昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(285)三鷹市民大学・日本の文化(日本哲学の創造)(2)九鬼周造

2018-09-16 05:05:39 | 三鷹通信
 謹厳実直、堅物の西田幾多郎と比較すると、同じ京都学派の哲学者九鬼周造は正反対の遊び人、プレイボーイだった。
 なんといっても、彼の経歴がスゴイ。
 父は文部官僚で男爵の九鬼隆一。母は花柳界出の波津子。波津子は父親の部下、岡倉天心と不倫。
 
 激怒した父は彼女を精神病院の松沢病院に閉じ込めたという経歴を持つ。
 
 東京帝国大学を卒業した周造は、ドイツ、フランスに足かけ8年間留学。
 ドイツではハイデッカーに師事したが、パリに移ってからは本性発揮! 
 <彼の書いた和歌から>
 ・・・ドビッシーが夢みるごとき音色より巴里の空の春ひろがる・・・
 ・・・シャンゼリゼの並木 黄色に染まって散りゆくマロニエの葉・・・
 ・・・ひと夜寝て女役者の肌にふれ 巴里の秋の薔薇の香を嗅ぐ・・・
 ・・・ドンン・ジュアン(ドンファン)の血の幾しづく身のうちに流るることを恥ずかしとせず・・・
 ・・・ふるさとの「粋」に似る香を春の夜のルネ(踊り子)が姿に嗅ぐ心かな・・・
 ・・・母うえのめでたまひつる白茶いろ流行(はやり)と聞くも憎からぬかな・・・

 ちなみに、彼は祇園の芸妓を妻にしている。 

 「ここで、フランスの<シック>から日本の<粋>に思いを馳せる」
 *いきの民族性──西欧同類文化との対比
 *いきの精神的要素──媚態、意気、諦め
 *いきの身体的表現──言葉遣い、姿勢、衣装、身体つき、顔と表情(化粧、髪型、着こなし、素足と手のしぐさ)

 *異性との関係が<いき>の根本要素。<いきごと>といえば<いろごと>。<いきな話>といえば異性との関係になる。
 *<つかず、離れず> 媚態のツボは、ぎりぎりまで相手に接近しながら、しかも、相手とひとつになってはならないというところにある。
 *<意気>・・・自分への誇り。すなわち<意気地>。江戸前らしい張り切り、勇ましさ。<格好いい>品格がなければならない。
  
 「若い者、間近くよってこの俺様の面構えを拝み奉れ、やい」
 *<諦め>──執着を断つこと。垢抜けていなければならない。あっさり、すっきり、スマート。
 *恋にとらわれるのではなく、恋とたわむれよ。縛られることのない自由な浮気心。
 *<いきな言葉遣い> 言葉をやや長く引いて発音し、それから急に抑揚をつけて言い切る。甲高い高音よりも、ややさびの加わった少し低めの表現。
 *<いきな姿勢> 姿勢を軽く崩す。どっちつかずの不安定な姿勢をとる。
 *<いきな顔と表情> 丸顔より細おもての顏。流し目。口の動きのかすかなリズム。唇の重要性を際立たせるのが口紅。


 以上、東大のような西欧哲学の輸入ものでない、京都という日本古来の都市に生きる京大の、日本独自の哲学を開発した両極端のふたりの哲学者について、大久保喬樹東京女子大名誉教授は、休憩時間にも質問時間にも食い込んで、ほぼ1時間40分、格好良く、精力的に熱弁を振るわれました

 
 

 




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