先週末はクネの辞任を要求するデモが、全国で200万人レベルに達したそうだ。検察も新たな「容疑」を見つけ、野党は大統領弾劾に向けて着々と準備している。
こういう事態になればクネも当然辞めるだろうと日本的な感覚で思っていたが、よく考えれば自分から辞めるわけがない。辞めた瞬間に、大統領の不逮捕特権が使えなくなって、逮捕されることが確実だからだ。なにしろ「容疑者」なのだから。
しかし考えてみると、クネの「容疑」が果たして何なのか、よく分からない。チェ・スンシルらの職権乱用や強要の「共謀」とのことだが、そもそもチェは正式な役職に就いておらず「職権」など無かったはずなのだから、これを乱用したというのはどういうことか。大統領と親しいということでチェが横暴に振舞うのを、周りが勝手に許していた、ということじゃないのか? それに、チェが強要やら詐欺をやったのはクネが「共謀」したからだ、という証拠や裏付けはあるのだろうか? どう考えても、チェが大統領の威光を勝手に利用して、それを許すという社会的背景が存在したことが、そもそもの問題じゃないかと思うのだが。
もちろん、今回の事件が軽いものだというわけではない。要するに問題なのは、クネが国家機密を私人に漏らしたこと、クネが他の大多数の韓国人と同じように「公」の概念を理解しておらず、国家の問題を私人に相談するような無能であったこと、の2点である。このことに尽きると思うのだが、今の韓国の状況を見ていると、何かが非常にずれている。
普通に考えれば、大統領自らの国家機密漏洩は大問題なのだから、その点で大統領を弾劾する、と流れになるのなら理解はできる。しかしそうならないのは、やっぱり韓国は普通の文明国ではない、ということだ。「国民感情」による裁きが第一であり、法律などはその後付けとして使用されるものに過ぎない。自己満足のロウソクデモをどれだけやったところで、この国が先進化したことの証明にはならず、相変わらず遅れていることを示しているだけだ。
<2016年11月29日 21:00 追記>
なんと、クネが任期終了を待たずに辞任することを表明したのだそうだ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161129/k10010788261000.html
ついに逮捕されることを覚悟したのだろうか? 「与野党が議論して、国政の混乱と空白を最小化し、安定して政権を移譲する方策を作ってくれるなら、それに従って大統領職から退く」とのことだが、確かにそれが良い気もする。しかし韓国の与野党はどうせすぐに妥協などしないだろうから、ただの時間稼ぎという可能性も高いが。
やっぱり、クネに少しでも「愛国心」が残っているなら、首相に全権を委任してさっさと辞任することがよかろう。もちろん自分は逮捕されることになるが、韓国の政治的空白を少しでも早く埋めることができるからだ。
それをやらないということは、クネには語るべき「愛国心」など最初から無かったということである。