伽 草 子

<とぎそうし>
団塊の世代が綴る随感録

杉田水脈の意味

2022年12月04日 | エッセー

 暴言を例示するためウィキペディアから引用しようとしたが、その数の多さと醜悪さに途中で嘔吐を催した。ゆえに、極めつき3件に限ることにした。
〈保育所増設の要望の広がりと共に、LGBT支援の広がりについても「旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本」であり「夫婦別姓、ジェンダーフリー、LGBT支援などの考えを広め、日本の一番コアな部分である『家族』を崩壊させようと仕掛けてきました」と主張。「保育所や学童保育はコミンテルンや共産党などの日本を貶めようとする勢力が日本を弱体化させるために仕組んだ施設。保育所は子供を家庭から引き離し、洗脳教育を施す施設である」とし、学童保育についても「共産党の陰謀である」とし、保育所と学童保育について普及に反対である。〉
 明らかな事実誤認がある。コミンテルンは、1919年から1943年まで存在した国際共産主義運動の指導組織である。復活したという話は聞いたことがない。また、日本での保育所の創始は1890年新潟市で教育者 赤沢鐘美(アカザワアツトミ)・仲子夫妻が創設した「静修学校付設託児所」とされる。コミンテルンも日本共産党も存在してはいなかった。陰謀など企てようもなかった。
〈16年に行われた国連女性差別撤廃委員会では参加していたアイヌ民族衣装、チマチョゴリ、及び糸数慶子参議院議員を無許可で撮影し、「コスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」「目の前に敵がいる! 大量の左翼軍団」、参加者の記者会見では大勢に囲まれたとし「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」とブログで紹介、恥さらしと糾弾した。今年12月の参院予算委員会で、松本剛明総務相から指示されたこともあり、「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」とブログに書いたことに対して、撤回と当事者らに謝罪することを表明した。〉
 歴然たるヘイトスピーチである。純然たるクライムスピーチである。付言は不要であろう。ただ、撤回・謝罪は上司の指示。筋を通して辞めていれば見上げたものだが、所詮は権力亡者か。
〈15年7月、ネット番組・チャンネル桜において「同性愛の子どもは、普通に、正常に恋愛できる子どもに比べて自殺率が6倍高い」と笑いながら発言、更に「生産性がない同性愛の人たちに、皆さんの税金を扱って支援をする、どこにそういう大義名分があるんですか」とも発言。ツイッター上などで拡散、海外から批判コメントが殺到した。〉
 荒唐無稽な与太がどれほど日本の面汚しとなるか、考えたこともないのだろう。
〈「新潮45」18年8月号に「LGBTのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がないのです」などと寄稿し、国内外の人々、LGBT当事者団体、難病患者支援団体、障害者支援団体、自民党内外の複数の国会議員、大臣、弁護士、大学教授、芸能人など著名人からも批判が殺到した。国内外の複数のマスメディアからも批判的に報道された。〉
 反知性主義ここに極まれり、である
 杉田 水脈(すぎた みお)──渡り歩いた政党は、「みんなの党」→「日本維新の会」→「次世代の党」→「日本のこころを大切にする党」→自由民主党(安倍派)
 比例近畿ブロック(兵庫6区)選出の自民党所属の衆議院議員(3期目)、現在 総務大臣政務官である。朝日新聞は今月3日の社説で、
〈杉田氏を自民党に引き入れたのは安倍元首相やその周辺だ。過去2度の衆院選では、政党名で投票する比例中国ブロックの名簿で優遇され、当選を重ねた。岸田首相には杉田氏の処遇で、党内外の保守層にアピールする狙いがあったのかもしれない。しかし、このままでは、「多様性のある包摂社会」という主張も看板倒れになるだろう。〉
 と批判した。
 「保守層にアピールする狙い」もあったろうが、これは紛いもないゾンビの跳梁だ。7月の拙稿『国葬 いいかも』で危惧したアベ・ゾンビの純化されたトリックスターだ。それが杉田水脈の意味だ。侮ってはいけない。 
「トリックスターおばさんのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼女は政策を作らない、つまり生産性がないのです」
 因みに国会議員には一人につき年間2億円の税金が投じられている。 □