水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ②<21>

2015年01月24日 00時00分00秒 | #小説

「明日の晩、テレビ局の電話があるから、それまでに宜(よろ)しく頼むよ。会社の方は日があるから、まだいい」
『はい…』
 里山と小次郎はキッチンへ戻った。沙希代は夕飯準備に余念がなかった。
 小次郎は考えた。里山は会社のことは…と言ったが、どう考えてもテレビ局の話と会社の異動話は関連するように思えたのである。小次郎は里山を食わせていく自信があった。飼う飼われる関係での主客転倒の発想である。自分が稼いで、ご主人にはマネージャーで管理してもらい、里山家の家計へはガッポリ入れよう…という算段である。ただこれは、かなり理想的な展開になった場合であり、サッパリ! という可能性も多分にあった。しかし、時間的な余裕は、もうなかった。明日の夜にはテレ京の駒井から電話が入るからだ。ご主人に支社への出向で気苦労はさせられない…という点も考慮に入れれば、これしかない! という策だった。①人間語を話せることを言う→②人間語で話すVをテレ京へ送る→③家では異動話を内緒にし、会社で断ってもらう・・という順序策である。
 小次郎は出した策を翌朝、出勤前の里山に告げた。
「有難う。詳しいことは帰ってから聞くよ」
 大まかな話を小次郎から聞いた里山は、そう言うと家をあとにした。
 夕方、小次郎は沙希代に気づかれぬよう庭から外へ出た。内外の出入りで確保している秘密の通路である。小次郎はこの通路をホットライン・・と呼んでいた。


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