昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説「レロレロ姫の警告」改定版

2018-01-04 06:10:37 | 小説「レロレロ姫の警告」改定版
 「身勝手な人類は自然界の癌よ!」
 
 3年前、自然界からの目線で「レロレロ姫の警告」という本を出版させていただいた。
 しかるに、人類の身勝手さは留まるところをしらない。
 ここに改めて内容を精査し、加筆し、グレードアップする必要を感じた次第です。
 皆さまの率直なご批判を賜ればと思います。      


 「レロレロ姫の警告・改訂版」
 
 (1)変身

 わたしが生まれてちょうど10年目の、3月11日の午後2時半を過ぎたころ、パパの車でママも一緒に五日市街道を走っていた。
 いつものように後部座席にベルトで縛り付けられて・・・。
 
 最初の内はこうされることが理解できなかった。
 赤ちゃんの時は揺れに対応できないからチャイルドシートなるものにはめ込まれて身動きできないのもやむを得ないと思うけれど、10歳にもなってスイカじゃあるまいし、いくら動きの鈍い私だって少々の動きに座席から落ちないように対応できるわよと、いやがってもがいていたら、「ほら、じっとしていなさい! 急停車したら反動でシートから転げ落ちるでしょう! 特にあなたは普通の子じゃないんだから・・・」
 ・・・普通の子と違う・・・
 この言葉はわたしの自尊心をいちばん傷つける。
 
 たしかにわたしは10歳になっても、歩きはペンギンみたいによちよち歩きだし、言葉だって満足にしゃべれない。
 ・・・レロレロ・・・と口がもつれたような言葉を発するだけだ。
 まだオムツをしているし、見かけからすれば普通の子の2歳にも劣るぐらいの重度の障碍者だ。
 でも、自尊心は成長しているのだ。
 その思いを言葉で表現できないことにイライラする。
 ・・・言葉が使えないということは、人間として認められず、犬や猫並みにしか扱われない・・・
 
 
「もし衝突事故に遭ったりしたら、フロントガラスを突き破って外に放り出されて死んじゃうんだから」
 なんて言いながらママはわたしをむりやりベルトで縛り付けちゃう。
「あなただけじゃなくて、ママもパパも車に乗るときはシートベルトをすることが法律で定められているんだから・・・」
 ・・・だったら、そんなにスピードを出さなければいいじゃない。ゆっくり走ればわたしだって転がり落ちたり外へ放り出されたりすることもないでしょう。むしろ法律で定めるなら、車のスピードを低く抑えるべきなんじゃないの?・・・
 
 わたしはそう言ったつもりだったのに、ママには・・・レロレロ・・・だけしか聞こえなかったみたい。
「いつものことだけど、レロレロしか言わないんだから・・・」とぶつぶつ言っただけだった。

 ─続く─  







最新の画像もっと見る

コメントを投稿