水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

めげないユーモア短編集 (17)意識

2022年10月19日 00時00分00秒 | #小説

 めげないといっても、二通りがある。意識してめげないのか? 無意識でめげないのか? である。前者は意識しているから、当然、目的の成就を願ってめげずに続ける訳である。一方、後者の方は、ただひたすら続ける行為だから、成就するか、しないかは二の次なのだ。後者の場合の例を一挙げれば、訳も分からず黙々と座禅を組む・・ような内容に違いない。はっきりとした目的がないからだ。^^
 とある寺院の禅道場である。一人の男が座禅を組みに寺へ訪れた。
「ほう! めげずに、また来られましたか…」
「いや! どうも、導師に肩を叩かれませんと肩の凝りが取れません…」
「ははは…凝りが、ですかな。どうも拙僧は張り薬の存在のようですなぁ~」
「いやいや、張り薬よりは、よく効きます」
「ははは…これはこれはっ! では、この度(たび)も手加減せずに叩きますかな…」
「いかようにも…」
 めげないで男が寺を訪れる訳は、肩凝りを治そうとする意識があったからである。
 精神というより、身体を意識した予想外のめげない継続も、あるにはある訳だ。^^

                   完


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