞記事内にも、書かれているが。
 世界規模で考察した場合、移植材料として「ブタ」を使用することに関しては、「宗教」や「倫理」との大きな課題もあろう。

 まさに塚田先生がおっしゃる通り、この問題に関しては医療者や医学研究者は社会に向けての説明責任を負いつつ、世の理解を得ることを続行せねばならない立場であろう。