今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

自主避難判断の基準を考える

2016年09月01日 | 防災・安全

岩手県岩泉町のグループホームの洪水被害は、
前の記事に示したように、その避難判断の難しさが浮き彫りになった。

つまり、町は避難勧告を発令していなかったのだが、
その理由は、小本川の観測所の水位情報が、ずっと「氾濫注意水位」のままで、
この水位基準は「避難準備情報」に相当し、それはすでに発令していたからだ。
いいかえれば、避難勧告の発令基準である「避難判断水位」には達していないという水位情報のままだったのだ。
すなわち、町が非難される理由はない。
私は前の記事で、水位観測所の水位情報の基準がおかしいと指摘したのだが、
実際の観測点では(事故現場から4km下流)、川床がずっと下にあって妥当なものかもしれない。
ということは、上流の地域にとっては、この川唯一の水位観測所の情報はそのままでは使えないことになる。

これは重大な問題だ。

そもそも防災は、最終的には自主判断が求められる。

自主判断というのは、行政の指示を待つのではなく、行政と同レベルの情報によって同レベル判断をすること。
防災士である私自身、人々が自主判断できるように、防災情報の活用を訴えてきた。
河川増水に対するもっとも有効な情報が、国交省が出している河川水位情報で、
これは10分間隔で水位をネット配信している。
このサイトを観ていれば、自分で川の状況を見に行くというそれ自体が防災に反する行為をしなくてすむからだ。
ネット配信なので、たとえ停電中でも、スマホやタブレットのバッテリ駆動で確認できる。

この河川情報に、雨量の水位(過去の水位は河川水位に反映されているので、
今後の雨量傾向をレーダーナウキャストの動画でさぐる)を合せることで、水位の変動を予測できる。
この2つが自主判断の基準になるのだ(あと居住地域の土砂災害の危険性も事前に把握しておくこと)。 

つまり自主判断には、判断基準が必要で、その基準に水位情報が必須なのだ。
その水位情報が信頼できないとなると自主判断の基準が動揺する。
だから重大な問題なのだ。

なら、どうれすればいいか。
岩泉町のグループホームを基準にして考えてみよう。
 小本川下流の水位観測所で、17時すぎには「氾濫危険水位」に達した。
その時、大雨が続いているから、今後この川はさらに増水すると予測され、実際にそうなる。

「氾濫危険水位」は「避難準備情報」の発令基準で、
その情報の意味は、障害者など避難に時間を要する人は率先して避難を始めることを促すものだ。
つまりグループホームの入所者に該当するものだ。
実際、17時半には現地で 浸水が始まっている。
なのでこの時が、避難の最終タイミングであったことになる
(入所者の状況とスタッフのマンパワーを考えると、
現実にはこれでは遅すぎで、もっと前に避難を開始するしかなかった)。
すなわち、水位情報はそれなりに使えたことになる。

言い換えれば、健常者対象の「避難勧告」は、そもそも入所者の避難判断には使えない。
それを待っていては遅すぎるのだ。
「避難準備情報」「氾濫危険水位」を判断基準にする。
そして今回のグループホームのように、川べりにある所なら、
河川の状況はリアルタイムに判るわけだから、より迅速な判断も可能であったはずだ。

他所の災害被害は、他山の石として、自分の防災の参考にする。
 被害者の死を無意味にしないためにも。