昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「ある倉庫係の死」(5)

2018-12-29 01:27:30 | ある倉庫係
 小説「ある倉庫係の死」(5)
 
 そして、初出勤の1月8日月曜日、9時を過ぎても石山からまだ連絡がない。
 ・・・どうしたんだ、新年早々飲んだくれているのだろうか?・・・       

 10時ごろ、彼のお姉さんという人から電話が入った。
「1月6日土曜日の未明。午前1時半ごろ、家の近くの路上で車に轢かれました」
 
「2時に病院に運ばれ息を引き取りました。仙台市の叔父のところへ直ちに移送され火葬にふされ、今日の12時から葬儀を執り行います」という内容だった。

 ・・・彼が死んだ?・・・
 ボクは一瞬声を失った。
 しかし、立場上悲しんでいる暇はない。
 やることがある。

 とは言っても、今から出かけても葬儀には間に合わない。
 折り返しお姉さんに電話をし、ご冥福をお祈りし、葬儀場と喪主を確認、弔電を社長名と社員一同で打ち、その後の手続きについてはお姉さんを窓口とし、帰京されてから処理することにする。

 社長に報告した。
「年末に一緒に飲んだとき、酒をやめろとは言わないがほどほどにしろよ。散髪はした方がいいなと言ったら、翌日にはさっぱりして来たのに・・・」
「・・・」
「死んでしまったのか。あっけないものだね。時間から推測すると、おそらく酔っぱらっていたのが原因だろうが、いかにも彼らしいね・・・」
 社長の言葉が、彼を採用した是非の結果責任を問われているようで、心がまた乱れる。

 ─続く─

 評論家として著名な西部邁が自殺したという。
 
 なぜ、彼が自殺を?
 最愛の奥さんを亡くしたことが原因らしい。
 
 遺書があり、
 ・・・その悲惨な死にざまを見て、同じ悲しみを愛する娘にさせたくない・・・というのが原因のようだ。
 孤高の哲学者であり毒舌の評論家でもあった彼も、家族愛に生きた人だったのだ・・・。


  




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