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彼は興味津々という目を見開いて、どかっとボクの鼻先にあぐらをかいた。
狭い三畳に熱気とすっぱい臭いが充満した。
どうしようか、相談するのは止めるべきだろうか、逡巡する気持ちが湧いたが遅かった。
「なんだよ。もったいぶるなよ!」
藤原は息を吹きかけてきた。
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やむなく奥さんとの経緯をばらすと、静かに聞いていた彼は言い切った。
「そういえば、最近奥さんのキミを見る目がおかしいと思っていたんだ」
いきなり藤原ワールドに入ってきた。まずい!
「変なこと言わないで下さいよ。だから嫌だったんだ。藤原さんにばらすのは・・・」
「それで? どうしたんだ? そのまま帰ってきたのか? 続きは?」
矢継ぎ早に迫ってくる。
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「それじゃあいったいキミはぼくに何を相談したいんだね?」
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彼はまじまじとボクを見つめた。
「ともかくキミは女の気持ちが分かっていないね。ぼくなら奥さんの望むところを察知して叶えてあげたね」
「・・・」
「もっともキミは真面目だからその気になったら、やばいところまで踏み込んじゃうかもな。熊手持ちだけにしてよかったのかもね。相手には旦那もいることだし・・・」
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藤原が部屋を出て行った後も、この言葉はボクの脳裏に居残り続けた。
─続く─
「日展書道、入選を事前配分、有力会派で独占」
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新聞一面のトップで報じられた。
・・・あり得ることだ。大新聞の一面で大げさに取り上げられるほどのことでもないのに・・・と思った。
「F先生の紹介でK先生のチェックを経ないと出展なんかできないのよ。お金がかかるんだから・・・」
身内に体験者がいて、お花やお茶といっしょで、日展の書道も家元制度みたいなもんだと、昔から思っていたから。
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