水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (22)かくし芸

2023年12月14日 00時00分00秒 | #小説

 楽しかったテレビの新春特別番組にかくし芸大会というのがあった。あのスターがこんなことを…と、観ている視聴者は驚くのだが、プロ同然の芸には、誰もが感心させられた記憶がある。芸能人が、かくし芸の一つや二つ出来ても当然だと考えるのがフツゥ~だが、一般人には出来ない芸当だから、余計に感動させられる訳だ。
 とある町の繁華街である。大勢の人の輪が出来ている。大道芸と呼ばれる人達が思い思いに自分達のかくし芸を披露している。前に広げられた布切れの上には人々が投げた貨幣や紙幣が散らばって見える。
「さて、お立合いっ! ここに取り出したるは、当家に伝わる家宝にて五郎入道正宗が鍛(きたえ)し業物(わざもの)っ! この刃先にて…」
 講談を語るような流暢(りゅうちょう)さで、ガマの油売りが口上を進める。やがて話が進んだところでクライマックスとなる。
「このようにかすり傷をつけ…」
 ガマの油売りが自分の腕にスゥ~っと傷をつけると、ジワリと血が流れ出る。その傷口に口上を語りながらガマの油を塗るガマの油売り。すると、あら不思議! 流れ出ていた血がピタリと止まる。このかくし芸的な大道芸に大勢の人の輪は、割れんばかりの握手を送る。
 これが種も仕掛けもない、実演で人々が驚くかくし芸なのです。^^

                   完


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