水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (22)積木(つみき)

2022年10月24日 00時00分00秒 | #小説

 遠い昔のドラマになるが、某局で[積木くずし]という番組があったことを、ふと思い出した。障害があったり失敗たとしても、めげないでいると、いつの間にか成功したり障害が消え去ったりする・・というのが理想刑なのだが、世の中はそう甘くはない。とはいえ、失敗や障害が続けば、人は弱く、やがては、めげてしまう。それでは哀れで身も蓋(ふた)もない。^^
 この春3才になった坊やのモンちゃんは頭が非常によく、すでに積み木のプロになりそうな・・といえば言い過ぎになるが、それほど上手(じょうず)に積み木が出来るようになっていた。パパもそんなモンちゃんが自慢で、会社の部下を時折り自宅に招いては、積み木で遊ぶモンちゃんの聡明さを自慢するように見せることも度々(たびたび)だった。
 ところがあるとき、モンちゃんは積み木に行き詰まってしまった。どんどん積み木の数を増やしていくうちに、どうしても積めない木ができたのである。積み残しである。^^ パパもママもそんなモンちゃんを遠目で眺(なが)めながら、気が気ではなかった。だが、モンちゃんは、めげなかった。積まずにジィ~~っと積み木を見続けて積まない日がひと月ばかり続いたあと、突然、何を思ったか、モンちゃんは積み始めた。そしてアレヨアレヨという間に、すべての積み木をものの見事に積み上げてしまったのである。お見事っ!! と、言う他はない出来映えだった。
 このように、めげないで正面からやり続けるのも大事だが、しばらく間合いを置いて、側面から別のやり方を考え、そのあと、またやり始めるというのも、一つのめげない方法なのかも知れない。^^

                   完


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