昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

なるほど!と思う日々(221)想像力の欠如

2011-12-01 04:36:09 | なるほどと思う日々
 当面の政治上の難問<普天間問題>に関し、エースとして送り込まれた田中聡沖縄防衛局長の発言が問題とされ、彼は即刻更迭となった。
 
 政府が普天間移設に関する環境影響評価書の提出時期を明記しない理由を問われ、田中氏はオフレコと断った上で、「これから犯す前に、犯しますよと言いますか」と発言したことが、地元の琉球新報に暴露されたのだ。
 これは、マスコミというか、世相の反応を考えない発言で、まさに<想像力の欠如>と言う他はない。
 オフレコと言ってみたところで、この高級官僚の、<沖縄侮蔑><女性冒涜>にもつながる本音を見過ごすわけがないではないか。
 そのくらいのことにこれほどの男が思い及ばないのであろうか。

 思い起こすのは16年ほど前、宝珠山防衛施設庁長官の<首相の頭が悪い>発言だ。
  沖縄の米兵暴行事件をきっかけに当時の大田沖縄県知事が米軍用地強制使用の代理署名を拒否している問題に関し、「首相の頭が悪いからこうなる。法治国家としての品格に疑問を持たれかねない。法律に基づいて淡々と行動してほしい」と述べて、当時の村山首相から罷免された。
 つまり担当する高級官僚にしてみれば、(強制使用を認めるという)機関委任事務は、(政治家個人の考えとは別人格で行動すべき)だ。知事も首相もこれを無視するなら、法治国家の体をなさない、というわけだ。これが、いわゆる官僚の仕事であるという自負であり本音なのだ。
 
 問題は、最近米国務省のメア日本部長の<沖縄はゆすりの名人>発言や、田中氏の発言にも共通する<世論に配慮する想像力の欠如>なのだ。
 だいたい、優秀な官僚と言うのは、感情抜きで、政府の決めた政策を法律に基づいて粛々と行うべきという信念に埋没している。

 ナチのユダヤ人大量殺戮を実行したアイヒマンはエルサレムの法廷で述べている。
「自分はひとりの技術者として、与えられた課題に対してもっとも適切な解答を提出しただけなのだ。世界中のすべての官僚がやっているのとまったくおなじことじゃないか・・・」と。
 すべては想像力の問題なのだ。僕らの責任は想像力の中から始まる
。(村上春樹<海辺のカフカ>より)

 今や世相の感情を無視して政治を行うことは不可能である。
 官僚をコントロールする政治家の<想像力を付加する>力量が問われるところである。