前回のブログで紹介しました、国会大包囲へ着て出かけた浴衣は愛知県の伝統工芸品有松絞りの国内生産のものです。
今は多くが中国製ということでしたが、小ロットのもので、地方のある呉服屋さんに問い合わせ、3点調達していただき、その内の1点を手に入れることができました。
私には大胆な柄ゆきでちょっとためらいもありましたが、夏の浴衣ですのでこれぐらいでもいいかな?と決めました。
生地は綿紅梅です。タグには「桜柳」と書かれていました。
取り合わせの帯は自作の夏帯です。
帯締めは友人が15年ぐらい前にプレゼントしてくれた茜染めのものです。
あまり使う機会がなかったのですが、浴衣には少し華やかな色のものが合うように思います。
幸田文さんの随筆集『月の塵』に戦争中の物のない時代に2枚の浴衣で4度の夏をしのいだ話があるのですが忘れられない心に残る話です。
「酷使されたゆかたはもうへばって、性がなくなって袖口と膝はもろもろともろけて、抜けてしまった。袖巾は半分にきりつめ衽をとってそれをつぎ裂にしたから、衽なしになった。長病で寝たきりの老父を、その身巾のせますぎる着物でみとるとき、膝をわるまいとして苦労した。老父は『その着物で平気でいるとは、おまえさんもまずは着物を着こなした、といえるかね』といたわってくれた。(中略)この破れゆかた一枚身にまとっていればこそ、裸ではないのだ、というギリギリいっぱい、いわば土俵ぎわのつっぱりみたいな、耐えかたがあった。いいゆかただったとおもう。流水に桜のもようだった。」
もののあふれた時代にはこういうことはありえないことですが、一枚の浴衣と人生の思い出が重なる深い関係性があります。
戦争はあってはならないことですが、ものの溢れかえる時代ももう終わりにして、よいものをとことん使う時代になってほしいと思います。
私もこの絞りの浴衣とこれからの夏を過ごしてゆくことになります。
擦り切れるまで着たいと思います。
さて、8月18日(土)は鶴川で「第2回アート鑑賞いろは塾」があります。前回もとても良い話が聴けましたが、今回も興味深い内容です。
武蔵野美術大学の特別講義を一昨年聴講した学生が、アート塾に参加してくださいました。とても嬉しかったです。
先日塾長推奨展覧会の「具体」展をゆっくり楽しんで観てきました。(国立新美術館・9月10日まで)作品を観ることは自分を見ることですから作品を通して発見があるといいですよね。
アート塾、まだ大丈夫ですので是非ご参加ください。私は浴衣で行く予定です。よろしければ夏着物や浴衣でお出かけください。
「モノ・語り」もご覧ください。