Mrs.Uponwaterのブログ

日記です♪

金閣炎上

2010-01-11 10:15:44 | 日記
水上勉著「金閣炎上」を読んだ。水上勉は「同郷の友人、林養賢の鎮魂のためにも実証性の濃い作品として彼に奉げたい」と書いていますが地道な調査による信頼性のあるノン・フィクションだと思った。吃音の障害や貧しさに苦しめられた友人に対する、もしかしたら著者と同じ境遇だった主人公に対する温かい眼差しを感じ感慨深いものがあった。戒律の厳しい禅宗でありながら観光収入により住職は晩酌を欠かさず、執事、副司は高収入を得る。賢を装い愚を装いして建前の本道からそれて生きるのが禅僧の大半、目の前にある現実と彼の哲学がぶつかり金閣寺に火を放った。これが事実だと私は思いました。新聞記者が住職に何回か取材を試みたが拒み続けたそうです。唯一人産経新聞京都支局の福田定一記者、後の司馬遼太郎には面会したと言う。水上勉がその時の事を司馬遼太郎に聞いた話の中に寺の庫裏の壁に掛けてあった黒板に白墨で「また焼いたるで」と書いてあり驚いたと言う事です。金閣寺にはまだもう一つ暗部があったのでは…と言っています。
三島由紀夫の「金閣寺」はもう随分前に読みました。耽美主義が全編にみなぎりハンディを背負った主人公が金閣の美の魔力に魂を奪われた、三島由紀夫独特の世界で面白かった。
水上勉が「金閣炎上」を書いたのは三島の「金閣寺」の数年後です。やはり同郷の友人林養賢に奉げたい思いは強く深いものだったと感じました。