Mrs.Uponwaterのブログ

日記です♪

チェリー・イングラム ー日本の桜を救ったイギリス人ー 阿部菜穂子著(岩波書店)

2016-04-02 09:06:35 | 日記
満開の桜の下では多くの人が桜を楽しんでいます。外国ではアメリカのポトマック河畔の桜は有名ですが、イギリスに日本の桜をもたらした園芸家、コリングウッド・イングラムがいた事は全く知らなかった。イギリスでは八重桜が多くそれが本流と思っていた。イングラムは1902年(明治35年)オーストラリアからの帰路長崎へ立ち寄り桜の魅力に捕われた。三度日本を訪れ彼は多くの穂木(台木の上に接ぐ若い枝)を手に入れ、ケント州べネンドンに桜園を造った。日本で消えた”たいはく”(一重の大輪、花弁は2.5cmと大きく白色)を再生させ、逆輸出までしたと言う。桜には野生種と栽培種があり野生種は以外と少なく9種類ぐらい(ヤマザクラ、オオシマザクラ、カンヒザクラ、マメザクラ…など)しかない。日本に多いのは栽培種で400種もあるそう。かけ合わせて出来た種に勝手に名前をつけて世に出していたらしい。今日の日本で一般的なのは染井吉野でしょう。これは成長も早く花つきがよく、まず花が咲き揃って樹全体を覆い豪華で見る人の心を掴みます。イングラムは殆どが染井吉野に凌駕されていく日本の桜を憂い多様種も根付かせたそうです。
「日本にとって桜は文化であり生活や芸術に取り入れてきた1000年以上の歴史がある。それ故一つの価値観しか認めない社会は、破滅に向かう脆弱なものであり、多様にものを考える事こそが大切」と著者は結んでいます。イギリスに”桜守”がいた…本当に”桜”の多くを学んだ本です。折りしも今日は国立遺伝学研究所の年に一度の桜の公開日ですが、多様性が集まっているのでまだ四分咲きとのこと。かの”たいはく”は此処にある。