疲れ果て、昼飯食う気力もなく、ただぼぉーっとしてた午後。だらだらと眺め始めたのは、薪割り機の紹介ページだった。
チェーンソーで切るだけはなんとか済ませたが、よしっ、何本かでも割っておこう、と持ち出した斧。振り下ろせど、打ち込めど、軽く弾かれるばかり。これもダメ。こっちも割れない。ウソだろ?ぱかんぱかん割れるはずじゃないのか。河川敷の支障木は柔らかいんだぜ。燃やせばすぐに灰になる。そんな柔な薪材にこんな手を焼くなんて!ダメだ、もう。歳だ、限界だ。薪割り機の導入しかないっ!
どれにする?エンジン機で破砕力7トン以上、高けぇぇぇ!どれもこれも10数万だぜ。かすかすの預金を吐き出せば買えないことはないが、今年は車の車検もあるしなぁ。一番安いやつにするとして、・・・
購入のための資金繰り、真剣に考えちまった数時間。
欲しい、買うっきゃない。だって、もう無理だから。斧で割れないんじゃとても太刀打ちできないじゃねえか。この徒労感が何よりの証しだぜ。ジジイ、無理すんな!って。
でもなぁ、・・・ぎりぎり即ポチは思いとどまった。この薪材でシーズン終わりだしな。すでにナラ材はたっぷり準備できてる。いずれ買い入れるとしても、来春だろう。辛うじて自制心が働いた。
そうだよな、全部が全部割れないってわけじゃなし、手強い奴は楔で頑張ってきたじゃないか。この酷暑、蓄積する疲労、そして、熱中症!秋になればこんな不甲斐ない有様からは抜け出せるはずだ。今が辛いなら秋まで放ったらかしておいたっていいんだし。やれやれ、ようやく真っ当な判断力が戻って来たぜ。
あまり頑張らずに、割れるものだけ割っておこうか。翌日、少し元気回復、ゆっくり作業再開。
ほらな、割れない木の種類は限られてるんだぜ。太くたってスパッと行く奴はある。1,2回斧を打ち込んでダメなら、さっさと諦めて、楔に回す。だるさでスローモーションの動作、いいの、いいの。昨日みたいに熱中症もどきに行き付かぬよう、ゆるゆると割った。
2日かかって、どうにかすべてに斧を振り下ろし、割れるものは割り切った。頑強に拒んだ奴は32本。こいつらは楔で割ろう。楔が素直に割って入れるように、チェーンソーで深めに切れ目を入れ、ハスクバーナの3キロハンマー、頭上に振り上げるのも辛いが、堪えろ、我慢だ。エイッ!
一発必割ってわけにゃもちろんいかん、何度も振りかぶっては振り下ろし、どうだい、割れるじゃないか。まっ、節がさらにねじ曲がった性悪もあるが、そんなのはそのまま乾燥させりゃいいのさ。今回の支障木の利用は、来年以降だ。無理にして細かく割る必要なんてない。
そうだよ、楔がある、割れなきゃ丸のままで乾燥させたっていい、今すぐ使う薪じゃないんだし、なんて、頭を冷やせば、冷静な判断ができるんだぜ。薪割り機にへばりついてた思考が、やっと解き放たれた。いやいや危なかった。まだまだ不要な機械に大枚つぎ込むところだったぜ。
体調不良、調子絶不調でものごと判断しちゃダメだってことだ。気持ちが萎えていると、すぐにものに頼りたくなる。
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