博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大軍師司馬懿之軍師聯盟』その4

2017年07月20日 | 中国歴史ドラマ
『大軍師司馬懿之軍師聯盟』第19~24話まで見ました。

時は進んで建安24年(219年)、関羽が于禁を破って樊城を包囲し、天子のいる許都を窺うという危機的な状況となります。これに対応するために、曹操は鄴城の守りを曹丕に任せて親征。司馬懿も行軍司馬任じられて従軍することになります。


ついでに司馬懿の妻でカンフーマスターの張春華も夫の護衛として従軍します (^_^;) 演じているのはこれまた古装でお馴染みの劉濤。武芸に秀でているという点は『琅琊榜』の時と一緒ですが、性格とか演出はややコミカルになっています。

更に曹植と楊修も従軍しているわけですが、ここで楊修の最期を飾る「鶏肋」のエピソードが挿入されます。楊修は曹操に、天子を許都から鄴城に移して関羽の攻撃に備える一方で、天子と魏王が一箇所にいるのは、魏王が漢の朝廷の掣肘を受けることになるのでよろしくないと、魏の都を洛陽に遷すことを提案。これは対関羽防衛策と見せかけて、その実曹丕を鄴城に留めて曹操と曹植を洛陽に移し、後継者争いを曹植に有利なように進めようという一挙両得の策なのでした。

で、「鶏肋」の合図を洛陽遷都のゴーサインが出たと早合点し、その噂が全軍に広まったことで曹操が激怒し、楊修が処刑という流れに。この「鶏肋」の話は、本来同年の漢中攻防戦の時の挿話なのですが、樊城包囲戦で曹操が関羽に恐れをなして遷都を考えたという話とミックスしてうまくアレンジされています。

ライバルの最期を見取った司馬懿は、洛陽遷都の対案として孫権との同盟を提案。「じゃあ言い出しっぺのお前が何とかせい」というわけで、妻とともに呉の宮廷へ。


孫権を演じるのは『人民的名義』の趙東来役でお馴染みの丁海峰。京州市公安局長から出世されたようで何よりですw

ここで張昭と論戦したり陸遜と親交を結んだりしてますが、このあたりは将来のライバル孔明の赤壁前夜の大論戦を司馬懿にスライドさせてるんでしょうね。この作品、こういう『三国志』へのリスペクトというかアレンジがうまいです。

そして呉との同盟が功を奏し、本作で一度も登場せぬまま麦城でナレ死を遂げる関羽。しかし魏での関羽の葬儀は丁寧に描写し、存在感は醸し出しています。このあたりの演出もうまいです。この前後に曹丕がようやく曹操から太子に指名。死期を悟った曹操は死んだ楊修の提案通りの洛陽への遷都を最後の仕事と定めますが、そのまま洛陽で病没。今際の際に曹植に「お前は良い君主にはなれないが、良い詩人にはなれる。ワシはお前に誤った期待をしてしまった」みたいなことを言い残しています。曹丕と曹植、特に曹植は毒親に振り回された感が半端ないですね。

しかし太子の曹丕は遠く鄴城で留守を守っています。洛陽には曹植がおり、死の間際に長安から呼び寄せられた曹彰も洛陽へと進軍中。これはまずいと棺をさっさと鄴城へと移そうとする葬儀委員的な役回りの賈逵&司馬懿ですが、結局間に合わないまま曹彰が到来。


「曹植を後継に擁立してあなたは軍権を握ればよろしい」という丁儀の言葉に乗せられ、曹丕派の賈逵と司馬懿を捕らえる曹彰。しかし魏王の印璽は一足早く張春華の手に託されて鄴城の曹丕のもとへ。

この場面で曹植は、曹彰の到来を恐れて曹操の棺をとっとと鄴城に運び込もうという賈逵と司馬懿の提案に「落ち着いて父王を弔うことすら許されないのか!」と涙ながらに反対し、丁儀と曹彰のクーデター計画には「もう兄が太子ということで決まっている」と反対し、曹彰による賈逵と司馬懿の拷問も阻止しようとしてますが、この人、三兄弟の中で一番まともな感性を持ってますよね……

結局曹植は曹彰を酔っ払わせて寝入った隙に令牌を盗み出し、賈逵を解放してやります。そして自分は居残った司馬懿と酒盛り。そして事態を知った丁儀があっさり曹彰擁立に切り替えて司馬懿と曹植を処刑しようということになり、「おい、ちょ、待てよ、それオレの弟……」と事態の急展開についていけない曹彰。 そうこうしているうちに、印璽と母后の命により魏王位を継承した曹丕を奉じる夏侯惇の軍隊がやって来て万事休すに。夏侯惇はここで初登場です。

ということでこのドラマ、戦争シーンをやっているようで実は大してやっていないかったりと、言うほどお金をかけてないのが見て取れるわけですが、とにかく画面から高級感を醸し出すのがうまいんですよね。赤壁のぶったぎり具合とか関羽のナレ死なんかを見てると、方向性としては日本の大河の『真田丸』とか『直虎』に通じるものがあるのですが、日本の大河に足らないのはお金をかけずにこの高級感を感じさせる手法なんじゃないかなと。NHKの大河撮影班は中国のドラマ制作会社に研修に行くべきですね……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする