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その昔、一緒によくゴルフをやっていた頃のことだ。
月例で、初めてパートナーとなった、ぼくらより少し年下の実業家の方の安定したショットを、彼は最初のうち褒めちぎっていた。
「ドライバー、飛びますね」「ナイスアプローチ・・・」ところが、「だけど・・・」と来た。
「パターが残念ながらお上手じゃないですね」と。
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だんだんエスカレートしてきて「不安で見てられない」いままさにパットに入ろうとしている相手に「このパットが問題ですね」とダメ押しする。
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相手は恰幅のいい、何事も受け入れる包容力のある円満なお方だった。
友人は次々と老医師の経験談を聞き出していった。
そして、調子に乗って、こともあろうに「何人か殺してしまったりとか・・・」と言ってしまった。
さすが本人も気がとがめたとみえて、後日手紙でお詫びしたと言っていたが。
折から江藤総務長官がオフレコとはいえ、日本の朝鮮統治時代に触れて「日本もいいこともした」と発言し韓国の激怒を買い、辞任に追い込まれたと言うニュースがあったばかりだった。
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・・・幼い私は、総合病院の眼科診療室で、チョビヒゲの部長先生の前に座っている。
部長先生は、例の石原式色覚検査表をいくつか読ませた後、目に軟膏を塗りつける細い棒を私に渡すと、点描図表の一点を指し、そこから線をたどってみせるようにと告げた。
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迷いながら点をたどる棒の動きを見ながら、先生は私の後ろに控えていた母に向かってこう言った。
「ほら、でたらめでしょ」この時の、屈辱感と憤りが身体の中で爆発するような感覚を、私は今も生々しく思い出すことができる。母の返事の声が、涙でつまっていたことも。
また色覚障害の話? 違う。
医者のことばが、どれほど簡単に人に深い傷をおわせるか、自戒したいのだ。・・・
お医者さんにしろ、教師にしろ、人様に頭を下げることがほとんどない職業の人には、往々にしてそういう言動があるような気がします。
─続く─