ステージおきたま

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下北沢だ!スズナリだ!『三日月に揺られて笑う』たにまち金魚だぁぁぁ

2010-03-02 21:09:41 | 劇評

さて、下北沢だ、スズナリだ。いや、いいなぁ、この雑然としたエネルギー、圧倒的な若さ。さらにスズナリの場末感。下が飲み屋やスナック長屋って、もう、僕の生まれ育ちそのものだもの。まっ、ここでも不釣り合いなおっさんには違いないんだけど、不思議と僕の居場所はここだって感じる。そう、いつか下北沢デビューするぞってかい。いやいやシアターコクーンデビューだってしたいけど。

 

 で、なにやってんだ?スズナリ。おいおい!知らんのかい。そりゃ仕方ない。山形のド田舎から年に一度のお上りさんだもの、都会の演劇シーンがどうなってるかなんて知るもんか。そりゃコクーンみたいな大劇場ならわかるよ、でも、下北沢じゃね、スズナリじゃね。まっ、僕の場合、若い人たちの芝居見るのに、スズナリが一番くつろげるってこと。だからどんな劇団が何やってるかなんて関係なくチケット買っちゃうわけ。

 非常階段を上がってチケットもぎってもらって、男便所と女便所が暖簾一枚で仕切られてるトイレを済ませて、客席へ。おおーっ!装置かなり本格的!!いいよぉぉぉ、これ期待できるよぉぉぉ、と嬉しくなる。小劇場でこうやってしっかり装置作ってる芝居で失敗ってまずないからね。田舎の観光地、遊覧船の受付事務所兼休憩所?って設定だってことは芝居が始まってわかった。作りもしっかりしてるし、空間の切り取り方も下手に斜めに張り出す形で変化を付けている。上手部分の室内と下手部分のベランダ部分に段差を設けているのも、悪くない。

 芝居の方は、この遊覧船を運営している仲良し?三姉妹とその会社のオーナーの中年男性、それと遊覧船の運転手、船も運転っていうか?航海士?大袈裟だろう、わからん、兼雑用係の若い男性が織りなす愛憎劇だった。オーナーは妻子のいる身だが、なんと三姉妹すべてと関係を持っている。その日は、昼間長女に真昼の情事を誘われ、夕方からは末娘とイタリアンレストランでデートし、夜は次女と居酒屋に。なんとも凄い世界だ。三人は自分だけが愛人だと信じ切っている。もちろん、奥さんよりも愛されていると。そして、そんな生活がなんと!20年!!も続いている!!!ちょっと待て、てことは三女が高校生で関係を持ったとして37歳か8歳??えっ、?!も一つええーっ!?でもまあ、劇作家のご愛敬ってことで許そう。この不思議なあり得ない状況設定も取りあえず見過ごそう。だって、役者たちなかなかいいんだもの。ついに耐え切れなくなった男が、20年間の腐れ縁?を精算しようとする、そのどたばたが実に可笑しい。必死で女たちに謝罪しようとする男。不倫そのものが存在しないかのように振る舞う女たち。良くできたせりふのやりとりが笑いを誘う。可笑しさの中にじわりと女たちの得たいの知れなさが忍び込む。

 そして、ついに破局。仲良し三姉妹は一言も口をきき合わない絶縁状態に。そして失踪。心配する青年の前に突如現れた三姉妹は、また元のままの仲良し三姉妹になっていた。その秘密は、三人仲良く、男を湖に沈めたからだった。仲良し三姉妹は、湖面に浮かぶ三日月を見ながら、次の犠牲は青年かも、と朗らかに?不気味に?笑い合う。ってどうこの不気味な、というより不思議な感覚の芝居。

 カーテンコールで初めて聞いてなーるほどだった。これ土田英生の書き下ろしなんだって。うん、それならわかる。このいかにもあり得ない状況設定を淡々と描きつつ、いつしか見る者の心にざわっと後味を残す土田ワールドそのものだもの。で、劇団は『たにまち金魚』大阪女三人の劇団だった。さすが大阪劇団。長々とカーテンコール挨拶を続けながら、ちゃっかり劇団グッズも売り込んでいた。で、僕も乗せられて公演DVDを買ってしまった。サインまでしてもろてってなんで大阪弁なんの?えっ?美人に弱い?違うね。三人とも美人じゃない、って言っても多分怒ったりしないよ彼女らは。そんなことはるかに突き抜けて逞しいし魅力的なんだよ。これからも気持ちとして一緒にいるよってエールを送ったってことさ。

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