企業に身上を隠して潜入するドキュメントは下手なミステリーより面白い。著者の最大の目的はユニクロが如何にして一介の町の洋服屋から日本の衣料産業のトップ企業に上りつめ、更に海外への進出をはたしたかを知りたかったと言う。ユニクロはリーズナブルで着易くて決して嫌いではないが、その裏には身を粉にして働く人たちがいる。カリスマ経営者は押しなべて独裁者が多く下々の社員は発言権を持たない。同じ事を二度と言わせるなが口癖の社長。儲けに繋がらない事はやらない。何を持って経費削減かといえばまず人件費だと言う。労働供給源は主婦と学生アルバイトでありユニクロの強引なやり方を断固と拒否できるような立場にない人たち。しかし著者は全てに気を配りユニクロの一員として一生懸命働いた様子に身上を偽っていたとしても許せる気がする。政府の言う働き方改革はまずこうした企業に注目しなければならないとつくづく思う。
