静岡赤十字病院、日赤は今はとてもきれいな病院になりました。
でも、私にとっては長い間「恐い病院」でした。
小学校4年生の時、近所に住むとなりのクラスの男の子が
学校を休むようになりました。
「血液の病気で、日赤に入院しているらしい。」という噂が広まり、
白血病という病気があることも、その時初めて知りました。
ある日、授業中に隣りのクラスから全員の泣き声が聞こえ、
その子が亡くなったことを知りました。
小学校4年生の私にとっては、それは大変ショックな出来事で、
それ以降、日赤の前を通るのが恐くて恐くてたまらなくなりました。
当時の日赤は、かなり古い建物で、とても暗い印象を受けました。
静岡の中心地にありながら、昼間でも薄暗い病院の外壁には
赤十字のマークが、妙に赤く浮かび上がっているように見えました。
ここであの子は死んでしまったんだ・・・と思うと
子供心に、あの赤十字のマークが死の世界の入り口に見えたのだと思います。
あれから時は流れ、今、病院は見違えるほどきれいになりました。
ところが、駐車場の片隅に、私があれほど恐がったあのマークが
記念に保存されていたのです。
そう、このレンガのような外壁。
私が、目を背けるようにして前を通っていたあの赤十字のマーク。
こんな言葉が添えられていました。
昭和8年に開院し、静岡の大火や戦災にも負けずに生き残った病院。
その古い建物に浮かび上がる赤十字のマークは、
子供の私にとっては恐怖のシンボルでしかなかったけど、
多くの市民にとっては、安らぎの赤十字だったんだなぁ・・・。